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冒険者は塔に挑む  作者: 結城 からく


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第15話 塔で恐怖してはいけない

 あなたは不死身の賢者だ。

 目的を持たず、なんとなく塔に挑戦している。

 力を持たないあなたの唯一の才能は、死なないことだ。

 強靭な再生能力により、魂の破損すらも修復可能であった。

 老化も食い止められているため、あなたの姿は若いままだった。

 実年齢は忘れてしまったので分からない。


 ゴブリンの振るう棍棒があなたの頭蓋を粉砕した。

 衝撃で血と脳漿が床にこぼれ落ちる。

 あなたは怯まずに両手を伸ばすと、顔面を殴られながらもゴブリンの首を絞めて殺害した。


 血みどろの顔面はすぐさま再生する。

 割れた頭蓋も綺麗に治っていた。

 棍棒を拾ったあなたは、ふらつきながら次の階層へ移動する。


 次の相手はスケルトンだった。

 突き出された剣が心臓を貫いて、あなたは血反吐を噴き出す。

 しかし、それで苦悶することはない。

 あなたはゴブリンから奪った棍棒をフルスイングで見舞う。

 何度も刺されながら殴打で反撃し、最終的にはスケルトンを粉々にして勝利する。


 新品の服は血で真っ赤に染まっていた。

 折れた棍棒を捨てたあなたは、腹に刺さった剣を引き抜いて武器にする。

 空の宝箱に落胆しつつ、あなたは次の階層へと向かう。


 リザードマンによる槍の乱れ突きが、あなたの全身を穿った。

 衝撃で後ずさるあなただったが、倒れずに踏ん張る。

 槍に貫かれた穴がたちまち塞がっていく。


 完治したあなたは剣で斬りかかる。

 お世辞にも褒めることのできないフォームだった。

 リザードマンは槍で楽々とガードし、反撃の突進を繰り出してくる。


 あなたは軽々と吹き飛ばされた。

 肋骨が折れて内臓に刺さって吐血する。

 されど痛みを顔に出すことはない。


 平然と立ち上がったあなたは、槍の一突きを腹で受け止めた。

 そのまま強引に前進し、リザードマンの首を腕で固めて締め上げる。

 体重をかけて押し倒しつつ、さらに両脚で姿勢を維持した。


 抵抗できないリザードマンは、やがて泡を噴いて絶命する。

 あなたは腹に刺さった槍を武器にして階段を上がる。


 その後もあなたは泥沼の殺し合いを続けた。

 不死身であることを最大限に活用した戦い方をする。

 相討ちでさえ勝利になるため、負傷を前提とした攻撃を多用した。


 これと言った武器術を身に付けていないあなたは絞め技が得意だった。

 攻撃されても関係なく、首を圧迫することだけに集中すればいいのが性に合っていた。

 振りほどかれないようにするのが難儀だが、あなたは上手く絞め続けるコツを知っていた。

 戦いで使用する頻度が高く、自然と練度が上がったのだろう。

 あならは対峙する魔物を次々と窒息死に至らしめていく。


 絞め技が効かない魔物も、特に問題にならない。

 大半が弱点を持っているからだ。

 不死身のあなたは、無理やり攻撃して勝利をもぎ取れる。


 あなたは賢者を自称するも、その戦法に知性の欠片も見られなかった。

 他の冒険者もあなたを賢者とは呼んでいない。

 陰で狂戦士と言われているが、あなたは黙認している。


 三十階であなたは吸血鬼に遭遇した。

 闇に覆われた部屋で、突如として背後から血を吸われたのだ。


 もっとも、不死身のあなたが動じることはない。

 たとえ全身の血液をすべて抜かれようと再生できるのだ。

 慌てる必要が無かった。


 あなたは手探りで吸血鬼に掴みかかり、即座に首を絞める。

 吸血鬼の怪力で腕を千切られそうになるも、再生速度を上げることで対抗した。

 傷付いた端から完治するため、腕の破壊が不可能になる。


 吸血鬼は高い不死性を誇る種族だが、あなたほどではなかった。

 無事に吸血鬼を絞め殺したあなたは、闇の取り払われた部屋から移動する。


 階段を上がる途中、あなたは胸に鋭い痛みを覚えた。

 見ればナイフの刃先が飛び出している。

 背後にはいつの間にか人間の気配があった。


 塔の魔物が階段で攻撃してくることはない。

 先ほどまで背後に誰もいなかったことを加味すると、奇襲を仕掛けてきた存在は一人に絞られてくる。

 あなたは血を吐きながら後ろを見る。


 そこには悪名高き殺人鬼がいた。

 転移魔術の使い手で、塔の構造を無視して階層を移動し、攻略中の冒険者を殺そうとする厄介者である。

 とてつもなく強いわけではないが、対人戦闘に慣れている。

 特に転移魔術を使った奇襲が悪質だった。

 逃げ足が異常に速く、歴戦の冒険者でも撃退するのが精一杯だという。

 そんな人間があなたの目の前にいる。


 あなたは首を傾げると、問答無用で手を伸ばした。

 相手が殺人鬼だろうと関係ない。

 人間である以上、首を絞めれば殺せるのだから。


 殺人鬼は飛び退きながらナイフを一閃させた。

 あなたの両手首が裂けて血が噴き出すも、すぐさま皮膚が繋がって完治する。

 奇襲で受けた胸の刺し傷も同様に治っていた。


 殺人鬼は舌打ちする。

 あなたの再生能力を嫌悪しているらしい。

 連続でナイフが振るわれて、そのたびにあなたの胸や腹や首が切り裂かれる。

 しかし、切断に至る前に再生した。

 その間もあなたは首を絞めにかかる。


 殺人鬼は顔を歪めつつ、攻撃の手を止めない。

 首へと伸びてくる手をナイフで防ぎながら反撃を繰り返した。

 あなたの動体視力ではナイフの軌道が一切読めない。

 気が付くと切られている状態だった。


 両者の戦闘技能には圧倒的な格差がある。

 ところが、追い詰められているのは殺人鬼だった。

 能力の相性が悪すぎて決め手に欠けているのだ。


 やがて殺人鬼は悔しげにあなたを滅多刺しにすると、転移魔術で姿を消した。

 このまま戦い続けても意味がないと悟って撤退したのである。


 残されたあなたは、血みどろの身体で伸びをする。

 そして特に感想もなく階段を上がり始めた。

 不死身のあなたにとって、殺人鬼は大した脅威ではない。

 少し邪魔をされたくらいで腹を立てることもなかった。


 あなたは自分の血で滑りつつも次の階層に到着する。

 そこで待ち構えていたのは、数百体の赤いゴブリンだった。

 ひしめき合うゴブリン達は、個別に見ると大した強さではない。

 しかし、数が揃うと途端に危険な存在になる。


 下手な立ち回りだと袋叩きになるのは必至だった。

 半端な魔術では一掃も難しい。

 シンプルながらも攻略が面倒な階層であった。


 あなたは大量のゴブリンを前にしても動揺しない。

 手のストレッチをしてから、最も近くにいたゴブリンの首を絞める。

 当然ながら他のゴブリンから滅多打ちに遭うも、あなたは決して手を離さない。

 この局面でも基本戦法を変えずに乗り切るつもりなのだ。


 一体目を絞め殺したあなたは、さらに最寄りのゴブリンを引き倒して首を絞める。

 周りから何百回と殴られ刺されながらも、あなたは着実に一体ずつ始末する。

 最終的に半日をかけてすべてのゴブリンを絞め殺したあなたは、血で重くなった服を絞ってから次の階層に向かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話の警句は今話の「あなた」にとっては全くの無意味。w
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