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月色の砂漠 -ミフル-  作者: チク


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25/28

写真


「よし! こんなもんだろう!」

 元気よく喋ったのはグレスだ。


「これでオレの家、完成なの?」

 と、尋ねるミフルは若干不満げだ。

 なぜなら、室内に収納棚的なものはないし、壁なんかはもっとこう色とか統一するもんじゃないんだろうか? もっともミフルも専門家ではないので上手く説明できないのだけど。


「細かいとこは自分で自分好みに調整するんだよ。そこにな建材とかあるから」

 言われてみれば、家のそばに雑に建材が放置されていた。

 てっきり家造りに余った材料がほったらかしになってると思っていた。そのうち自然になくなるだろうなんて、正直、気にも止めていなかった。


「まぁ、ケイみたいにあえて汚すのもアリかもな」

 新築の家があんな汚部屋になるなんて考えたら、ミフルはぞっとした。


「もし、これが欲しいとかあれば自分で調達するか、こっちにありそうなら持ってきてやるから」

 なんて言い残し、グレスは帰って行った。



     *


 ミフルはいよいよ出来上がった自分の家を見上げてみた。


 かつて自分が住んでいたラテーシアの屋敷に比べれば非常に小さい。だが、きっと一人で住むには十分なのだろう。

 一階建ての家で、何回も家の周りを歩いてみた。家の前に何か植えてみようか、それともペットでも飼ってみようか、それとも高価そうな砂利道でも作ってみようか―― そんな楽しい空想に浸り……。


 家に入ると、ミフルはまず図鑑を本棚に並べた。

 ケイが運んでくれた図鑑。ケイの事を考えると何だか癪に障る。

 不快な気持ちになるのが嫌なので、なるべく考えないようにした。


 図鑑と一緒に、かつて自分が書いた暗号だらけのノート。

 懐かしい気持ちで眺める。

 すると、ノートから1枚の写真が出て来た。

 そこはかつての自分の部屋の写真。本棚が映っていた。

 それを眺めながら、当時の図鑑の並べ方を思い出した。毒がありそうな生き物別に並べていたんだった。


 花を飲み込んだ蛇が毒性が強くなることに気づいた時は、花の図鑑を蛇の図鑑の隣にした。



 そして、思い出す。

 自分はこんな写真を撮った覚えはない。

 

 考えられるとしたら、家族か部下の誰か。

 褒められたことではないが、かつての自分は猜疑心の塊だった。誰かを部屋に入れたような記憶はほぼない。

 自分のノートを見るが、やはり読めない記号で書いてるので、写真をどういう意図で撮ったのかあまりヒントにはならなそうだ。


 かつてのミフルが最高位を暗殺未遂したことにより、ラテーシア家の者たちがミフルを別部屋に隔離し、入念にミフルの部屋を調べたようだ。その時にでも撮ったのだろう?


 そう結論づけたミフルだった。

 かつての図鑑の並び順がわかり、その通りに図鑑を並べ、ノートも本棚に並べ……


 そうして、机に座ってみる。

 この部屋だけは、かつて住んでたラテーシアの屋敷の自分の部屋そっくりに配置されていた。

 有難いような、余計なお世話なような……。



 机で、かつて自分がしてたように日記を書いてみる事にする。


 今日の日付と、家が完成したこと、一人暮らし開始した事、そんな事を書いて、懐かしい気持ちになったり、写真の不思議なこととか書き連ねている内に夜になっていた。



――寝よう。

 書斎と寝室は別部屋になっていた。

 寝室のベッドに座り、サイドテーブルの呼び鈴を鳴らしていた。


 部下か侍女に温かい飲み物でも持ってきてもらおうとしたが、当然ながら誰もやってくる訳がなかった。


――そうか。一人暮らしなんだ。ラテーシアの屋敷みたいに誰かがいるわけがないんだ……。


 ミフルはなんだか寂しい気持ちがした。



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