仲間の信頼、とあるギルマス室での会話
……あまり寝付けないな。目を瞑ると、あの光景が目に広がる。ただ、それでも初めて人を殺した時よりはましだ。
前は正当防衛と言う心の障壁があってあれだったのに、今回はそれよりも酷い状況でましって……人が死ぬことに慣れていっているのか?……嫌だな。俺が俺で無くなりそうだ。
「くそ……」
そのことで、自分の弱さに対する苛立ちが募る。
「……おじい……ちゃん……」
「っ!……なんだ、寝言か」
ニーナちゃんがガストさんのことを呟いた。俺はゆっくりとニーナちゃに手を伸ばして、頭を撫でる。なんかこうすると落ち着くな。
「……絶対に強くなる」
俺はそう呟く。
「ええ、頑張りましょうね。トキヤ様」
「そうだな……え?チワ!」
なぜかチワが隣にいた。その驚きで声が大きくなってしまった。
「しーっ!」
「……悪い」
チワはニーナちゃんを見て、注意を俺にした。はぁ、チワに注意されてしまった。
「いえいえ〜、あ、別に褒めてくれても構いませんよ?……褒めてくれても構いませんよ?」
チワはこちらのベッドに座り、褒めてオーラを醸し出す。
「よしよし、偉い偉い」
俺はその行動につい、頭を撫でて褒めた。
「えへへ〜」
チワは褒められて嬉しそうだ。
「で、だ。なんで起きてるの?」
俺がチワが起きている理由を問い詰める。
「……トキヤ様、なんだか元気がなかったじゃ無いですか。つい、気になってしまって……みんなが寝ている間に聞こうと思っていたんです」
「……気づいていたのか。……そうだな。……ニーナちゃんの、カンラン村の人たちが、目の前で、な。その光景が頭から離れないんだよ。でも……前に人殺しをしたけど、それよりはましなんだよ。……俺は怖いんだ。人が死ぬ場面で、何も感じなくなることが」
おれは下を向き、そうチワに言う。
「……私にはトキヤ様のその気持ちは分かりません。私は人が死ぬ場面を見たのは、カンラン村の時の盾の男の人だけです。私の村、ルコラ村では両親が死ぬところも見ていませんので。ですが……絶対にさせませんよ」
「させない?何を?」
「トキヤ様が人が死ぬ所を見ても、何も感じなくなることです。絶対にさせません。私が、いえ、私たちが。ルナさんが、ハズクさんが、ニーナさんが。トキヤ様がどんな風になっても、私はトキヤ様の物ですので、一生ついて行く自信はあります。ですが、させませんよ、絶対に。だから……信じていてくださいね」
チワはこちらの目をまっすぐ見て、少しだけ微笑みそう言った。
「……そう、か。ありがとうなチワ。……ていうか、早く寝ないと明日起きられなくなるな」
連れて行ってもらう立場で遅れるとか最悪だからな。
「そうですね。お休みなさいトキヤ様」
「ああ、チワもな……お休み」
こうしておれは眠りについた。
***
ここはギルドの最上階、ギルドマスター室だ。そこには黒髪、褐色で長身の男と、金髪の女がいる。
「そうか。出会ったか」
男の方がそう言った。
「はいボス。実験は成功です。そのついでなんですが、多くが手に入りました。あの男が焼いてしまいましたが、影響はありません。それよりもこれで実験回数に大きく貢献するでしょう」
金髪の女がそう返した。機械みたいな棒読みだ。だか、それ以上に透き通るような綺麗な声だ。
「そうか。ところで、ちゃんとあの男は生きているようだな。絶対に殺すなよ。……それにしても、前に出した命令が実行されずに済んで良かった。まさか、実験が成功していて、さらにハイドを倒した男だったとは。実力があるから一通り調べたが、何も出てこなかったことと、受付の……名前は忘れたあのビッチから聞いて、まさかとは思ったが……。ここまで来たのか。……あと少しだ。あと少し、あと少しで……」
「ええそうですねボス。頑張りましょう。配下の者にも、いつも以上に伝えます」
***
窓から目に光が差し込む。朝だ。俺はベッドから降りる。横にはまだ眠っているニーナちゃんがいる。少し寝相が悪くて、よだれが口から出ていて、そこが実に子供らしさを出している。
それを昨日帰って来た時に汚れたハンカチを洗い、綺麗にしたハンカチで拭いてあげる。あとでまた洗えばいいしな。ついでにチワとハズクの方も見ておく。2人は寝相が良いな。
ハズクは態度と見た目通り、よだれは出ていない。ただ、夜は自分の羽毛と毛布で暑かったのか、毛布はチワの方に寄せられている。チワは暑くないんだな。
そして、服が胸の下あたりまでめくれ上がっていたので、一瞬目を背け、顔を赤くしたが、風邪を引かせてはいけないと思い、あくまで場所を確認しながら、服を戻す。
次に顔を洗い、歯を磨く。その後はご飯だ。4人分をさっと作る。出来上がったところでちょうど、チワが起きた。
「あ、おふぁようごじゃいましゅ、トキヤ様……ふぁあ〜」
チワは滑舌が起きたばかりであまり良くない。あくびをしていることからも、昨日はあの後、あまり眠れなかったか、睡眠が浅かったのだろう。
「おはようチワ。他の2人も起こしてきてくれ。後、着替えて飯にするぞ。俺も一緒に食べたら、ちょっとしたら出るから、留守番はよろしくな」
「はいトキヤ様」
滑舌が戻った。意識が覚醒してきたのだろう。
「ご主人様、おはようございます」
「トキヤお兄ちゃん、おはよー」
ハズクとニーナちゃんは着替えて出てきた。少し遅れてだか、チワも出てきた。ついでに顔も洗い、歯も磨いてある。
「うん、おはよう2人とも。ご飯にするから座って……って、チワとニーナちゃんはちょっと待って。ハズクは先行っておいて。2人とも、ちゃんと寝癖直さないと。せっかく可愛いんだから」
「そ、そんなトキヤ様、か、可愛いだなんて」
「トキヤお兄ちゃん、髪綺麗な方が好き〜?」
チワは頬を赤く染めて、それを両手で覆いながら、首を横に振っている。ニーナちゃんは俺に質問をしてくる。
「おう、髪は綺麗な方が見る方も気持ちがいいからな。ちょっとそこに座って待っておいてくれ。チワもだぞ」
俺はハズクが座る席とは違うベットの側面の床を指した。2人は大人しく座る。俺はヘアブラシを出す。
「あの、ご主人様?ハズクは無いのですか?」
ハズクが自分だけされないことに疑問を抱く。
「?ハズクは元から寝癖も無い、綺麗な髪じゃ無いか?俺がやる必要も無いし」
俺がそう返すと、ハズクはガーンと、効果音が聞こえてきそうな顔をする。
「そ、そうですねご主人様。……綺麗……」
(……明日からボサボサにしてから起きた方がいいのかしら?)
