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第68話 オカルトバスターについて聞いてみた

「守護神様。オカルトやエセ科学たたきって、どうして不愉(ふゆ)(かい)なものが多いんでしょうね?」

『だったら見なきゃいいだろ。そんな動画……』

「でも、つい見ちゃうんですよねぇ。レコメンドで上がってくると……」

 もちろん(すす)められたすべてを見てるわけじゃない。頭ごなしに否定してるだけの思考停止した()(はん)動画は不愉快な気分になるので、途中で見るのをやめてしまう。そして、その人の上げた動画を()けるようになるのである。

『人間ってやつは、どうして同じ間違いを繰り返すんだろうな?』

「オカルトやエセ科学に飛びつく人も、間違った常識論をかざして頭から否定する人も……ですね。一番許せないのは、いつの時代もニセのオカルト情報やエセ科学を生み出して、それで金儲(かねもう)けする詐欺師(さぎし)です。それが話をややこしくしてますから」

『でも、今のきみが不愉快に思ってるのは、そっちじゃないだろ?』

「……ですね。根拠があって批判してるのなら言い方の問題はあっても許容はできるのですが……。批判が人格攻撃や()げ足取りになってる動画は、さすがに……」

『それは人間の(ごう)だよなぁ。自分が正義で相手が悪だと思ってると、自分がどれほど()(あく)的なことをしてるか気づかないからな』

「インド神話の正義の神アスラが、なぜ悪神なのかという哲学(てつがく)ですよねぇ」

 ということで、今回はそういうオカルトバスターの話である。



『オカルトたたきの失敗として、きみはよく電磁気学の話を使うよな』

「学生時代に物理学を学んだせいか、気に入ってるんですよね。この手の話……」

 オカルトと偏見(へんけん)に関する失敗談として、電磁気学に関わる話は格好の材料だ。

 たとえばイギリスは昔からオカルト好きの国民性で有名だ。オカルトは今では「神秘的なもの」「科学に反するもの」という意味で使われているが、本来は「常識を(うたが)うこと」だ。イギリスではそういう国民性からだろう。一七世紀にニュートンが中世からの科学常識の(から)(やぶ)って近代科学にとって最初の基礎理論である古典力学と光学を生み出し、一八六五年にはマクスウェルも基礎理論の一つとなる電磁気学を確立させた。その電磁気学が電波の存在を予言していたため、たちまち無線通信を開発する国際的な技術競争が始まった。

 ところがイギリスにいる多くの学者や技術者たちは、頭から「電波はオカルト」と決めつけていた。そのため開発競争に乗り遅れてしまったのだ。その後の研究は日本とアメリカがリードし、工業力に物を言わせたアメリカが技術の普及でリードするようになる。

 日本では明治維新と電磁気学分野での開発競争の始まりがほぼ同じだったこともあり、この分野での研究では最初から欧米と肩を並べていた。中でも磁石と磁気記録の技術は、大正時代以降は一度も他国に(おく)れを取ったことのない得意分野である。

 とはいえ日本でそれを知るのは電気工学系の技術者ぐらいで、多くの人たちは二〇世紀が終わる頃まで「日本の技術は欧米よりも遅れている」「日本人が最初に発明するはずがない」と()(ぎゃく)的に思い込んでいた。その偏見から生まれた八木(やぎ)アンテナの話も有名だ。

 この八木アンテナは一九二五年に特許(とっきょ)が取られ、太平洋戦争の開戦前には一五年間の特許が切れていた。にもかかわらず、軍部は一九四二年にシンガポールを(せん)(りょう)してイギリス軍からレーダーを()(かく)するまで八木アンテナを知らなかった。そのため受信(じゅしん)アンテナの(めい)(しょう)『YAGI』が、「ヤギ」と読むのか「ヤジ」と読むのかわからないどころか、何の(かしら)文字(もじ)を取った略称(りゃくしょう)かと考える始末だった。


『オカルトたたきの悲劇としては、西洋の病院で起きた()(りょう)事故は知っておいた方がいいぞ。(さいわ)い日本では起こらなかったがな』

「昔の西洋のお医者さんは、そうとう()(けつ)だったらしいですからね」

『いや、不潔なのは一九世紀の医者たち──それも大学病院のようなところで最先端の高度医療を(あつか)っていた、一流の医師たちだ。町医者や(さん)()()(あら)いや器具の煮沸(しゃふつ)(せん)(じょう)をしっかりと(おこな)っていたから、目立った医療事故はなかったんだぞ』

