魔法騎士団団長アクシオス・ティンゼル
魔法騎士団団長アクシオス・ティンゼル。ガルーダさんの魔法騎士団第二部隊隊長よりもさらに上の位だ。魔法騎士団のトップで、魔法騎士団第一部隊隊長でもある。
アランが目指している位でもある。そして、また副隊長のアランのお兄さんを殺した傭兵を倒した人だ。当然、ガルーダさんよりも強いだろう。
ルナの店が有名な理由が分かった。魔法騎士団団長の店なんだ。当然だな。ルナが明確な理由を言わない理由もな。
「2人とも待っていてくれないか?」
俺はチワとハズクにそう言う。
「ですがトキヤ様!……いえ、分かりました」
「了解致しました。ご主人様、お気をつけて」
2人はそう言い、部屋に残った。ハズク、気をつけて、って俺は一体なにをされるんだよ。
「亜人と話はついたな。ではついてこい」
ルナの父親、アクシオスさんはそう言い、ルナの腕を掴みながら、連れて行く。俺もその後ろを歩く。手を掴むのを止めてやりたい。ルナが嫌がっている。だが、家庭のルールに気安く入ってはいけないのも事実。今は大人しくしておこう。不服だが。
アクシオスさんが入ったのは確か、ヘプトさんとアランの部屋だったはずだ。同じ組織の人ならそれもありか?
「失礼するぞ、ヘプト・ミスチール。それに……確かアランと言ったな?」
「はっ!魔法騎士団第二部隊のアラン・オラードと申します!」
2人の部屋には2人が居た。アランがアクシオスに自分の紹介をしている。売り込んでいるな。
「全員座れ。話はそれからだ」
アクシオスさんはそう命令をする。ヘプトさんとアランがすぐに座り、アクシオスさんが机を挟んだ反対側に座り、ルナも座らされる。
俺も慌ててどちらでもないところに座る。何故か会議で一番偉い人が座る場所になってしまった。それ以外席が空いてなかったから仕方なくだぞ!わざわざこんな気まずいところに好んで座るわけがないだろう。
「それでアクシオス団長殿。話があると聞きましたが、トキヤさんにルナさんがいるのは何故でしょうか?」
ヘプトさんはアクシオスさんにそう尋ねた。当然だな。俺やルナみたいな一般人を、団長自らが連れて来るなんて異常事態だ。
「簡単なことだ。ルナが私の娘、それだけだ。そこの君は同じパーティリーダーと聞いていたので、ついでに連れてきただけだ」
「なっ!ル、ルナさんがアクシオス団長殿の娘ですか!……トキヤさん、あなた一体なんなんですか?」
俺が言いたいですよ!と思うが口にはしない。
「そんな事よりも、その反応を見るに、私の娘のことは知らなかったようだな。なら、出て行って良しだ」
「え?アクシオス団長殿、もしかしてそれを聞くためだけに私たちを集めたのですか?」
ヘプトさんはそう聞く。集まって1分ぐらいしか経っていないのに、自分の部屋を追い出されるのだから当然だ。
「そうだ。さっさと出ていけ!」
「「は、はい!」」
そう言って、ヘプトさんとアランは、急いで部屋を飛び出して行った。自分の部下に酷いな。
「君もそっちに座りたまえ」
「あ、はい」
アクシオスさんにそう言われて、俺は先ほどまでアランが座っていた方に座る。目の前にアクシオスさんが居る状態だ。
ふと、ルナが目についた。顔が青く、少し震えている。そうか、前から感じていた違和感はそう言うことか。カンラン村に行く時の、騎士団の話をした時の『私は行かないわ』と言う発言と、別れる時の少しの戸惑い?も全てアクシオスさんが原因か。
「あの、一体何の用ですか?ルナは俺のパーティメンバーです。いきなり連れて行かれるのは困るのですが」
「ルナは私の娘だ。いきなり連れて行かれて困るのはこちらだ。この出来損ないをな」
俺がそう言うと、アクシオスさんはルナに暴言を放った。
「な!実の娘を出来損ない呼ばわりはおかしいでしょう⁉︎」
