表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果ての畑でメシイモを  作者: 鰤金団
味の旅人
PR
23/23

王族の笑いの中で

「ここが王城ですよ」

 ムゼーランさんは明らかにやつれていた。

 メシイモ切れ? それもある。ここに来るまでの間に幾つか村や町を訪れたけれど、出てくる主食は肥料無し状態で育てたメシイモ。

 二年でかなり当たり前になっていたけれど、やっぱり味が違う。

 やり方がまだ伝わっていないのか、新しいやり方に抵抗があるのか。

 一日二日程度では変える事なんて出来ないし、馬車生活は若い私でも体に応えていたため、ひたすら体を労わる事に専念していた。

 ムゼーランさんは慣れているからだろう、私と同じ時間同じ状況だったというのに立ち寄った所の状態を確認するために動いていた。

 その姿を見ていると、メシイモでおかしくなっていた時の方が異常だと分かった。

 私としては、四六時中メシイモを崇拝する人とは一緒に居たくなかったから本当に良かった。

 食事時に主食であるメシイモが出てくると期待に目を輝かせ、一口食べた後でその光が消える様を何度見たか。

 少しでも新しい栽培法に近い味にしたいのか、彼はユーイルがやっていた揚げメシイモを伝えていた。そういえばあの後、ちゃんと無事に会えていたのね。

 でも、出てきた揚げメシイモはどこで食べても三段くらい味が落ちていた。

 これまで主食として当たり前に食べていたのに、より良い味を知ると戻れないというのもつらい物だ。ムゼーランさんを見ているとそう思う。

 私はまだ満足に食べられる事に感謝を感じるからか、味が落ちていようと関係無かった。

 まあ、それは理由の半分で、もう半分は私が理由だろう。

 初日に馬車の中で感情を爆発させ、彼を困惑させた結果、どんな理由で情緒が不安定になるのか分からない村娘と認識したらしい。おかげで深堀はされなくなったけれど、扱いに困る存在と共に過ごすのはそれなりに心労が堪っているみたいだ。

 おかげでこちらは大きな悩みになりそうな種だった部分が種ごと処理されて快適だった。

 とは言っても馬車の中ではやる事が無い。

 無さすぎて人生で一番眠っていた。私がかつて求めていたある意味で夢の環境だった。

 人生って何が起こるか本当に分からない。

 でもこの旅の中でどんどん心が乾いていった。

 だって、徐々にだけど確実に毎日の見た事が無い景色への感動が薄れていったのだから。

 結果、目的地であり、一番立派な建物を前にしても何の感慨も無かったのだから。

 それでも言葉ぐらいでは説明のお礼を渡せる。

「ありがとうございます、ムゼーランさん」

「いえ。初めて訪れた人はもう少し畏怖したり感動したりするのですが、どちらもなさそうですね。疲れていますか?」

「そうですね、慣れない長旅で感情が追いついていないのだと思います」

 暇すぎたせいです、と言ったら怒られそうだから、通りそうな言い訳をしてみる。

「そうですか。では、着いたら休むと良いでしょう」

 意外と通してくれた。道中も平民なのに色々と気遣ってくれたし、悪い人では無い。うん、本当に無い。

「あ、忘れてました。私、王都にいる間はどこの宿に止まれば良いですか? 安宿で宿泊費を貸してもらえると助かります。それから用事がある時は手紙では無く、同行してくれる人を用意してもらえると助かります。絶対迷うんで」

 今更ながら肝心な事を聞き忘れていたのを思い出し、慌ててお願いした。

「そのような心配はせずとも良いですよ。ルイシアさんが滞在中は王城で暮らす事になっていますから」

 そっかぁ。王城かぁ。ちゃんとした所で良かったぁ……。

「って、え!? 私が王城暮らし? 王城って王族が住んでる所ですよね? 王族の方達と同じ一つ屋根の下ですか?」

 招かれたと言っても私はただの村娘。身に余る待遇が怖い。全部終わったら何か怪しげな儀式の生贄にされたりしないよね? 百科事典、ないよね?