「え? 逆じゃないんですか?」

『そこがオカルトたたきの恐ろしさだ。一九世紀といえば産業革命が起きて各地を鉄道が走るようになり、蒸気機関で飛ぶ飛行船まで出てきた時代だ。科学の世界でも数多くの発見があって、それで(てん)()になった学者たちが「我々に知らないものは、もうほとんど残ってない」と言い出した。医学界でも医療技術や製薬技術が()(やく)的に高くなったこともあり、「あと少しで自分たちに治せない病気はなくなる」と(ごう)()するようになったんだ。そうなると自分たちの理解できない考えや行動は、すべてオカルトや迷信として否定するようになる。その中に今でいう衛生管理があったため、医者たちは消毒を軽視するようになってしまった。こういう思考の(わな)は、高い学識を持った者ほど(おちい)りやすい』

「なんで、そんなことが……」

『理由は簡単だ。昔は(あく)()(あく)(りょう)死神(しにがみ)という見えない(かい)()によって、病気が起こされると信じられてきた。それらから身を守る方法として、手洗いや器具の煮沸洗浄、アルコール消毒という衛生管理が、古代から()(しき)のように伝わってきた。非科学的な物の見方ではあったが、流行(はやり)(やまい)感染(かんせん)(しょう)の対策としては有効な手段だ。ところが、その頃はまだ病原菌が発見されてなかったんだ』

「そのせいで意味のない迷信だと思い込んだ……ですか?」

『そのように考えていいだろう。消毒を頭から迷信だと決めつけて否定すれば、手間のかかる煮沸洗浄をやめて器具は簡単に水洗いして汚れを落とし、乾いた布で水気を()き取れば十分と思う医者が増えてくる。ひどい医者になると手も器具も水洗いせず、布で汚れを拭き取るだけだ。そのせいで少しずつ病院での感染症からの敗血(はいけつ)(しょう)で亡くなる患者(かんじゃ)が増え、最悪な頃には病院で治療を受けると六人に一人が医療事故で亡くなる異常事態を招くほどになった』

「その被害者の一人が、リンカーン大統領ですか」

 この話については第一五話でも触れた。

 リンカーン大統領は南北戦争のあとの一八六五年、劇場で()たれて暗殺されたと言われている。ところがデリンジャーという豆鉄砲(まめでっぽう)に、人を殺せるほどの()(りょく)はない。「()近距(きんきょ)()からなら可能」という説明もあるが、それは現在の高性能火薬を使った話であって、暗殺時は爆発力の弱い黒色火薬しかなかった。

 だから急所を撃たれて即死しなかったのなら、本当の死因は医療事故というわけだ。

 興味のある方はセンメルヴェイス反射ないしはゼメルヴァイス反射を調べてもらうと、これに関する話題が出てくるので参照するといいだろう。

「そういえば病原菌の発見って……」

『ドイツのロベルト・コッホが(たん)()(きん)を発見したのが一八七二年だ。それを培養(ばいよう)して病原菌だと突き止めたのが一八七六年だぞ』

「それが最初の発見ですか。暗殺の一〇年後とは、リンカーン大統領も間の悪い……」

『そのあとコッホは一八八二年に結核菌(けっかくきん)を見つけ、翌年にはコレラ菌を見つけてる。そうやって病原菌によって感染症に(かか)ると証明していったわけだ』

「そうなると衛生管理を迷信だと言ってきたお医者さんたちは(あわ)てたでしょうね」

『慌ててくれれば良いが、最初は自己正当化したい気持ちから激しく拒絶(きょぜつ)する医者も出てきた。だが、そんなのは数年だ。衛生管理を徹底(てってい)した病院での医療事故が次々とゼロになれば、さすがに意固地になってなどいられん。そんな態度こそ非科学的だ』

