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目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜  作者: どこでもいる小市民
第三章〜白殺虎との遭遇編〜
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突然の模擬戦 VSヘプト

俺とニーナちゃんは現在、王都を出るうちの1つの門にいる。そこで魔法騎士団の人たちと待ち合わせをしているからだ。顔も見たことない人達だけど。


ニーナちゃんは現在も俺と歩きつつ、王都を見渡して目をキラキラ輝かせている。カンラン村よりもすごく大きくて、人もたくさんいるしな。


途中でハクちゃんを迎えに行った。そして門の前に着いた。


「失礼、トキヤさんですね?」


後ろから不意に声を掛けられたので、振り返る。


「はい、そうですけど……ってヘプトさんか。どうしたんですか?」


話しかけて来たのはヘプトさんだった。昨日から思っていたが、隊服の白をメインとしたいい服だな。よく似合っていると思う。


「よくいらっしゃいました。ニーナさんも。実は……何ですけど。この度は私、ヘプト・ミスチールと隊長のガルーダ・バラガンが行くことになりました」


「 はい?2人がですか?俺としては構わないのですが、何故部隊の隊長、副隊長直々になのですか?」


「……隊長がですねーー」


話を聞くと、隊長が『白殺虎が出たのなら、私クラスが行くべきだ』と上に掛け合って、無理やり意見を押し通したらしい。


「行くのは正確には、隊長、副隊長の私、そして新兵が一人です。もう直ぐ出発ですが、その新兵との顔合わせぐらいはしておいたほうがよろしいでしょう?」


「確かにそうですね。それにガルーダさんにもご挨拶をしないといけませんし。……あ、ガルーダさんだ」


そこにはこちらに向かって歩いてくるガルーダさんがいた。


「よく来たな、トキオよ」


ときお?誰だそれは?


「隊長、トキオさんでは無く、トキヤさんです」


いや、間違えて言ってたのかよ!びっくりするわ!