(安心してください。城内にそのような場所はありませんよ)

「そっか。良かったぁ」

 百科事典が言うのなら安心だ。

「よほど危ない場所で過ごすと考えていたのですか? そうだとしても王城で安心するとは、妙な所で肝が太いですね」

 あ、百科事典とのやり取りのせいで会話を知らないムゼーランさんが勘違いしてしまった。

「いや、その、お城で暮らすなんて、女の子の夢みたいな所があるじゃないですかぁ。子どもの頃のあるあるですよ。それ、その夢が叶う~みたいな感じですよ。はい」

 取り繕うつもりが、何かよく分からない返しになってしまった。

「そうですね、親戚の娘も幼い頃はお姫様に憧れていました。では、案内しましょうか」

 理解を示して? くれつつ、私は彼と一緒に城内へ入った。

 広いし大きいし、天井が高い。村長の家や村の教会と比べても全てが上質過ぎる。

 先ほどムゼーランさんに言った事じゃないけど、今更になって実感が湧いてきた。

「ここが今日から滞在してもらう部屋です。滞在中は自由に使ってください」

 兵士や城内で働く人の姿は見れども、本当に偉い人とはすれ違う事無く部屋の前まで来てしまった。

 ムゼーランさんが教えてくれたけれど、本当に自由にして良いのだろうか? 平民ごときが我が物顔で居るのが気に入らないと切り捨てられたりしないだろうか。

 それに、周りにある扉はどれも同じ。戻ってきた時に間違えないか不安だ。

 私、お城暮らしに向いてないかも。

「安心してください。あなたが部屋の外に出る時には護衛役が付きます。が、慣れないでしょうから遠巻きにです。なので暮らしの面で不自由は無いですよ」

 私の悩みを見抜いて言ってくれたムゼーランさんの言葉は心強かった。

「そうですか。王都なんて二度と来ないでしょうから、許されるのなら思い出に歩いてみたかったので良かったです」

 村に帰ったら皆に話して聞かせられるくらいの出来事だ。

 ずっと部屋に籠っていましたという話で終らなくて済んで助かる。

「では、中に入りましょうか」

「はい」

 ムゼーランさんは三度、部屋の扉を叩いた。

 既に誰かが中に居て、その相手に知らせるための合図だったのだろうか?

 扉が少し開き「どうぞ」と女の人の声が。

 許可が出たと、ムゼーランさんが先に部屋に入り、私も後に続いた。

「っ!?」

 部屋の中には、女の使用人数名に囲まれたやたら身なりの良い男女が居た。

 でも、使用人にしてはなんか平民感が無い。

(彼女達は侍女です。女中とは違います)

 違いが分からない。けれど、何かが違う事だけは分かった。

 にしても、私が住まわせてもらう部屋は知るどの部屋よりも立派で気圧されるほど整っている。

 だからか、そんな部屋が負けるほどにこの場から異様に浮いている夫婦の存在が気になる。

「よくぞ無事に返ってきた、ムゼーラン。そして突然呼び出してすまなかった、ルイシアよ」

 何でこの人、私の名前を知っているの? 私の身内にこんな存在感の塊みたいな人が居たの?

 頭の中が疑問符だらけだった。

「状況が読み込めていないみたいですわ、あなた」

 お上品な女の人が存在感の塊な人に言う。

「む、そうか。ではまずは肩の力を抜いてもらおうか」

 え、何が始まるっていうの?

 身なりの良い男の人が咳払いを一つした。そして始まったのは想像すらしていなかった事だった。

「では行こう、俺国王。現国王ヌルピタス・ジュルリス。それが俺の名前だよろしくぴー。こちら王妃、現王妃シェクトリア・ジュルリスだぴー」

 初めて耳にする抑揚のある発声法で始まったのは異様な自己紹介。

 聞いた途端に私の体は固まり、二人の正体に息を忘れ、語尾のせいで途中から話が入って来なかった。

「おい、ムゼーラン」

「如何なされました、王よ」

「反応が悪いぞ。どうなっている?」

「こちらは果てに暮らす村娘です。生涯会う事など叶わないと考えていた人物と出会った驚きで動けなくなっているのでしょう」

「ふむ、そうか。そうなのか? ルイシアよ」

 名を呼ばれて意識が戻ってきた。

 危ない危ない。名指しで尋ねられては、固まっている場合ではない。

「あの、それはそうなのですが、先ほどの自己紹介が意外過ぎて……」

「ふむ。おい、ムゼーラン」

「如何されました、王様」

「不敬」

 え、私!?