「君に言われる筋合いはない。それに、私は基本の3属性と氷属性、雷属性を使えるんだ。妻も基本の2属性と木属性だった。それなのに、生まれたのは水属性しか使えない、しかも私の娘としてだ。これを出来損ないと呼ばずなんと呼ぶ?私は恥ずかしくて外も歩けない」
この人、さすがは魔法騎士団団長。しかも奥さんも隊長クラスなんじゃないか?でも、人としては最低だ。
「実の娘になんて事を言うんだ!仮にもあなたの愛した嫁さんとの間に出来た子供だろう!それを、魔法適正数が少ないってだけで!なんて呼ぶ?ルナだろ!あなたがそう決めたんじゃないか!仮に、他の人が決めたとしても、自分で納得しているはずじゃないのか!それなのに!あなたが親だろうと関係ない!ルナを!俺の大切な仲間を!出来損ないなんて呼ぶな!呼ばせない!実の娘にそんなことが言えるなんて、あなたは魔法騎士団団長と役職が良くても!父親としては失格だ!」
俺はひたすら自分の言いたい事を言った。ルナが青く震えるのもよく分かる。こんな親なんだ。色々あるだろう。アクシオスさんは俺の言葉を黙って聞いていた。
「トキヤ、もう良いわ。お父さんは少し前からこうなの。エレナ・ティンゼル、私のお母さんを傭兵に殺された時から」
ルナがそう言った。……どう言う事だ?……そうか、ルナがチワに《聖水再生》を使った時のあの言葉、『お願い!もう知り合いが死ぬのは2度と見たくないの!』だったか?あれは自分の母親の事だったのか。
それに傭兵?アランのお兄さんが傭兵に殺された、ってヘプトさんが話していた時のルナの様子……もしかして、ルナの母親を殺したのと同一人物か?初めてあった時の傭兵を恨んでいた理由もそれか。
「君に娘を連れて歩かれると、私まで迷惑をする。従って、娘をこのパーティから抜けさせてもらおう」
「それはあなたの都合です。決めるのはあくまで本人であるルナです」
「私はこの子の父親だぞ?」
「父親なら父親らしくしたらどうですか?少なくとも父親を名乗るなら、自分の娘を名前で呼ぶぐらいはしたあげたらどうですか?ルナはあなたに怯えているではありませんか?それに、ルナはとても優秀で賢く、実力もあります。確かに魔法騎士団団長のアクシオスさんには劣る可能性もありますが、それでも文句のつけようはないかと。あなたはルナをちゃんと見て判断しましたか?魔法適正の数だけを重視して、ルナ自身をちゃんと見てましたか?」
俺の言葉に、アクシオスさんは黙る。ルナは俺と自分の父親を交互に見る。
「では、君にルナを守ることが出来るのかな?私の娘を守ることができるのかな?どうなのかね?」
アクシオスさんはいきなり違う質問をしてきたが、俺はその意味を深く考えず答えた。頭に血が上っていたのだろう。
「正直、守ってもらう方が多いですね。ですが、俺はルナをこの命がある限り守りたいです。大切な仲間だから」
「綺麗事だな」
「確かにそうです。口だけならなんとでも言えます。ですが、俺は口にも出来ない人にはなりたくありません。だから、俺は有言実行できるように頑張っています」
「……ルナ、少し出ていなさい」
「……はい、お父さん」
アクシオスさんはルナにそう言った。ルナはそれに従って素直に出ていく。なんだ?何が始まる?ルナが退出し、場に沈黙が流れる。
「……ルナはね。エレナ・ティンゼルに瓜二つなんだよ。私はね、エレナに頼まれたんだ。『あの子を幸せにしてくれ』と。間違っても冒険者なんかやって、命を落とさないようにと、最新の注意を払ってきた。今日初めて話を父から聞き、急いでここにきたよ。おかげで服もボロボロさ」
そう、急にアクシオスさんは話し始めた。自分の愛した妻の瓜二つの子供、ルナを守るためにこんな事を?なるほど、出会ってすぐの『やっと見つけた』はそういう事か?