「当時のお医者さんが衛生管理を迷信だと思わなければ、いったい何人が死なずに済んだのでしょうね?」

『人間の思い込み。それも権威のある者の思い込みによって生み出される悲劇は重大な結果を招きかねん。だからこそ安易なオカルトたたきはやめてもらいたいものだ』

「言ってることはオカルトでも、その中には米粒ほどの真実が混じってることは多いですからね」

 まあ、世の中には政治家やメディアの語る常識論の方がオカルトって場合もあるんだよね。

 世界の経済常識を無視して、財務省の(かた)る経済常識とか……。



『さて、きみが今思うオカルトたたきで、もっとも不愉快に思うものは何だ?』

「ビッグバン宇宙論に対するプラズマ宇宙論ですね」

『……(たましい)神霊(しんれい)の存在じゃないのかよ』

「そっちはまだ『信じても良いかなぁ〜』というレベルで……」

『心から信じてないのか?』

「状況証拠はあっても、決め手がありませんからねぇ。ダウジングの結果も、時間が()つと変わる場合がありますし……」

(おれ)の回答のせいかよ。しくしく……』

 あ、守護神様が()ねてしまった。

 ちなみにプラズマ宇宙論は、正確にはビッグバン宇宙論を否定していない。否定してるのは重力だけで天体運動を説明しようとする、今の宇宙論の姿勢だ。

 今の宇宙論では銀河の回転や腕の動きについてをほとんど説明できず、ダークマターやダークエネルギーを持ち出して理屈を合わせようとしている。この世にある物質は四%で、残り九六%がダークマターとダークエネルギーと語っている話だ。

 このダークマターとダークエネルギーは理屈を合わせるために考えられた空想上のものではない。クォークには元素と同じような周期があり、現在は第三周期までの表が埋まっている。身の回りにあるのは第一世代のアップクォーク、ダウンクォーク、電子という物質と、電子ニュートリノの四種類だけ。粒子加速器による観測によると、ここが全体の四%しかなく、残り九六%を第二世代と第三世代のクォークにある八種類のクォークが占めているのだ。

 それなのに粒子加速器の外では、物質以外のクォークがまだ一度も観測された報告がない。最新鋭の技術で宇宙の高エネルギー体である超重力星を観測しても、ダークマターに相当するものの痕跡(こんせき)は見つかってない。もちろん太陽の観測からも……だ。

 そもそも宇宙空間のほとんどは気温マイナス二六〇度以下の低エネルギー状態だ。そこへ高エネルギーの状態でのみ観測されるダークマターを持ち込んで理屈付けしようというところが大きな間違いであるのだが、これが今の宇宙論の常識となっている。

 一方でプラズマ宇宙論の説明は(たん)(じゅん)明快(めいかい)だ。星が大きいために錯覚(さっかく)してしまうが、広い宇宙空間の中では星は水の中の水分子よりもちっぽけな存在だ。数光年も離れると重力よりも静電気などの電磁力の影響が強くなる。この電磁力が一種の粘性(ねんせい)となって星や星間物質をまとめるため、何十光年以上にも(およ)ぶ天体構造は重力のみで考える力学で考えるよりも、電磁流体(プラズマ)として流体力学で考えた方が星の動きを説明できるという考え方だ。実際、重力だけで考えた時には謎だった銀河の回転や腕の動きは、よく見慣れた水の動きと同じだ。銀河は水の中で渦巻きができた時の動きと、何ら変わりないという説明である。

 ところが『プラズマ』というと、オカルト論者たちがトンデモ理論を語る時によく使う小道具だ。そのプラズマがリング状になってるフォトンベルトとか、プラズマの(うず)がミステリーサークルを(えが)いてるとか、幽霊(ゆうれい)はプラズマ生命体とか、UFOはプラズマが実体化したものだとか、とにかくプラズマを使ってデタラメな理論を語りまくっている。

 最近聞いて(あき)れたのはダイナモ理論だ。本当のダイナモ理論は地磁気の発生原理を説明する仮説の一つだが、オカルト論者は宇宙プラズマを受けてモーターの原理で星が自転したり、太陽の周りを公転してると語っている。

 こんなバカ丸出しの説明にやたらとプラズマという単語が使われていれば、条件反射的に「プラズマは()散臭(さんくさ)い」と思って拒絶する人が増えるのは仕方ないと思う。

 そのせいでプラズマ宇宙論と聞くと調べもせず『トンデモ理論』と決めつけて、本当のプラズマ宇宙論を語ってる人たちまで「頭の()哀想(わいそう)な人」とレッテルを()って茶化してくる人たちが出てくる。それだけでも憂慮(ゆうりょ)すべき事態だが、そこで今回の話題であるオカルトバスターの攻撃対象にされるとなると、もう迷惑で仕方ない。



