ニーナちゃんの今後
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「まずですが……俺はあるクエストの関係でカンラン村に泊まっていました。それは夜に、俺も寝ている時間でした。いきなり、泊まっていた家が壊れたのです。俺はその時の音で起きました。そしてすぐ横に……5メートル以上は確実にあるだろう巨体の白い体毛の虎が居たんです。俺は恐怖で動くことができなかったのですが……何故か、俺だけは喰い殺さずに……舐められたんです。そして、村人は全員俺の目の前で殺されました。死体は動物たちに荒らされないように、俺なりですが供養しました。俺が連れて来た女の子はニーナ・ベルンって名前で、カンラン村の村長の孫で、村唯一の生き残りです。それでいち早くこの事を伝えるために来ました。以上で俺の話は終わりです」
「ふむ……つまり白殺虎を殺せって事だな?」
「そんなことよりももっと重要な事をこの方は仰っていたでしょう!いい加減、脳筋は治してください隊長!」
「……」
隊長は腕っ節が強いバカ、副隊長はお目付役みたいな感じだな。
「あの、すいません。名前をまだ言っていませんでしたね。俺はトキヤって言います。お2人は?」
「あっ、失礼しました。私はこのバロン王国魔法騎士団の第二部隊副隊長のヘプト・ミスチールと言います。そしてこちらが隊長の『ガルーダ・バラガンだ』……です」
副団長のヘプトさんの話している途中で隊長のガルーダさんが名前だけをしゃべった。魔法騎士団ってことは団員全員が魔法を使えるという事か?
「あっ、『何故魔法騎士団がこんな門番みたいなことをしているんだ?』って顔をしていますね?」
ヘプトさんは俺の思ったこととは違う、勘違いを始めた。指摘しようとしたが、先に話を続けられたためやめた。
「最近は獣魔皇の白殺虎の出現で、高ランク冒険者が普段よりも多く来ると予想されるために、いつも配置されている衛兵団では無く、私たち魔法騎士団が配置されているのです」
なるほど。衛兵団と魔法騎士団、2つの組織があるのか。力関係は魔法騎士団>衛兵団ということになるかな?
「それでトキヤさん、あなたはさっきの話の中で非常に気になることを言いました。確か『喰い殺されずに舐められた』と。それは……そのままの意味ですか?」
ヘプトさんが俺に聞いてくる。そして目の威圧がすごい。本人は無意識だと思うが。
「はい……理由は俺自身もよくわからないのですが……何故か目の前にいた俺の頬を……舐められたんです。その後は逃げる村人全員を喰い殺したんです。
そして、どこかへと走り去りました」
「ふむ……トキヤさんが他の村人と何か違う点は分かりますか?いえ、この国の人間と何か違う点はありますか?」
ヘプトさんが尋ねてくる。少なくともカンラン村の人々、チワの村の亜人たちが襲われたことから、俺との違いを探しているのだろう。俺の髪の色は黒。この辺りでは珍しいと知っている。そのため、国ごとの違いによるものかもと、考えているのかも知れない。
だが、国の違いではないと俺は思う。恐らくは俺が違う世界の……異世界人というのが理由なのだろう。それしか俺と他の人々の違いは分からない。
「恐らく無いですね。あくまで自分自身としてはですが」
「……そうですか。ご協力感謝します。一応今住んでいる場所を教えてくれませんか?今後の有益な情報となりうる可能性がありますので」
「構いません。場所はーー」
「分かりました。それでは」
「あっ、待ってください。ニーナちゃんはどうなるんですか?」
「……引き取り手がいないなら、普通は孤児院行きですね。誰かが引き取るなら別ですが……引取先のあてはありますか?」
ヘプトさんが俺に聞いてくる。
「えっと……恐らく居ないので孤児い『何言ってんだ?お前が引き取るんじゃ無いのか?』……え?」
「『え?』じゃ無いだろう?お前が引き取るんじゃ無いのか?」
そう言ってきたのは先ほどから黙って聞いていたガルーダさんだ。
「えっと、それは……」
「隊長、無理を言わないでください。この人は先ほど拝見したギルドカードのランクを見させていただきましたが、Eランクと新人ですよ。そんな人が幼い子供を育てるのがどれだけ大変か分からないのですか?……はぁ、隊長は分からなそうですね」
「うむ」
ヘプトさんの言い分も酷いが、ガルーダさんも自覚あるんだ。……無自覚よりは断然マシか?