「城下町では流行っていると聞いていたのですが、彼女の場所までは届いていなかったようですね」

「はっはっは。よし、死刑」

 待って、それはあんまりにも過ぎるっ。と言わなくちゃと思っても相手が王様なので発言が躊躇われた。この時、私は自分が極刑なのだと焦ったけれど、一向に私が捉えられる状況にならなかったからおかしいと思って王様を見た。

 すると王様の目線は私に向けられていなかった。

 私が間違っていなければ、先程からの不敬などの発言はムゼーランさんに対してだったらしい。

 私は一体、どのように振舞えば良いんだろう? 誰か教えて欲しい。

 そう思っていたのに、百科事典は答えてくれない。

「止めましょう、王様。彼女が困り果てています」

「やらせたのはお前であろう。庶民は緊張をしているだろうからと」

「どうやら王族、貴族の冗談は庶民には受けがよろしくないみたいです」

 え、冗談? いやいや、全然笑い所が分からなかったんだけど。私はムゼーランさんを凝視し、無言で訴えた。

「ふむ、そのようだな。しかし、我らは庶民には理解されていないのだな」

「今だ線引きがされていますからね。ですが、彼女がその線を消す一人になるでしょう」

 なんか随分な役目を担った感じになってるけど、私、絶対に解決出来るとか一言も言ってないんだけど。

 声を大にして言いたいけれど、ここにはムゼーランさんの他に王様と王妃様も居る。

 変な事や行動をしたら周りの使用人に命を取られかねないから言えない。

「お二人とも、余り期待を寄せては彼女がかわいそうですよ。立場上、彼女はお二人の言葉を絶対と捉えるしかないのですから」

 ここで王妃様が私を助けてくれる一言。

「おっと、それはいけない。すまないな、ルイシアよ。我らの悩みは聞いていよう。打つ手が無くなり、求めた一策がそなただ。手立てが無くともそなたに不利益が生じる事は無い。また、本来ならば然るべき場所で顔合わせをするのだが、今回はそうは出来ぬ事情があったのだ。驚かせてすまない」

 良かった、失敗しても生きて帰れそうで。

「そ、そのようなことは……。事情があるなら仕方がありません。はい」

 気にはなるけど、聞いたら駄目そうな事には踏み込まないでおこう。

「王様、彼女は事情を知りたいようですよ」

 察し良く私を追い詰めようとしないでくれるかな、ムゼーラン税務官殿。

「そうか。ここまで明かせば気にもなるな」

 止めて、王様。私、必要以上の情報を求めて狙われたくないっ!!

「ああ。実は二日前から息子は城を離れているのだ。当人も交えるつもりであったため、予定を変えたのだ」

 良かった。ものすごい秘密が隠されている感じじゃなくて。

 それにしても、もしもこの場が無かったら、数日はこの部屋の中で過ごさないといけなかったのかな。

「そうだったんですか。あっ」

 ここで私は、王様が自己紹介したというのに自分はしていないことに気付いた。

「名乗る事を忘れていました。メシイモ農家のルイシアと言います。偉い人への接し方が分からないので失礼な事をすると思いますが、よろしくお願いします」

 自分なりに王様に挨拶をした後に思った。

 百科事典に聞きながらでも挨拶をすれば良かったと。

「心配するな。こちらが招いた上にいきなり連れてきた形だ。それに我々が協力を申し出ているのだ。人としての礼を欠く振舞いをしなければ目を瞑ろう」

 多分、罪を犯すような事をしないなら見逃してくれるのだろう。大丈夫、普段通りの行動をしていればいいんだ。あ、でも、この部屋の物以外は見るだけにしておこう。

 ほんと、かなり寛大な王様で良かった。

「あ、ありがとうございます。私の記憶を全て引っ張り出し、持てる礼儀を全て使っていきます」

「ルイシアさん。道中での振る舞いを見る限り、最低限の事は出来ていたので問題ありませんよ。まあ、あれ以外は……。それでも不安でしたら、貴族の礼儀を学んでみるのは如何でしょう?」

