第十五章:不殺の悪魔、あるいは豊穣の因果
1. 野盗の晩餐、あるいは「豚」への更生
「ひゃっはー! 運がいいぜ、上等な女にガキ、それに美味そうな黒鶏まで連れてやがる!」
街道を塞ぐように現れたのは、十数人の野盗集団だった。彼らの背後には、略奪されたばかりと思われる村の荷車が無残に転がっている。 「お兄ちゃん、どうする? 100点満点中、こいつらのクズ度は120点だよ!」 キュアが冷たく言い放つ。隣に立つ歩花は、不快そうに眉をひそめた。 「……タイガ。この者たちの魂は、救いようのない濁りに満ちています。浄化(消去)すべきでは?」
「いや、歩花。死なせるのはもったいないだろ」 俺は、45歳の重い腰を上げ、白紙のノートを開いた。 「お前たち、散々人の物を奪って、腹一杯食ってきたんだろう? なら、これからは『食われる側』の気持ちをじっくり味わえ」
俺の指先から、因果を書き換える光が放たれた。 「ぎゃあああッ!? なんだ、身体が……縮んで……ブゴッ!?」 数秒後、そこには凶悪な武器を構えた男たちの姿はなく、丸々と太った十数頭の「豚」が、戸惑うように鼻を鳴らしていた。
「……コケッ(……ふん、マシな方だな。私なんて鶏だぞ)」 足元の黒鶏(元ドラゴン)が、先輩風を吹かせて豚たちを突っついた。
2. 害虫の刑、あるいは極小の地獄
旅を続ける中で、俺たちの前に現れる「悪意」は枚挙にいとまがなかった。 罪なき旅人を襲う巨大な百足の魔物、私欲のために村を焼き払おうとする極悪な魔導師。 俺は、そのたびに「不殺の権能」を発動した。
だが、その転生先は、彼らが犯した罪の重さに比例した。 「お前は、人々の家を焼き、地を這うように逃げる人々を笑ったな。なら、一生地面を這ってろ」 魔導師は、一瞬にして一匹の「ゴキブリ」に変えられ、キュアの靴の下でカサカサと逃げ惑う羽目になった。 「お前は、死肉を貪り、病を振りまいた。なら、土を肥やす役に立て」 巨大な魔物は、数千匹の「ミミズ」へと分解され、荒れ果てた畑の土中へと消えていった。
「……タイガ。貴方のやり方は、やはり恐ろしい。彼らの尊厳を塵のように扱い、最も嫌われる存在へと堕とす」 歩花が、冷ややかな、だがどこか観察を楽しむような目で俺を見た。 「いいんだよ。因果応報だ。……それに、こうして土を肥やし、家畜を増やせば、この世界の『物語』は少しだけ豊かになる」
3. 農民の祈りと、不殺の悪魔の噂
いつしか、街道の村々の間では、奇妙な噂が広まっていた。 「不殺の悪魔」と呼ばれる、45歳くらいのおじさんの一行が通ると、なぜか凶悪な野盗が消え、代わりに立派な家畜が野に溢れるというのだ。
「ああ、タイガ様! ありがとうございます! 畑を荒らしていた魔物が消えて、こんなに立派な牛が残されていたなんて!」 訪れた村で、農民たちが涙を流して俺の手を握った。 「これで冬を越せます! この牛は、村のみんなで美味しくいただきますだ!」
「コケェッ!?(……おい、聞こえたか? 『美味しくいただく』だとよ。震えが止まらんぞ)」 黒鶏がガタガタと震える。 だが、俺は意気軒高だった。 「いいんだよ、それで。美味しく食べられ、人々の血肉となることで、彼らの犯した罪は浄化される。……次の来世では、もう少しまともな生き物になれるはずだ」
不殺を貫き、悪党を家畜へ変え、それを民草に捧げる。 これぞ、創造主タイガによる「資源循環型・救世物語」だ。 「……お兄ちゃん。1+1は?」 キュアが、村人に引かれていく元野盗の豚を指差す。 「……『ご馳走』だ。今夜は豚汁にでもするか?」
45歳のタイガ。 「不殺の悪魔」と恐れられながら、その手は確実に世界を「豊穣」へと書き換えていく。 胃の痛みは相変わらずだが、俺の筆致に迷いはなかった。
第15章、お読みいただきありがとうございました。 「不殺」という誓いが、悪党たちを家畜や羽虫に変えるという、シュールで残酷な救済へと進化しました。しかし、それが農民たちを救うという構造は、タイガなりの「世界の肯定」でもあります。 聖女・歩花が見守る中、タイガの「畜産レボリューション」はどこまで続くのか。
【感想・高評価のお願い】 「因果応報がエグい(笑)」「不殺の悪魔、おじさんなのに強すぎる」など、皆さまからの感想や高評価をお待ちしております。 皆さまの声が、タイガの「次なる転生先」のインスピレーションになります! (ぺこり)




