大病院で検査しようぜ?
ご笑納ください。
5月19日、何の因果か翌日は私の「しろひよ」シリーズ記念すべき10冊目の発売日。
その作者の私は病院の待合で虚無。
ほぼ朝一の予約だったんですけど、一応紹介状あっても問診とかしないといけないので、そういうの済ませたらなんと1.5時間待ちですよ。あるぇ?
ここで「予約時間より早よ来てるのに、まだ待たせるんかい!?」とか思いましたよ。思ったところで人間だもの。何にも出来やしないので、ひたすら順番待ち。
予約時間を大幅に遅れて診察が開始されたのは昼前で御座いました。
診察室の中にいらしたのは優しそうな男性の医師。
病院からの紹介状とCD-R、私の書いた問診を見て診察が始まります。
「えぇっと、マンモグラフィーに異状なくエコーで乳管拡張が見られるということなので、申し訳ないんですけどこちらでもマンモ(グラフィー)とエコーを撮りたいんですが……」
マジかよ。
またあの作った技師さん達に軽く殺意を抱きそうになる、アレを?
あの、そこは脇であって乳じゃねぇよ!? って言いたくなる、アレを?
ええ、でもですよ。私に拒否権なんかある訳ないじゃないですか……!
死んだ魚の目で「はい」って言いましたよね。
さらにそこから。
「それでですね、更に申し訳ないんですけど、エコーの予約が13:30からしかとれなくてですね……」
「あ、はい(虚無)」
ってな訳で、マンモグラフィーへ。
この病院、検査室が結構色んな階に散らばってまして。
あっちウロウロ、こっちウロウロさ迷って、漸く到着したX線検査室ゾーン。そこに掲げられた待ち時間に絶句。
なんと80分。
マジ? 検査待ち時間80分とか、エコーに間に合う?
三度見しても待ち時間が80分から減るはずもな……くなく、75分になってました。どのタイミングで5分減ったし。
とはいえ、検査しないことには診察が出来ないので、当然待ちますよね。
けどこの75分というの、曲者でして。大病院なんで色んな科がありますよね。一般的なレントゲンとマンモグラフィーを総合して75分で、実際マンモグラフィーの待ち時間はそんなに長くなかったようで20分ほどで順番が来ました。これはラッキー。
検査室の中にいた技師さんは女性二人で、一人は指導役でもう一人は研修のようでした。
「よろしくお願いしま~す」とお互いに挨拶して、上半身裸になって、あの悪夢の寄せて捻り上げてタイムの始まりです。
研修さんが指導役さんの助言を受けて、私の胸を寄せて寄せて捻って上げます。めっちゃ痛い。
人生でこんな痛いことあるぅ? って思うくらい痛い!
私、痛いの嫌いって言ってるのに、今月に入って二回目ですやん!?
またも正面と側面からの二回×片乳ずつ撮影の計四回……だった筈なんですけど、研修さんが担当した側面1枚が寄せて寄せて捻って上げてが足りなかったようでお代わり。最早この時点で燃えつきそうでした。
昼食を挟んで今度はエコー。
これはやっぱり前の病院でもやったように、妙に生温かいジェルがどうにも鳥肌。
以前と同じく胸をグリグリやって画像を撮り終えた頃、担当の先生が「うん?」と仰る。
やめてよー、何か異常あったのー?
検査の最中だからちょっとした先生の仕草でさえ、心臓がドキッとするんですよ。なにせ小心者だから。
そしたら先生が、オーダーが表示されているだろうPCの画面を見て「細胞診とか言われてます?」っていうじゃないですか。
「細胞診ですか?」
「はい。エコーやる時やっちゃうことが多いんですけど」
「いや、私は何も聞いてないです」
「そうですか」
そんな会話をして、担当医さんが「ちょっと聞いてみますね」と問い合わせしてくれました。 するとエコー担当の先生が「あれ? それでいいんですか?」と検査の先生に尋ねます。
「やっぱり分泌液採るそうです」
「あ、そうですか」
そういうやり取りをして5分ほど、検査室の扉が叩かれます。入室の許可を担当医さんが出して、入っていらしたのは検査担当の先生でした。
でも手ぶら。
するとエコー担当の先生が「あれ? それでいいんですか?」と検査の先生に尋ねます。すると検査担当の先生は頷き「一応、これでも採っておいて、と」と返します。
私としては「一応これでもって何!?」ですよ。「これでも」ってことは「それ」とか「アレ」があるってことです!?