最後の発言はトキヤの耳には届かなかった。そして、ハズクが心の中で考えた事も、トキヤには当然わかるはずもなかった。
「トキヤお兄ちゃ〜ん、これ気持ちいい〜」
「そうか?そりゃあ良かった」
ニーナちゃんはショートヘアーだからすぐに終わった。逆にチワはロングだから時間がかかるな。
「トキヤ様、これすごく気持ちいいですね」
「いつもやってんのに急にどうした?ニーナちゃんと同じこと言ってるし」
「いいじゃありませんか。それにいつものありがとうございます」
チワはお礼を言ってきた。
「別に、それにチワが自分で出来るなら、俺はもう必要ないし」
「で、出来ませんよ!一生できるわけないです!」
チワは急にすごい剣幕で自分の髪を一生梳けない宣言をした。
「いや、もう14なら俺が居なくても、自分で出来るようにならないと」
俺がそう返す。すると
「トキヤ様と離れるなんてあり得ません!一生ついて行きます!」
先ほどよりもすごい剣幕でそう言い返された。
「いや、今日から既に1日は会えないからな?」
そう返すと、チワは黙ってしまった。
「悪い悪い。俺がチワと離れるなんてあり得ないから心配すんな。今回が特別なだけだ」
「っ!はいっ!」
チワの髪を梳るのが終わり、3人とも席に座る。俺は用意したご飯をテーブルに運び、それが終わると座る。
「「「「いただきます」」」」
そして食事を食べる。
「チワ、ハズク。俺はニーナちゃんと出てくるから、またお留守番なんだ。その間にだけど、ハズクはギルドに行って、冒険者登録と、パーティ登録をしておいてくれ。ギルドはいつでも空いているから、夜にでも行ってな。チワも一緒について行ってくれ」
「分かりました、トキヤ様(ご主人様)」
そしてご飯を食べ終わり、旅の準備をする。準備といっても、替えの服や下着……ニーナちゃんのは壊れたガストさんの家から数点、あとお金を少し拝借していた。このお金は全てニーナちゃんに使う目的だから、許してほしい。
あとは、剣、盾、軽装の防具類、ポーション。少しの食材や調味料。寝袋2つだ。食材は基本的に現地調達が出来るから、少なめに。
昼が待ち合わせだったので、少し宿で待ち、時間が来たので、部屋の入り口に向かう。
「それじゃあ行ってくる。ニーナちゃん、ほら」
「ハズクお姉ちゃん、チワお姉ちゃん、行ってくるね〜。ルナお姉ちゃんにもバイバイって言っておいてね〜」
ニーナちゃんはそう、チワにお願いをしていた。ニーナちゃんはみんなに名前とお姉ちゃんをつけて呼んでいる。
「はい。わかりましたよニーナさん。任せてくださいね。それじゃあトキヤ様、ニーナさん、行ってらっしゃいませ」
「ご主人様、絶対に戻ってきてくださいね?ハズクはずっと待っていますので」
「ハズクよ。そんな大げさな……そうでもないな。必ず生きて帰ってくるから心配するなよ」
俺はそう言って、ハズクの頭を撫でる。そう言えば、ハズクはなかなか身長が高いので、撫でる機会があまりないな。
「ん?急に頭を突き出してどうしたチワ?」
なぜかチワが顔を下に向けて、頭をこちらに突き出している。
「えっと、トキヤ様。わ、私もその、頭を、ですね。えっと、その……ひゃっ!と、トキヤ様……」
俺はチワの頭も撫でる。お姉ちゃんと呼んでくれたニーナちゃんの前で、自分から言いだすのが恥ずかしかったのだろうと思ったからだ。
「それじゃあ、行ってくる」
こうして、俺とニーナちゃんは待ち合わせの門の前に向かった。
面白かったら誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