 あれとは初日に叫んだ事かな。

 学ばせてくれるというのはありがたいけれど、王都に来るのは今回だけだろう。

 だから必要無いかな。と私は思っていた。でも、そうは思わない人が一人。

「まあ、良いわね。あなたの知識はこの国を豊かにしてくれたものです。今後の事もありますし、何より隣人に紹介しやすくなるもの」

 王妃様が一番乗り気なのは何で?

「えっ、あの、長期滞在する予定なのですか? 私」

「数日で息子の問題は解決するのかしら? しないと思うわ」

「しないだろうな」

「はい、しないでしょうね」

 王様とムゼーランさんが王妃に同調する。何だ、無言の圧力を感じる。

 これは私も気になる所。後で百科事典に聞いておこう。

「息子の問題の他にもあなたには滞在してもらう理由があります。現在、王都内の畑でも報告された栽培法でメシイモを育てています。あなたには土地を見て間違いが無いか、足りないものは無いかを確認してもらいたいのです。なので、当分は故郷に戻れないと思ってください」

 村でも日当たりとかでやり方を変更している。だから、王妃様が私に求めている事は理解できた。でもそれでも頷けない理由がある。

「村の私の畑のメシイモはどうなるんですかっ」

 村では今まさに栽培中のメシイモを放置している状態だ。腰の弱い父さんに負担をかけても面倒を見る私は王都だし、すぐにでも戻りたい。

「その点は安心してください。この件の報酬として、あなたの家の分の税は今回免除されます。また、足りなくなった労働力と実地研修を兼ね、あなたが戻るまでの期間の人数は補填させてもらいました」

「気遣ってもらって嬉しいですけど、村には他所の人が止まる場所なんて村長の家しかないですよ。王都の人が村で暮らせますか?」

 村人でも、特に若者は嫌になって村を出るのに、村よりも楽しい事の多い王都で過ごしていた人が耐えられるとは思えない。

「大丈夫ですよ。未開の土地を拓くための部隊があるので。その中から数名を選び、村の畑の調査とあなたの家の畑の手伝い。それから村の警備を命じていますから。野宿でも問題ありませんよ」

 討伐が主な役目だと思っていたけど、そんな部隊もあるだなんて知らなかった。

 人が減っても関係無いとばかりなやり方をされると思っていたけれど、王妃様、ううん、王様達は自分の利益と村の利益の釣り合いが取れるようにしてくれていたみたいだ。

「まあ、それなら――。ってならないわ。私、最低限の荷物すらを持ってないんで」

 王都はお金でのやり取りが当然だろうから、物々交換とかも出来ない。私は何時終わるとも知れない役割を道中で与えられた服でやり切らなければならない。

 お城の中で、私が洗濯したり、干したりして良い場所ってあるのかな?

「身だしなみを整える道具も無いのですか? 」

「村を出た時はこの服だけでした。着替えは何着かもらえましたけど」

「それは流石に……。悩みは分かりました。聞いているかもしれませんが、滞在中の衣食住の心配はありません。もし足りない物があればあなたの世話係に伝えるように。揃えましょう。王都の中でも選りすぐりの店から取り寄せますから」

 チート集まる王都のお店。当然下着とか服に関するチート持ちが作った商品も多く出回っているだろう。それを聞くと結構心が揺れる。

「それにしてもです、ムゼーラン。流石に私物を準備する時間くらいは作ってあげるべきだったのでは? 女は必要な物が多い事は理解しているでしょう。馴染んだ物でなければならない事も多いのですよ」

