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いにしえの獣  作者: 明日香狂香
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対決

 王《おう》の間《ま》の1つの火《ひ》の消《き》えている暖炉《だんろ》の奥《おく》から、顔《かお》を出《だ》した二人《ふたり》が見《み》たものは、椅子《いす》に力無《ちからな》く座《すわ》り血《ち》を流《なが》している王《おう》の姿《すがた》だった。二人《ふたり》は部屋《へや》の中《なか》に這《は》い出《で》た。王《おう》を守《まも》っているはずの兵士《へいし》は誰《だれ》もいない。

 突如窓《まど》ガラスが揺《ゆ》れ、巨大《きょだい》な獣《けもの》の顔《かお》が窓《まど》の外《そと》に現《あらわ》れた。

「人《ひと》の『器《うつわ》』。そこにいるのは解《わか》っている。さあ、表《おもて》に出《で》て来《こ》い。」

 ドラゴンは人《ひと》の言葉《ことば》で叫《さけ》ぶと同時《どうじ》に、カナタに『器《うつわ》』の力《ちから》で語《かた》りかけてきた。二人《ふたり》は空《から》っぽになった城《しろ》の中《なか》を出《で》て、ドラゴンの待《ま》つ庭《にわ》へと出《で》た。

「お前達《まえたち》には、いいものを見《み》せてやろう。」

 そういうと、重《おも》い鎖《くさり》を引《ひ》いた。鎖《くさり》の先《さき》にはゲノとテヘロがいた。

「おっと、じっとしてろ。お前《まえ》の父《ちち》が死《し》ぬぞ。」

 ドラゴンはテヘロの鎖《くさり》を強力《きょうりょく》な爪《つめ》で断《た》ち切《き》った。

「テヘロ!」

 カナタは白馬《はくば》に向《む》かって名前《なまえ》を呼《よ》んだ。

「無駄《むだ》だ。」

 カナタの声《こえ》はドラゴンの一括《いっかつ》にかき消《け》された。見《み》るとテヘロの足《あし》の模様《もよう》が黒《くろ》ずんでいた。

「こいつは、人間《にんげん》を恨《うら》んでいる。教《おし》えてやろう。こいつらの子馬《こうま》を人間《にんげん》が『器《うつわ》』の実験《じっけん》に使《つか》っていたのさ。私《わたし》を復活《ふっかつ》させるためにな。人間《にんげん》は愚《おろ》かだな。私《わたし》を倒《たお》すために、私《わたし》を復活《ふっかつ》させたのだ。」

 ドラゴンが得意《とくい》げに話《はな》す中《なか》、

「街《まち》の者《もの》と兵士《へいし》は遠《とお》ざけました。」

 イゴー、トットとタホトが来《き》た。

「みればみるほど化《ば》け物《もの》ですなあ。」

 イゴーがゼノにささやく。

「化《ば》け物《もの》?私《わたし》からすれば自分勝手《じぶんかって》な人間《にんげん》のほうがよっぽど化《ば》け物《もの》だがな。まあいい、これからこの馬《うま》で儀式《ぎしき》をを行《おこ》う。そこで終《おわ》わるまで見《み》ているがいい。」

 ドラゴンはそう言《い》い終《おわ》わるとテヘロに語《かた》りかけ始《はじ》めた。

「テヘロよ。苦《くる》しいだろう。その苦《くる》しみから開放《かいほう》してやろう。さあ、私《わたし》が直々(じきじき)に与《あた》えた名前《なまえ》の鎖《くさり》を出《だ》すがいい。テヘロ!」

 ドラゴンの地響《じひび》きにも似《に》た声《こえ》と共《とも》に、テヘロの黒《くろ》ずんだ玉《たま》の模様《もよう》から一本《いっぽん》の黒《くろ》い鎖《くさり》がドラゴンの馬族《ばぞく》の模様《もよう》へとつながった。そして、ドラゴンはテヘロを一飲《ひとの》みにした。ドラゴンの体《からだ》に七つ目《め》の玉《たま》が浮《う》き出《だ》してきた。

「ゲノ!」

 テヘナに乗《の》ったユナが戻《もど》ってきた。


「ユナ、カナタを連《つ》れて逃《に》げろ。こいつは儀式《ぎしき》が終《お》わるまで動《うご》けん!」

 ゲノはユナに向《む》かって叫《さけ》んだ。

「黙《だま》れ!用済《ようず》みだ。」

 ドラゴンは前足《まえあし》の爪《つめ》でゲノの心臓《しんぞう》を一突《ひとつ》きにした。

「父《とう》さん!」

 カナタは身震《みぶる》いした。その目《め》はドラゴンを睨《にら》みつけ、憎《にく》しみに染《そ》まろうとしていた。

「いかん。」

 ゼノはカナタのみぞおちに当身《あてみ》を食《く》わせた。

「行《い》け、ユナ。」

 ゼノはテヘナに乗《の》ったユナに、気《き》を失《うしな》いぐったりとしたカナタを渡《わた》した。

「逃《に》げても無駄《むだ》だ。私《わたし》の目《め》は植物《しょくぶつ》とつながっている。空《そら》でも海《うみ》でもお見通《みとお》しだ。これこそが私《わたし》の最大《さいだい》の武器《ぶき》だ。」

 ドラゴンは自慢《じまん》げに笑《わら》った。

「父《とう》さんたちは?」

 ユナの問《と》いに

「まだ、俺《おれ》たちにしかできない最後《さいご》の大仕事《おおしごと》がある。」

 そう微笑《ほほえ》んで、ゼノ、イゴー、トット、タホトの4人《にん》は城《しろ》の中《なか》へ消《き》えた。

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