クエストクリア、帰還、そして……。
骨すら残らず燃え尽き、草原が黒く焼けた元々盾男がいた場所を眺めて俺たちはしばらく絶句していた。
あとで奪って売るなり使うなりと考えていた魔道具や投げナイフなども全てだ。
「ち、チワ……?」
俺が立ち直りチワに声をかける。
「「なっ!なん……ですか?トキヤ様」
声が震えている。無理もない。
どんな奴だろうと、人が死ぬのを平気で見ていられるやつなんて壊れているやつだけだ。
「今の何かわかるか?」
「分かり……ません」
チワも分からないらしい。考えられるのは……口封じ……が妥当だな。
喋ってはいけないことを喋ろうとするとあんなことになるのだろうか?
……だが盾男は喋った。だとすればこのことを知らされていなかったことになる。
こいつは先生、試験と言っていたことから見て組織の末端だったのだろう。
先ほどみたいにいつでも切り捨てられる……。
……男たちの死体は村の連中に任せよう。
魔物化した猪や、普通の猪の素材をとる。牙や毛皮だ。そして、帰る前に手を合わせて祈った。
チワも真似をしていた。この世界でもあるのだろうか?
***
村に着いた。チワは入り口で待ってもらっている。
村の入り口ではヤンが見張っていたので話しかけ村長さんのところに連れて言ってもらった。
村長は七十を超えた辺りの髭を生やしたお爺さんだった。昔はモテたらしい。
「ーーと言うわけです」
俺は大量発生の元凶だと思われる魔物化した猪に着いて話した。
「……やはりそうですか。可能性は高かったのですが払えるお金を節約するためEランクに貼られるようにしましたが……すいませんでした」
頭を下げられたが同然だ。本来ならD上位、C下位のクエスト内容だ。
それを確認できないからと言ってEランクにしていたんだ。
もしかしたら新米の冒険者が命を落としてもおかしくなかったのだから(ギルドはクエストを貼ることで収入を得ている。依頼ランクが高くなるほどかかるお金も同然高くなる)。
そして男たちが亡くなったこと、3人の死体は草原に、残りの2人は森の中に、残り1人(盾男)の行方はわからないと伝えた。
盾男が猪を魔物化を人為的に起こされたことは、話していない。
こう言うのは機密情報みたいな扱いを受けそうだからだ。
村長さんはとても悲しそうな顔をしながらも『ありがとう』と言ってくれた。
その後は報酬だ。銀貨20枚。今の俺たちにとっては大金だ。
村からの帰りに村長の孫をぜひ嫁にも勧められた。名前をニーナ・ベルンと言うらしい。
将来有望だと言われ、村の男たちも亡くなったからだろう。
俺は断ろうにもそう言うのは初めてだったのであたふたしていると、チワが走ってきて『ダメです!トキヤ様は私のものです!』と、言ってきた。
その後、よくよく聞くと、まだ8歳らしい。
村長さんも7年後のことを言っていたことだそうだ。すると、チワは顔を真っ赤にして後ろに隠れた。
勘違いが恥ずかしかったのだろう。
村長は亜人に驚いたが俺の奴隷だと説明すると納得するようなしないような微妙な顔をされた。
そしてチワに『チワ間違えてるぞ。チワが俺のものなんだ』と言っておいた。
そしたら先ほど以上に顔を真っ赤にしていたが、間違いを指摘されたのか恥ずかしかったのだろう。
次からは気をつけよう。村長さんはため息をついていた。なんでだろう?
ちなみに村長の名前はガスト・ベルンだ。
その後、バロン王国に帰るためハクちゃんに乗ろうとして、汚れていることに気がついたため、村の井戸水で血や汗を流し、服を着替えた。
もちろんチワとはバラバラにだ。チワの髪をとかして、改めてハクちゃんに乗り俺たちは村を出た。
また、夜に野宿をして朝にバロン王国に帰ってきたのだった。
***
あたりが完全に暗くなり人通りが最も少ないと言われている夜中の午前2時、外には人っ子一人もいない。
ここは、とあるギルドの最上階にあるギルドマスター室だ。
電気は点いていない。そしてそこには2人の人影が見える。
「ハイドが死にました」
それは透き通るような女性の声だ。見た目は金髪の長身の女性だ。
「何?……暴走したのか?」
こちらは若い男の声だ。見た目は黒髮、褐色のこちらも長身の男性だ。
「いえ、魔物化には成功しましたがギルドの冒険者にやられたそうです」
ただし、棒読みみたいな事務的、機械的な声だ。
「クエストランクはEになっているはずでは?……偶然ランクの高いパーティとでも遭遇したのか?」
「いえ、その冒険者はそれが初クエストだそうです」
「……その冒険者は何処かの名家出身なのか?」
「いえ」
「ふむ……証拠隠滅は済んでいるな?」
「はい」
「なら良い。その者の場所を突き止め始末させよ。そうだな……No.8に依頼しよう。魔法を使う相手を経験させる。いい機会だ」
「はい」
そう言った後に女の人影が消える。
「そうかハイドが……あいつはビビリな所以外は素質があったんだが……ま、いっか」
***
ここはバロン王国の王都の裏路地の一角だ。何かの鳥の抜けた羽が落ちている。
そこに赤い髪に赤い服を着た16歳ぐらいの少女がいる。彼女がNo.8だ。
そして、赤いのは髪質や服の素材ではなく、纏った血によるものだ。
そして周りには誰もいない、いや、正確には生きている人は誰も……だが。
「……決行日は……明日ですか。早いですね。……了解しました」
新たな恐怖がトキヤたちを襲うことになるがトキヤ達がそれを知るのはまだ先だ。
次回は本編ではなく、幕章を挟みますのでご注意ください。ちなみにハイドとは盾男の偽名です。
本名は考えるのがめんどくさいのと、どうせ出てこないだろうと思うためです。