もう嫌だ! どいつもこいつも私をビビらせるのは止めろ!
内心は半泣きなんですけど、私あんまり表情筋動かない方なんで、見かけは虚無。無表情ですよ。
私がどんだけ内心で叫んでても、先生達はお仕事なので。
「じゃあ、分泌液採らせていただきますね~」
そう言われて、またいつぞやみたいに乳搾りされまして。もう虚無どころか無ですわ。今だったら悟りも開けるかもしれない。諦めっていう悟りを。
検査自体は出て来た分泌液をガラス板に採取、カバーグラス被せてプレパラート作って~という感じ。
そういう諸々を終えて待合室に戻って15分ほどした頃、再び診察室へ。
中にいたのは最初の優し気な男性医師でした。
医師の説明ではやっぱりマンモグラフィーには何の異常もなく、エコーでのみ乳管拡張が見られ、乳管内部に10㎜程度のシコリがあるとのことでした。
これで何が問題って、乳管の中のシコリが良性とも悪性とも、画像だけでは判断がつかないっていう。
そらそうだ。
だから分泌液採取したんでは?
当然そういう疑問が沸くんですが。
「で、細胞診をしたいんですが」
「うん? さっき分泌液採取したような?」
「ああ、はい。分泌液だけでは偶々その液に細胞が出てこなかったということもあるんです。なので直接その問題ある乳管に針を刺して、そこの細胞を採取して検査しようと」
説明は丁寧でした。何せ絵に描いて「乳腺はここにあって~」とか「この辺りに細胞が詰まって~」とか、色々解りやすくしてくれたんで。
では、そのようにしてもらおうか。そう頷こうとした時ですよ。
「検査の方法は胸に針をぷすって刺すんですけど」
なんやて、工藤!? 工藤って誰か知らんけど。
何度も言ってますが、痛いの嫌いなんですよ!
ピシッと固まった私をしり目に先生は「あ、針っていっても注射針なんで、麻酔とかもなしで出来るくらいのもので……」と続けます。
違うんだ先生。大掛かりなことを心配してるんじゃないんだ。ただひたすら痛いのが嫌なだけなんだってば。寧ろ麻酔してほしいぐらいだわ、ちくしょうめ!
しかしやらなければ何なのか解らない。
最悪の方向だったらそれこそ「しろひよ」どうすんの!? って話をしないといけなくなるわけだし。
もうそこに関してはウダウダ言ってても仕方ない訳で。
「ところで先生」
「はい」
「その乳管の中にあるシコリなんですけど、10㎜ってことは最悪悪性でも初期って考えていいですか?」
「そう、ですね。そう考えていいと思います」
「ということは、すぐ死ぬってことはない? 治療も可能と考えて大丈夫ですか?」
「はい。そう考えていただいて大丈夫かと思います」
それならやることは一つ。悪性か良性かをとっとと確定させて、悪性だった場合は早期に治療を開始する。これしかないですよね。
「じゃあ、ぱぱっとその検査お願いします」
「はい、手配するので待合室でお待ちください」
という訳で、細胞診へ。
それでここでエコーの先生が、細胞診を「エコーやる時やっちゃうことが多いんですけど」と首を捻った理由が解りました。
細胞診ってそのシコリがある乳管に正確に針をぶっさすために、エコーの画面見ながらやる検査だったんですよ。
またヌルヌル! 今日だけで2回もヌルヌル!! 気色悪いって言ってんじゃん!?
内心ウギウギしてたんですけど、言ってもしゃーなし。
心を無にしてエコー画面を見ます。
すると「刺しますよー」っていう声とともに、エコー画面に映った乳管らしき場所に細いものが入るのがちらっと。
人間針が刺さってるところを見ると痛覚が増すらしいです。
実際身体に針が入ってるのは私には見えない訳ですけど、エコー画面には何か細いものがそこにある物を吸い取ってるの様子が、液体が動くような画像として見えるんですよ。
うん、キモい。マジでキモい。自分の身体のことなんだけど気持ち悪い。白黒画面で蠢く何かが、ちょっとしたグロ画像でした。
検査はとりあえず終了、結果は1週間後ということでこの日はそれで帰宅。
しろひよの宣伝と次の日の記念SSの準備でちょっと忙しかったです。
それから時間は経って5月26日、金曜日。
朝から活動報告更新して、朝ごはん食べて病院へ。
この日の待ち時間は30分ほどでした。
診察室には先週と同じ先生。
イスに座ると、開口一番「結果なんですけど」と始まりました。
「結論を先に言いますと、良性でした」
ひゃっふーーーーーー!! 私大勝利!