「どーも、トキヤです」


「む?そうかそうか、すまんなー。はっはっはっ!ところで何しに来たのだ?」


「いや隊長が許可出して、自分からついてくるって言っておいて、何でその理由を忘れてるんですか!」


ヘプトさんがすごい怒っている。……よく、隊長なんて務まるな。……ヘプトさん、大変だな。めちゃくちゃ苦労してそうだ。


「副隊長殿、そちらの方が今回の付き添いか?」


隊長の後ろから、さらに別の人が出て来た。深緑色の髪をした男だ。身長は俺と同じくらい。


「そうですよ、アラン。こちらがあのトキヤさんです。今回同行することになりましたので」


「ふっ!俺の名はアラン・オラード。覚えておくがいいトキヤとやら。道中はせいぜい、足を引っ張ることのないように」


「わ、分かった」


言いたいことを言ったら颯爽と帰って言った。なんなんだ?新兵なのに副隊長にタメ口って。


「うちの新兵がすいませんね。実力はあるのですが、それ故にテングとなっていまして。実力がある分、それも治らずたちが悪い。ただ、悪い奴じゃないんですよ」


ヘプトさんが擁護する。まぁ、俺と同じくらいの歳じゃあ、強い力を手に入れたら増長するのも無理はないか。……俺もああなってた可能性は……やめよう、こんな妄想。


「ところでトキヤさん。あなたの実力を知りたいのですが、軽く手合わせしていただけますか?」


ヘプトさんが急に模擬戦か?を、申し込んで来た。


「俺は別に構いませんけど?」


「良かったです。どの程度出来るのかを把握しておいたほうが、隊列の配置など色々役に立つので」


つまり、行く時に俺がどの位置にいたほうが守りやすいかを決めるってことか?別にそんな強い魔物とか出てこないと思うんだけど。


「ええ、それじゃあ始めましょうか」


俺がそう言って剣の柄に手を持っていく。そしてヘプトさんと距離を5メートルほど離れる。


「ルールですが、剣は寸止め。魔法の使用は有り。ただし、怪我を負わせたら反則負け。どちらかが参った、もしくは審判の隊長が勝敗を決めるまで、でいいですね?」


「はい、それでお願いします」


「トキヤお兄ちゃ〜ん、頑張って〜〜」


ニーナちゃんが応援してくれて居る。頑張るぞ!でも、怪我はしないだろう。あくまでそう付け加えたほうが怪我の発生が起きにくくなるだけだろうし。


「ヘプト、お前も剣を鉄製に変えてこい。その剣じゃトキヤの剣が折れてしまう」


ガルーダさんがそう言った。それを聞いてヘプトさんの腰の剣を見ると、鞘と柄からしても、魔石が使われていることが分かる剣だ。


その剣を近くに置き、鉄剣をどこからか持ってくるヘプトさん。そして互いに剣を抜き、構える。


俺は相変わらず中段の構えで。動物や魔物と戦う時には、剣道は役に立たないかもしれない。でも、対人戦なら使えるかもと思ったからだ。


魔法は詠唱もあるし、鉄剣を片手にしないといけない(重くて片手で自分の満足のいく速さで振れない)から、使う余裕なんてないだろう。


盾は一応もしかしたら、魔法を使う可能性があるかもしれないから、持っていない。


対するヘプトさんは鉄剣を右手に、左手を腰に置き、まるでフェンシング?みたいな構えをしている。


「それでは、初めー!!」


ガルーダさんのデカイ声で模擬戦が始まる。そのせいで周りの騎士たちがこちらを見たりしている。ただし、俺はそのことには気付いていなかった。


『水よ。縄となりて、ヘプトさんを拘束せよ!《水拘束》!』


俺はいきなり魔法を使った。距離が一番開いている時が、今、この瞬間だと思ったからだ。


《水拘束》をヘプトさんに向けて放つ。あの体制からまっすぐ来る魔法を横に避けるのは難しいはずだ。


それと同時に俺は魔法を放つために片手持ちにした鉄剣を、両手で握り直し、走って間合いを詰める。


「はぁっ!」


ヘプトさんは《水拘束》を真正面から、剣で受け流し、軌道方向をずらしたのだ。


「マジかっ!」


俺は驚いて、急ブレーキをかけてしまい、せっかくの勢いを無駄にした。そしてまた後ろに下がり、間合いをとる。


「魔法を剣で弾くことは魔法騎士団なら出来て当然です。逆に跳ね返したり、今みたいに受け流したりできる人もいますし」


ヘプトさんはそう、わざわざ懇切丁寧に教えてくれた。舐められている。それと同時に悟る。今の俺じゃあこの人には勝てないと。


「こりゃあ勝てる可能性0%かな?」


でも、勝てなくてもいい。これは模擬戦。実戦では無い。


「……だからって、手を抜いていいわけじゃ無い!勝てなくてもいい!そうは言ったが、勝とうとしないとは言ってない!せめて一撃、浴びせてやる」


「へぇ、いい目ですね。やって見てください」


俺がそう言うと、ヘプトさんはそう言い返した。


「すいませんガルーダさん、盾を取ってくれませんか」


この盾も、もちろん鉄製だ。


「ヘプト、良いのか?」


俺がお願いしたら、ガルーダさんは、俺の対戦相手のヘプトさんに尋ねた。『途中での武器の追加はありなのか』と。


「構いませんよ。旅に出る時に持ち歩いてる品ですし、それを使う機会もあるやもしれません。それに……どうせ倒すなら本気の方がいい」


あれ?一瞬ヘプトさんが戦闘狂みたいな発言を。まさか、あの見た目でそんなわけないだろう。それに本当の戦闘狂なら、自分から突っ込んで来るはずだし。


てか、模擬戦の主旨変わってないか?あくまでこれって腕試しなんじゃ?『一撃浴びせてやる』なんて言ってる俺が言うのもなんだけど。


「ほら」


「ありがとうございます、ガルーダさん。それにヘプトさんも。すいませんが、もう一度合図、貰えませんか?」


俺は二人にお礼を言い、再度、『初め!』の合図をしてくれるようにお願いをした。


「構わん。それでは改めて……初めー!」


「はぁっ!」


俺は片手に持った鉄剣をヘプトさんに向けて……投げた。


「くっ!」


ヘプトさんはそれが想定外だったのか、少し反応が遅れる。ただ、さすがは副隊長だ。すぐに自分に向かって来る俺の投げた鉄剣の、刀身の部分を狙い、弾き落とす。これなら俺が剣を取るときに、致命的な隙ができる。


『我が炎よ。球となりて、ヘプトさんを焼き尽くせ!

《火球》』


剣を持っていた方の右手で、《火球》を俺の鉄剣を弾いたばかりの、ヘプトさんに向けて放つ。ヘプトさんは回避が出来ない。


「舐めるなっ!」


ヘプトさんはそう言って、《火球》を剣を振る風圧で、勢いを弱め、鉄剣で直接叩き潰す。別に舐めてはいないんだけどな。


俺はその間に間合いを詰めて、弾かれた鉄剣を拾う。

ヘプトさんはそのしゃがむ隙を見逃すはずもなく、俺の心臓向けて、剣を刺そうとして来る。


俺はヘプトさんが狙う、心臓を守る盾を……わざとずらす。


「なっ!」


ヘプトさんは驚愕する。そして俺の狙いに気づく。先ほどの一撃浴びせてやるの言葉。そう、俺の狙いはルールの『相手に怪我を負わせたら反則負け』……と、思うじゃん?


「くっ!」


ヘプトさんはギリギリのところで勢いを殺し、そして剣を引く。これは寸止めではなく、自身の攻撃のキャンセルだ。そして、ヘプトさんはその急な逆の動きをして、体勢を崩す。


ヘプトさんは言った。『この国の人々の笑顔を守ることだ』と。俺にはニーナちゃんが居る。ニーナちゃんの前で俺を傷つける事、出来るか?