「行きすぎたオカルトたたきは問題ですけど、原因を作ってる人たちにも問題はありますよね」

諸悪(しょあく)根源(こんげん)は、オカルトを金儲(かねもう)けのために利用してる連中だな。一番多いのは霊感(れいかん)(しょう)(ほう)だ。宗教団体が組織立って(つぼ)()(じく)、仏具などを高値で売りつけるケースが目立つ』

「私は昔からある、オカルト系通販の値段に(あき)れてますよ。ちゃんと知識を持って専門店やオンラインショップで買えば一つ数百円から高くても四〜五千円で済む物を、三万円から五〇万円で売ってるのですから買う人の気がしれませんよ」

 こういうものはパワーストーンでよく見かける。ただし宝石にもなる天然物は別だ。

『霊能力者のフリをして、大金を要求する詐欺師(さぎし)(ゆる)しがたい。そういう連中のウラには、ニセ霊能者にいかにもな服を着せたり、言葉遣いや振る舞いを指南したりして、(もう)けの一部を(ほう)(しゅう)として受け取っている心霊コンサルタントがいる場合がある』

「詐欺商法を指南してるわけですか?」

『世の中には儲けるためなら、平気で詐欺をする連中が多いんだよ。大企業ですら儲けるためにエセ科学に手を染めている。昔ならマイナスイオンやデトックス、ホメオパシーや大腸のコーヒー洗浄、最近だと水素水やマイナスカロリーなどがある』

(おどろ)いたのは脳生理学のモノアミン仮説ですね。神経(しんけい)伝達(でんたつ)物質(ぶっしつ)のアドレナリンやセロトニンが、まさか実態のない仮説でしかなかったなんて……」

『それで製薬会社がボロ儲けしてるエセ科学だ。それが科学的な事実だったら薬はすぐ効かないとおかしい。それなのに高価な薬を二週間以上飲み続けないと効果が出てこないので、アメリカの食品医薬品局が二〇一五年、製薬会社に根拠となる科学的な研究データを公開するように迫ったのに、一〇年近く経ってもいまだに証拠が何一つ出てきてないオカルトだったんだ』

「オカルトをエンターテインメントとしてる人には、どんな問題がありますかね?」

『きみのように、ただこの世の謎を楽しんで、チャンスがあれば解き明かしたいと考えてる者なら問題はない。本来のオカルトとは常識を疑い、隠された真実を掘り起こすことだ。常識は必ずしも正しいとは限らない。時間とともに間違った常識に()り替えられていく宿命がある。そもそも今の時代は学力はあっても知力のないエリートが間違いを語るため、間違った常識の方が広まりやすい。権力者たちが都合の悪い真実を隠すこともある。だからこそ本能的にオカルトや都市伝説に飛びつく人が増えるのかもしれん』

「じゃあ、問題なのは?」

金儲(かねもう)けのためにデタラメを語っている連中だ。今のオカルト汚染は、こういう連中によって生み出されてる。事実と言いながら、話を盛ったり創作したりしてる連中もそうだ。こういうことをされると、あとで事実関係を調べる時の障害になる』

「私自身、大学に入るまでプラズマはオカルトだと思ってましたもんね」

『そう思ってる人は多いだろうな。それなのに科学者がオカルト用語だと思ってるものを口にしてみろ。ろくに調べもせず「学者のくせにオカルトの話をするのか?」なんて苦情をぶつける人が出てくる。そのウラには何十倍という人たちが、その科学者をトンデモ学者とレッテルを付けて聞く耳を持たなくなる。それほどオカルト汚染は(たち)の悪い厄介(やっかい)なものだ』

「オカルトとは違いますけど、SNSで最近の移民問題や在日問題に触れただけで、いきなり左翼系の人たちからネトウヨのレッテルを貼られて罵詈(ばり)雑言(ぞうごん)がぶつけられますからねぇ」

『そっちは事実を世間に知られて世論が動いたり、対策を取られたくないという都市伝説や陰謀(いんぼう)(ろん)の方だな。「悪の白旗」だ』

「たしかにプロフィールに、日本語で『日本人です』と書いてるような人たちが多くいましたもんね。()みついてきた人たち……」

 他にも日本語では「不戦」「改憲反対」「武力(ほう)()」という単語を並べながら、英語では「市民革命」「階級闘争」「武装蜂起せよ」と()(じゅん)することを書いてるとか……。

