表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才になりたかった変人  作者: 立花悠真
普通じゃない何か
9/15

数週間がたった

あの日から、彼はというと。


「要人〜、今日暇?」


いつの間にか呼び捨てになり

話しかけてくる事に、躊躇が無くなった。


いや、初めから躊躇は無かった。

ただ、上手く言えないが

少しフランクになった。


「バイトです。」


「じゃあ、一緒に帰ろっか」


この、なんとも言えない

スピードのゆっくりさにも慣れてきた。


年上だからか、話すのに物凄く余裕を感じる。

こっちは今だに喋るのに気を使うというのに。


気を使うというか…。


「一人で帰ります。」


「ケチだな〜」


「チャイムなりますよ」


「はいは〜い、また後でね〜」


そう言って割とあっさり教室に帰った彼。

意外と聞き分けのいい一人ではあるのかもしれない。


『ねー、さっきのって例の野球部の先輩でしょ?

なんで立花さんなの?』


『なんで、あの先輩が立花さんと?』


最近増えた、私の事であろう陰口。


気にはしていないが、

高校生活を平和に暮らしたい私は、

出来れば避けたい状況にあるのは、確かだ。


「要人!」


「…何?」


急に巴が私の机に手を付き、名前を叫ぶ。


「さっきの先輩とどういう関係??」


恋敵でもあろうかという、滑稽な質問を私に問いかける巴り。


「どうって言われても、向こうが勝手に話しかけてくるだけなんですが」


「それどういう関係?」


「さー?」


「さー?って…」


巴は私にどんな返事を期待したのかは

この私でも、薄々分かる。


高校生なら、こういう話題は大好物だろう。

野球とバットぐらい親密な関係と言っても過言ではない。


「ここだけの話、最近色々な所で話題になってるよ」


「はい?」


「だから!女子の中で要人とさっきの先輩が付き合ったらしいっていう噂」


「はい??」


思っていた以上にまずい状況な事が

今明白になった。


「それも、あの先輩!なんかかっこいいで有名で

3年生の女子の中では、手を出さないっていう

暗黙のルールみたいなのがあるらしい」


また、面倒な人に私は捕まってしまっている事も

判明。


やっと、陰口の理由がわかり

すっきりはした。


理由が分かれば、対策は簡単だ。

しかも今回の問題は簡単に解決出来る。


「で!どうなの?」


「どうも何も、知らない人に話しかけられてるだけ」


知らないフリ。

後は、彼からの接触を経てばいいだけ。


「そんなことある?だってほぼ毎日話に来てるじゃん!」


「ほぼ毎日、知らない人に話しかけられてるだけ」


「何それ、理由になってないよ」


「…」


「ねぇ、付き合ってるの?」


「…」


こうなると巴は、面倒だ。

気になる事はとことん追求しないと気が済まない。

自分がこうだ、と思ったことは意地でも曲げない。


さぁ、どう誤魔化すかと悩んでいたら


(キーンコーンカーンコーン)


ベストタイミングで予鈴が鳴る。

そして、次の授業は英語。


「巴、英語だから後よろしく」


「え!ちょっとまだ話途中!」


巴の叫ぶ声を背後に、私は保健室に向かう。


これほど、英語の授業であった事に

感謝したことは無いであろう。


ただ、問題は山積みだ。

まさか、付き合っている事になっていようとは。


そこまで話が膨らんでいるとは

思ってもみなかった。


何処から、そういう火種が出てきたのかが

気になる所だがとりあえず今は

保健室で睡眠を取れる事の喜びの方が大きい。


少し急ぎ足で、保健室に向かう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