上記の違い、ここら辺は屁理屈にもなるが、騎士の誇りがあるならば、嘘はつけない。『あれは寸止めだ!』なんて、叫ばないだろう。


ルールの裏を探すクソ野郎と呼ばれてもいい。俺は強くなるためには、こんな事だってする。自分がいるその状況を全て利用する。


「はぁぁぁぁっーーー!!!」


俺は拾った自分の鉄剣をヘプトさんの首に向けて振りかぶり……寸止めで止める。


「はぁ……はぁ……俺の勝ち、ですね?」


「……勝負あり。勝者、トキヤ」


ガルーダさんがそう宣言をする。


「「「うぉぉぉーーーーー!!!」」」


「うおっ!何だ?」


そのデカイ周りの声は、周りの騎士だった。


「トキヤさん、君の勝利にみんなが驚いているんだよ?」


ヘプトさんがそう言ってくれた。そう言えば、なんで俺、こんな真剣になってんだ?


「あ、すいませんでした。俺、勝つことに夢中で、騎士道に反するような、ルールの裏抜けをするようなことを」


俺はヘプトさんに模擬戦とはいえ、騎士道に反するようなやり方をしたことを謝る。


「構いませんよ。そのルールは私から出しました。あなたはそれを利用しただけです。それにしても、すごいですね。まさか、自分から怪我をしにに行くような行動をするとは。ですが、その自分を犠牲にする行動はやめた方がいい。決して負けた嫉妬などではなく、後ろの少女の事を考えてのことです」


ヘプトさんはそう言い、後ろに指を指す。そこには泣きそうなニーナちゃんが居た。


「トキヤお兄ちゃーーん!」


「え!ちょっ、まっ!……ぐはぁ!」


俺は急に突進してきたニーナちゃんの勢いに、攻撃を受けた時のような声を漏らす。剣は危ないので、焦りながらも、すぐそばに置いた。


「トキヤお兄ちゃん、大丈夫?怪我してな〜い?痛いとこ無〜い?」


ニーナちゃんはそう言って俺の胸元をなどを見たり、触ったりして確認をしている。


「大丈夫だよニーナちゃん。俺はどこも怪我していないよ?」


そう言うと、ニーナちゃんは安心した顔の笑顔を見せて


「良かった〜。お兄ちゃんまで居なくならないよね?」


……カンラン村の人々のことだろう。両親も殺され、ちょっと前にガストさんも殺され、残っている知っている人は俺とチワとかだけだ。


「ニーナちゃんを残して居なくなるなんて、絶対にないから、安心して」


「「「ブゥーーー!!!」」」


俺がニーナちゃんにそう言うと、周りの騎士たちは何故か、親指を下にしてブーイングし始めた。


「なんでだよっ!」


俺がそれに対して突っ込む。


「皆さん、娘さんなどに会えない日々が続いてますから、こんなシーンを見せられて、妬いているのでしょう」


ヘプトさんが理由を解説してくれる。男に妬かれても嬉しくねー。だからって女だったらいいわけじゃないけどさ。


「トキヤ、良くやったな。お前のすごさを思い知ったぞ。それでなんだが……お前、うちの隊に来い」


「……はい?」


ちょっと待って。今、ガルーダさんが変なこと言い始めたぞ。聞き間違いか?


「はぁっ!隊長!バカな事を言わないでください。いきなりそんなこと無理に決まっているじゃありませんか!」


ヘプトさんがガルーダさんの胸倉を掴み、前後に揺らしながら、訴えかけている。


「うるさいぞヘプト。俺は才能あるやつは、隊に誘う主義なんだ」


「あんた、トキヤさんに腕はまだまだって、言っていたじゃありませんか!」


ヘプトさんは驚きすぎて、隊長呼びからあんたに変わってしまっている。


「それでトキヤ。お前はどうなんだ?」


ガルーダさんはヘプトさんを無視して結論を出そうとする。


「お断りします。僕には仲間が、パーティメンバーがいますので、作った、そしてリーダーでもある俺が抜けるわけにはいきません」


「はっはっはっ!そうかそうか。だが、たまになら、剣を教えてやろうか?」


ガルーダさんは、自分の誘いを断った俺にも、そんな事を言ってくれた。


「それはありがとうございます!今後とも宜しくお願いします」


俺はそう言って頭を下げた。


そして、歓声の中、その名をアランと言う男は


「あの男が?副隊長に勝った?なんの間違いだ?俺は認めん!俺は認めんぞ!」


などと言っていたことをトキヤは知らない。

面白かったら誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。

あと、私のもう1つの連載作品の

『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』

も、是非読んで見てください。


そして初めての五千字越え。それと、高校からの宿題と、書き溜めが1話だけなので、今週の金曜日は休みます。次回更新は来週の月曜日です。

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