十. 悪縁
人の性根はそう簡単に変われるものではない。
優しげな外見に、騙されやしない。
どんなに表面を取り繕っていても、俺は奴の性根を知っている。
文長は、諭利と杉田屋と、ついでに桃華会の者たちを一人ずつあげつらって罵り倒してから、気を静めて墨を擦った。
──たかが、芸人くずれ。
人に寄りかかって生きている輩ではないか。
そうさ、その程度の奴なのさ。
年老いて容色も衰えたなら、誰からも見向きもされなくなる。
その時になって施しをしてやれば、あいつは平伏し、涙ながらにこの俺に感謝することだろう。
昔語りにもあるではないか、結局は、地道に努力を重ね、自力で財を成した者こそが、最後に笑うのだ。
文長は自らにそう言い聞かせ、気持ちを落ち着かせようとした。
心に波風が立てば、またあいつに振り回されることになる。
この土地で商売をするには、地元で十年以上商売をしている身元の確かな保証人が二人いる。
一人は杉田屋、もう一人は白浜屋、両名とも桃華会の者。
申し分のない保証人だった。
達筆で、文長は己の名を署名した。
──これで憎いあいつと一蓮托生だ。
あいつが何か不始末をしでかしたら、一緒に責めを負う羽目になる。
いや、替わって責めを負うことになりかねない。
あいつにしても、味方が必要なはずだ。
突き放すより、味方のふりをして側で監視しているほうが得策だ。
文長は皮肉げに口の端をあげた。
──これが悪縁というやつだ、悪縁は絶ち難い。