「……引き取ります」
「え?」
ヘプトさんはさっきの意見の真逆を俺が言ったことで、変な顔になって、声を出している。逆にガルーダさんはまるで、『当然だ』みたいな顔で頷いている。
「引き取ります。俺が」
大事なことなのでもう一度言う。
「あの、大丈夫なんですか?」
「はい、なんとかします。それに……ガストさん、ニーナちゃんのお爺さんに言われたんです。『ニーナちゃんのことを頼みます』って。だから……俺が引き取ります。……もし、孤児院行きの方が良いって言われたら、諦めますけど……」
「そ、そうですか。それで決定ですね。この後はカンラン村に数名の騎士を向かわせるつもりですが、どうなさいます?」
「……ニーナちゃんを連れて行きます。一刻も早くこちらに報告するために、ニーナちゃんが気絶している時に村を出たので、村の跡をニーナちゃんは見ていません。見せるべきだと俺は考えます。ですので……わがままなのは十分承知で言いますが、俺とニーナちゃんを、その騎士さんと一緒に連れて行ってくださいませんか?」
「構わん」
「隊長!」
「構わんと言っている。俺が許可する」
「あ、ありがとうございます」
俺はガルーダさんの決断力の早さに驚きつつも、お礼を言った。……俺も初めはこの世界の大人なんて信用しないと心に決めたはずだったけど……やっぱり人は信用するのが一番だな。
「それでは明日の昼ごろ出発し、明後日の昼ごろに着く予定ですので、今日は一旦お帰りになって下さい。
明日は昼前には来てくださるようお願いします」
「分かりました。本当にありがとうございます」
俺はそう言って頭を下げる。
「気にしないで下さい。市民を敵から守るだけが、魔法騎士団の役割ではありません。私たちが守りたいのは、この国の人々の笑顔ですので。それでは」
そう言って、ヘプトさんとガルーダさんはどこかへ行ってしまった。俺も部屋を出て、ニーナちゃんを預けた所へ行く。
「あっ、トキヤお兄ちゃん!」
ニーナちゃんは俺を見つけると、こちらに走って来て、そのまま腰に飛びついてきた。
(何故こんなに懐いているんだ?昼間は『トキヤお兄ちゃんなんて大っ嫌い!』って言っていたのに)
「ニーナちゃん、君はこれからどうしたい?」
「……?」
俺の問いかけにニーナちゃんは首をかしげる。意味がわかっていないのかもしれない。
「えっと……ね。君はこの後、2つの行き先があるんだ。1つ目は孤児院行き。そして2つ目が、俺と来るかだ。……ニーナちゃんはどっちが良い?1つ目と2つ目」
「……孤児院ってな〜に?」
「孤児院って言うのは……親が居ない子供達がたくさんいる所だよ」
ニーナちゃんに面と向かって、親が居ない発言は言いたくなかったので、少し詰まった。ちなみに孤児院の子供の割合は半分がクエストで帰らぬ人となった冒険者の子供。もう半分が魔物などに村が襲われた際の、親だけが殺されて、生き残った子供達だ。
「じゃあトキヤお兄ちゃんと一緒にいる〜」
「え?ニーナちゃん、本当に良いの?」
「トキヤお兄ちゃんが良いの〜」
ニッコリと笑い、こちらを目線の位置の違いで自然な形で上目遣いで見て、ニーナちゃんはそう言った。
(やばい、めちゃくちゃ嬉しい。そしてもう一度言おう、何故こんなに懐かれているんだ?)
「そっか、じゃあ……俺のパーティメンバーとかも紹介しないといけないな」
「パーティメンバーって冒険者?」
「そうだよ」
「やったー!」
この喜びようは……冒険者になりたいって言っていたしな。
「それじゃあ行くぞ」
「うん!」
こうして俺たちは宿に戻るために、ここを後にする。。……帰ったら、チワとハズクに『また女の子が増えてる』なんて言われるな。
……ルナと会う時間が無いな。会ったら『やっぱり私の言った通りじゃない!トキヤの嘘つきー!』なんて言ってきそうで怖いが。
「トキヤお兄ちゃんどうしたの?お顔が真っ青だよ?」
「……なんでもないよ」
俺はそう言ってニーナちゃんの頭を撫でる。
「ん、そう……なら、良かった」
こうして俺たちは宿に帰った。部屋をもうワンサイズ広くしようと考えたが、ニーナちゃん1人だけなら、今の部屋で十分だろうと考えて、部屋は変えていない。そして借りている部屋の扉を開けて、俺とニーナちゃんは部屋に入った。
面白かったら誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