『どちらも自分の考えとは(あい)()れないものを、本能的に拒絶(きょぜつ)する反応だ。それに専門の学術用語や事実が引き金になってしまう場合が問題だ。それが社会問題の本質や学問の探究を遠ざけて、世の中から理性や知性を(うば)っていくのだからな』

「それが行き過ぎると、原理主義になるんですよね?」

『そうだ。原理主義はもともと宗教上の考え方のことだが、今では宗教以外でも政治思想や経済思想、環境保護や歴史解釈、そして健康医療や科学理論などでも自分の考えとは相容れないものを排除しようとする考え方となって(あらわ)れている。話に耳を貸さなくなるのは、(たましい)の成長を止める思考停止の始まりだ。そこへ心理的に(きょう)()を感じると、力で排除(はいじょ)しようとする拒絶(きょぜつ)反応が始まる。これが「悪の白旗」だが、その状態に(おちい)った人は魂が(くも)るのもかまわず攻撃的になる』

「意見が対立する相手に対して、関係のない話を持ち出して人格攻撃を始めるパターンですね。それでも言われる側にそれだけの落ち度があったのなら身から出た(さび)でしょうけど、被害妄想(もうそう)や想像で非難を始めたら、これはもう立派な(めい)誉毀(よき)(そん)です」

 刑法二三〇条、罰則(ばっそく)は三年以下の(ちょう)(えき)もしくは(きん)()または五〇万円以下の罰金だ。

『更に原理主義が行き過ぎて魂が悪に染まると、焚書(ふんしょ)(しょう)()(ぶつ)()(かい)などの実力行使に出てしまう。宗教戦争もこの一つ──魂が完全に悪に()まった状態だ。原理主義者が()(せき)や美術品を壊す映像が、よく出まわっているだろう?』

「アルカイダによる大仏破壊とか、イスラミックステートによる博物館の襲撃や遺跡の破壊の事件がありましたねぇ」

 原理主義の宗教でなくても、人には戦争になると敵国の文化財や象徴物を意図的に(ねら)いたくなる欲求があるようだ。だからこそ国際協定で、それを防ぐ取り決めがされたのだが、戦争になるたびに破壊衝動を抑えられない人たちによって、多くの文化財が壊され続けてきた。

 一九九二年〜五年まで続いたボスニア紛争(ふんそう)(ユーゴ内戦)では、互いに敵対した民族の文化遺産を破壊しあった。一六世紀に作られた大きな石橋を崩したり、歴史的な雰囲気を残した旧市街地を破壊しまくったりというメチャクチャな(あらそ)いになった。

 ロシアとウクライナの戦争でもユネスコが確認して二〇二四年五月までの被害をまとめたところ、ロシア軍の攻撃によってウクライナの一二七か所もの文化施設が壊されたそうだ。被害を受けた文化施設となると三四六か所にもなり、他に博物館や歴史郷土資料館などの施設から二〇〇〇点以上の美術品や文化財が(りゃく)(だつ)されたともいう。

 どうしてそこまで相手国の文化財を壊そうとするのか、人間の不思議な心理である。

 太平洋戦争でもアメリカ軍は日本の象徴である富士山をB29で爆撃して崩してやろうとか、赤いペンキで染めてやろうとか、マジで計画してたらしいからねぇ。さすがに現実的ではない作戦なので、やめたらしいけど……。



「さて、オカルトバスターの問題について語ってきましたが、何か語り残したことはありますかね?」

『思考停止したオカルトたたきには問題があるが、それを(まね)いてるエセ科学やウソのオカルト情報を(つく)って流してる詐欺師(さぎし)連中の方が問題だな』

「夜明け前になると、霊かかりがウヨウヨですか?」

『エセ霊能力者も増えてるからな。まさに末法の世だ』

「世の中は次元上昇(アセンション)してるらしいので、私にも何か能力が芽生えませんかね?」

『目覚めてくれれば、俺からももっと多くのことが伝えられるのにな。それにダウジングでは対話ミスも多いし……』

「やはり多いですか。そこだけは(ふせ)げませんよねぇ」

『そういうところも否定したい人には攻撃材料になるのだから、こういう世界は難しいものだ』

 ということで、今回はこのあたりで終わりにしたいと思う。

 思い立って一日で書き上げるつもりが、話が膨らんで、また数日かかってしまった。いつもながら無計画である。

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― 新着の感想 ―
西洋医学、手術は素晴らしいですが、他は色々ヤバイです。 何故ゆえに自然療法がオカルトになるのか分からないです。
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