 道具が違うから問題がある、という事は無いけれど、やはり持ってきたかった私物はいくつかあった。

 王妃様のさっきからの気遣いがとてもありがたい。

「しかし、王子の事を思えばこそ、一刻を争そうと判断しました。ご容赦ください」

 次期国王になるかもしれない人物の方が大事とムゼーランさん。

「なら仕方無いわねぇ」

 王妃様からの私の想定外のお言葉。

 あ、親馬鹿だった。息子の方が大事とは親故なのだろう。急に手のひらを返された感じでモヤモヤするけれど、これまで私を気にかけた発言をしていた事は忘れない。

 でもそれはそれとして落ち込むよね。

「そう落ち込む事ばかりでもないですよ。王族のみが許された場所や機密がある場所以外の城内を歩く事を許します。あなたが望むなら護衛が付きますが外へ出られます。情報漏洩を防ぐために検閲はしますが、お父上に手紙を出す事も出来ますよ」

 王子の秘密を漏らすと大変だものね。結構自由に動いても良いというのもありがたい。

 でも問題はもっと根本だ。

「……そもそもの話ですが、手持ちがありません」

 お財布は今、村の私の部屋にある。村じゃ必要無いからほとんど埃を被っているような状態のお財布が。

 これじゃあ二度と来る事が無いであろう王都を楽しもうにも、見ているだけという悲しい状態にしかならない。せっかくなら、メイティアや父さんとか他の村の人なんかにお土産とかを買いたいし、自分用にも何かしらを買って帰りたい。

「そうでしたか。では、その話をしましょう。役目の間はお給金が出ますよ」

「何ですって?」

 私の目がキラリと輝いた。だって、王妃様の言葉って、言ってしまえば王城での仕事って事なんだから。となればよ、それなりの額になるだろうから。こりゃあ、治るものを治さずに粘り続けたら一生遊んで暮らせるんじゃない? お城暮らして。

(本気ですか?)

 そんな訳が無い。分かってるくせに聞いてくるんじゃないの。

 王城での仕事って事でほんの一瞬だけ浮かんだだけ。

「近くへ。因みに額はこれくらいです」

 王様の前で言うには下品なのだろうか。私を呼び、耳元で額を教えてくれた。

「それ、本当なの?」

 王妃様の声が耳元で聞こえた事とその報酬額に驚かされた。

「ええ、間違い無く」

 私が想像していたよりも多い。次の村長選があったら確実に、何をとは言わないけれど配り歩いて当選出来るだけの額だった。

 いや、目指す気は無いし、村長選なんて無いけどね。

「成功報酬もありますが、それはまた別の機会に。まずは王子と対面してもらわなければなりませんし」

 あの額に更にドドンと報酬が積み重なるとな!?

 この先の人生、怖い事なんて何もないかもしれない。

(滅びますよ)

 夢心地な所に脅し文句を言ってくるんじゃないの。まったく、私のチートはどうしてこうなのか。でも、凄くやる気が出てきた。だって、物々交換と違って、お金って自分で汗水流して作った物じゃなくても欲しい物と交換出来るんだもの。

 額を聞いたらね。人間は適度に動いていた方が良いとかなんて考えも吹っ飛ぶってものよ。

「そうですね。本人にしか分からない話もあると思いますし……。あ、確実に成果を出せるかはまだ分からないです。絶対じゃないですから」

 百科事典でもお手上げだったら私には何も出来ない。それで何らかの罪に問われても困るから、予防線を張っておくに限る。先の会話で大丈夫だとは言われても心配だから。

 念押しすると、王様が言う。

「その時は人選を誤ったムゼーランの首が飛ぶだけだ。そなたが不安に思う事は何もない。王子が死なない限りはな」

「軽傷までなら罪にはしませんよ」

 さらっと笑顔で補足する王妃様が怖過ぎる。ムゼーランさんの事は夢見が悪いけれど、その時は諦めてもらおう。

 そう、もしもの、本当にもしもの時には……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