内心でガッツポーズを決めて、私はもうウッキウキですよ。この4週間、どんだけこのアレソレに悩まされたことか。それが、こんなに簡単に解消されたんですから。
いやー、悪性だった時には生命保険にガン特約があったから~とか、先進医療使える契約だったっけ~とか、まあ、色々考えて悲劇のヒロインチックに「病気になんか負けないんだからね!」とまで思いましたが、草が生える。大草原です。
けど、先生の話は終わってなかった。
私の症状というか病状というのかの名前は、乳管内乳頭腫というそうです。
乳管内に正常な細胞が詰まってシコリになってるいるんだとか。
「乳管内で細胞の入れ替えが起こる時エラーを起こすのが乳がんだとすると、今の状態は正常な細胞がどんどん積もってる状態ではあるので、他の箇所よりその分バグる可能性があるってことですね」
「じゃあ、悪性に転化することもあると?」
「可能性はゼロじゃないです。とはいえ、この症状と診断された人の年間の総人数の1%あるかくらいですけど」
限りなくないに近いけど、あるにはあるってことですね。
それで私に提示される方針は2つ。1つはこのまま経過観察、もう1つは悪性に転化しないとも言い切れないのでその部分を切除する手術受けるか。
経過観察は半年に1回くらい病院で診てもらって観察を続ける現状維持ってやつなんですが、生憎私の家近くにこの専門科がない。
以前に行ったクリニックは乳腺外科が月3回だけなんですよね。
手術に至っては、私は痛いのが本当に嫌だって何回言ったらryです。
まあ、この時点で答えは決まってる話ですよね。でもね、肝心なことを聞いてないのを思い出しまして。
何ってアレです。乳。
「あの先生、手術は兎も角、胸から出る液体を止める方法は……?」
「あ、無いです」
「へ?」
「いや、無くは無いんです。手術でその乳管切除したら止まります。それ以外薬で止めるという方法はなくてですね……」
うせやぁん!? そんなことあるぅ!?
そもそもの問題がちっとも解決しないとか、そんなことある? いや、あったよ。マジか。
黙ること数秒。
「先生、あの手術ってどんなもんですか?」
口を開いた私に、先生は丁寧に説明してくれます。
そんな大掛かりではなく入院した次の日に手術、手術した翌日は無理にしても、その次には退院できる程度の手術だということ。
そしてそういう小さい手術ではあるけれど、問題のある乳管を全部取ってしまうので乳頭の半分ほどが無くなり胸に大きな傷が残ってしまうこと。
図を描いて丁寧に説明してくれましたとも。
でも私の知りたいことは他にあって。
「痛いんですか……?」
私の言葉に先生が一瞬止まります。そらそうだ。身体を傷付けるんだから痛いに決まってる。
すると先生は少し考えて。
「えぇっと……僕はその手術経験がなくて……あ、手術されたってことなんですけど、なくてですね……。あ、でも、そんなに痛みを訴えられたことはなかった……かな? だけど、個人差ってあるし……」
先生、貴方、とっても良い人ね……。
まあ、結局のところ経過観察を選べば私の乳の問題は解決しない。だからといって手術したところで、そこの乳管が乳がんに転化しないというだけで、身体に大きな痕が残るし他にも手術した後に出る色んな問題がある。
どっちにしろ痛し痒し。ならば経過観察で。
そんな訳でこんなにどったんばったんやったわりに、私の乳の悩みは一向に改善されないって結果が残りました。
これがこの5月の狂乱だったわけですよ。
終わってみれば健康でよかったねってことなんですが、冷静になればなるほど「結構面白い経験したな」って感じでしょうか。
こうなるまでおっぱいに対しては特に興味もなけりゃ、煩わしいと思ってたんですが、少しくらいあってよかったと思った経験でした。
皆、検査行こうぜ!