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いにしえの獣  作者: 明日香狂香
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脱出

王城の地下へと落ちた獣。ユナは気を失ったカナタを連れて逃げた。

 城《しろ》が崩《くず》れ、王都《おうと》からは人《ひと》が消《き》えた。その廃墟《はいきょ》では地下《ちか》から身《み》も凍《こお》るようなどす黒《ぐろ》く低《ひく》いうなり声《ごえ》が続《つづ》いていた。

「どこだ!やつらはどこに隠《かく》れた。」


 ユナは気《き》を失《うしな》ったカナタを連《つ》れ、王都《おうと》の西《にし》にある灰色《はいいろ》の大地《だいち》にいた。そして、カナタを乗《の》せた黒馬《くろうま》のテヘナと共《とも》に、巨大《きょだい》な洞窟《どうくつ》へと入《はい》っていた。

 洞窟《どうくつ》は入《い》り組《く》んでいた。冷《つめ》たく透《す》き通《とお》った水《みず》が流《なが》れている。腰《こし》ほどまである水《みず》の中《なか》をしばらく進《すす》んだ。やがて、水《みず》から上《あ》がり、ひんやりした洞窟《どうくつ》の中《なか》でユナはカナタを降《お》ろした。

 しだいに目《め》がなれるに従《したが》い、土《つち》ボタルの青白《あおじろ》い光《ひかり》の中《なか》に白《しろ》く湿《しめ》った壁《かべ》が見《み》えてきた。鍾乳洞《しょうにゅうどう》。その真《ま》っ白《しろ》な濡《ぬ》れた壁《かべ》は、いかなる植物《しょくぶつ》の根《ね》も受《う》け付《つ》けなかった。たとえ、種《たね》や胞子《ほうし》が飛《と》んでこようとも、滴《したた》り落《お》ちる水《みず》によってすべて洗《あら》い流《なが》された。ここは、人《ひと》が辿《たど》り着《つ》ける数少《かずすく》ない動物《どうぶつ》だけの世界《せかい》。植物《しょくぶつ》のないここなら、獣《けもの》の目《め》も届《とど》かないとユナは考《かんが》えたのだ。

 濡《ぬ》れた服《ふく》を脱《ぬ》ぎ、包《つつ》んだきた乾《かわ》いた毛布《もうふ》に包《つつ》まると、傷《きず》だらけの体《からだ》でカナタを抱《かか》え、そのぬくもりで暖《あたた》めた。カナタの顔《かお》は、まるで悪夢《あくま》を見《み》ているように苦痛《くつう》でゆがんでいた。ユナはカナタが幼《おさな》いころによく聞《き》かせていた子守唄《こもりうた》を口《くち》ずさんだ。その声《こえ》は、冷《ひ》え切《き》った洞窟内《どうくつ》に優《やさ》しく響《ひび》き続《つづ》けた。やがて母子《ははこ》は疲《つか》れた体《からだ》を休《やす》めるようにゆっくりと眠《ねむ》った。

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