「何故です?何故ルナに出来損ないなどと言ったのですか?あなたがルナを大切にしたいなら、そのような事は逆効果だと思わないのですか?」
俺はアクシオスさんにそう尋ねる。
「ルナは私を恨むべきです。後5秒早く現場についていれば、私は妻を助けられたのですから。あの時、ルナはこう言いました。『なんでもっと早くきてくれなかったの?』と『私が強かったら、お母さんは死ななかった』と。ならば、私は私の1番の手元に置きました。こうする事で、一番早くルナの元に行けるからです。ルナは私を嫌っているでしょう。自分を責めるでしょう。ならば、私に全ての怒りをぶつけてくれれば良い。そう思いました」
……悪いけど、何言っているか全然分からない。嫌われたいからあんな態度を取っていたのは分かる。時系列的にも矛盾はない。でも、『出来損ない』は違うだろ?その言葉をルナにぶつけると絶対に自分を責めるだろうに。矛盾だ。……《精神誘導》の可能性!……いや、幾ら何でも考えすぎだな。
「とりあえず、ルナに謝るべきです」
「……そうか。……でも1つだけ。ルナとパーティを組んでくれてありがとう。君になら娘を任せても良いかもしれない」
「任せてください、俺はリーダーです。仲間は絶対に大切にします」
実力的にはほとんど形だけなんだがな。
「そうか。ありがとう。……では会ってくる。向こうがどうかは分からないがな」
「ちゃんと向き合ってあげて下さい。そして自分の思いを素直に伝えたら、きっと大丈夫ですよ。そうだ……最後にこの事を他の人に相談、もしくは知っている人は居ますか?」
俺はアクシオスさんにはそう尋ねる。もしかしたら、《精神誘導》にかかっているかもしれないからだ。魔法は基本的に詠唱を必要とするため、魔法騎士団団長ならば、気づくはずだ。だが、無詠唱ならば別かもしれない。一応聞いておくべきだと考えた。
「そうだな……確かもう1人相談した人が居たな。今はとある組織のトップをしているんだが……ギルドマスターの、ハヤト・グランドロスだったな」
いや、ハヤトかーい!てか、とある組織のトップって言い方やめてくれ!紛らわしい!……今回の報告も兼ねて、戻ったら一度行ってみるか。
そう言えば、あいつは無詠唱を使えるのか?やっぱチートとかで。使えるなら……まさかな。確かに組織のトップは色々裏仕事がやりやすいし、魔猪の時の盾男が、先生で2人目と言っていたが、あの考えは俺だから分かった。だが、ハヤトなら出来るのでは?……あれ?考えれば考えるほど、ハヤトが怪しく……まさかな。でも、一応警戒はしておくか。
俺はそう考えた。アクシオスさんは部屋を出て行った。ルナに会いに行ったのだろう。あとは2人の時間だ。俺はここまでにしよう。そう思い、部屋を出たらヘプトさんとアランが立っていた。
「トキヤ、大丈夫だったのか?アクシオス団長殿は怖い顔をして出て行ったが?」
アランがそう聞いてくる。おそらく緊張をして、顔が強張っていたのだろう。
「あぁ。そうそう、部屋貸してくれてありがとう。もう使って良いらしいよ」
「そうですか。……アクシオス団長殿は一体どうしたんですか?」
ヘプトさんにそう伝えると、そう聞いてきた。怖くて聞けなかったんだな。
「ちょっとした家族喧嘩を解決するんですよ。もうほっといておいたほうがいいですよ」
「な、なるほど……」
俺はチワとルナの待つ部屋へと戻った。
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あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら剣の勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




