光の屈折
「解けた……解けたぜ!盾男!」
本当に解けているかはわからない。だが盾男を驚かせるぐらいの効果はあるだろう。
「何!」
俺の背後から盾男の驚いた声が聞こえる。気づかれるとは思っていなかったのだろう。
「まず、お前の魔法属性……水属性だろ」
正面に靄が現れそこから盾男が現れる。
「……どうしてわかったんです〜?今まで見破られたことなど一度もないんですけど〜?」
口調が戻っている。
ていうか、この世界で化学とか発達してるわけないし、なぜ火が燃えるのかとか原理もわかっていないだろう。
まあ、俺もどうやって魔法が発動しているのかもわかんないからお互い様か。
「良いぜ。まず、水属性だと思ったのはお前の火傷後。火に強いのも、傷を治すのも魔法で一番適性が高いのは水属性。火傷後がお前の魔法を目覚めさせるきっかけとなったと思ったわけよ(自分が魔法を発動していてよかった。じゃなきゃ思いつかなかったかも)。
まあ、半分ぐらいはそうあってほしいって思っていたけど。否定しないってことはあってるってことで良いよな」
盾男を見ながら続ける。
「次にどうやって姿を消しているか、だが、これも俺じゃなきゃわかんないだろうさ。お前は魔法を使って水蒸気で周りの光を屈折させ、俺たちから見えないようにした」
さらに続ける。
「でもそれだけじゃ草を踏む音も聞こえないのはなぜか。おそらく正解は……その首飾りだろ。おそらくそれには隠密効果アップの効果が付いている。マジックアイテムってやつだな。攻撃するタイミングに間があったのは俺たちの背後に動いていたから。いくらその首飾りでも走ったりしたらバレるから……だろ」
どうだ。正直ここまで語っておいて外れて居たらクッソ恥ずかしい。
……全て当たっているのか盾男は何も言わない。
よかった。本当に良かった。
「……正解だよ。よくわかったねー。普通は水で見えなくするなんて思いつかないよねー。でも君のその頭もすごいけど、僕にこの方法を教えてくれた先生の方がもっとすごいけどねー」
「先生?」
先生?こいつの?まさか人為的に魔物化できるやつが他にもいるのか?
……もしやこの近くにも。そう思い辺りを見渡す。
「あっ、先生は今近くには居ないよー。これは試験なんだからねー。……あっ!やべっ、これって話してもよかったっけ」
試験?……それより倒すべきはこいつ1人と。
「さて。このトリックが見破られた以上お前の勝ちは薄くなってるがどうする。まあ逃げられたら、また人が死ぬしそれは無理だろうけど。それに……お前がやった行動がチワを傷つけた。生かすわけないだろ」
ドスをきかせた声で俺がそう言う。あまり出したことのない声だ。
「「ヒッ!」」
盾男とチワが驚き声を漏らした。……いやチワも驚くの⁉︎
確かにチワには絶対に出さない声なんだが……。
「……カラクリが解けてもお前に僕は倒せないんじゃないかなー?」
そう言い靄が発生し、また消える。
「チワ!奴は俺たちから見えていないだけだ。現れる瞬間には魔法を解くために一瞬だが靄が現れる。そこが狙い目だ」
「はいトキヤ様」
おそらく奴は俺たちの集中力が切れるのを待つはず。
チワと背中合わせになり、周りを警戒する。
人間の視野は約200度。
こう考えると広いと思うが色彩が両目で確認できるのはそのうち精々70度だけだ。
チワも人型だがモデルは肉食動物のためそれと同じか以下だろう。
やつがそれを理解しているかは知らないが、もし俺が盾男の立場で狙うなら俺の左右どちらかだ。
靄は一瞬だが人全体を現わすためでかい。
チワが動いた。おそらく靄が現れたのだろう。
読みは外したがそんなことは気にせず俺も振り向く。
キィン!
心臓に刺さるはずだった投げナイフをチワが弾いたのだ。
「チッ!」舌打ちの音が聞こえる。
追撃をするチワ。だがチワの短剣の射程範囲内に入る前に消えた。
チワの短剣は空を切る。どこにいるかもわからない敵には深追いはせず、戻ってくる。
「そうだチワ!お前の『超嗅覚』でわからないのか?」
いいアイデアだと自分でも思った。
「すいません。血の匂いと、他の人との匂いの判別、盾男の匂いが分からないため無理です」早々に希望は潰えた。今は奴がすぐ近くに現れてやられるケースがないってことだな。投げナイフで遠くからの攻撃しかしないことから奴は傷を負うのが怖い臆病者だろう。
……てかなんで盾男は消えたまま攻撃しないんだ?
投げナイフごと投げれば急に投げナイフが飛んで来るんだ。
おそらくチワでも防げないだろう。それをしないと言うことは……。
……多分あいつは攻撃しながら、魔法を使えないんじゃないだろうか?
魔法に使うのに意識を取られるのかとか分からないがなにかしら制限があると見れる。
そこが勝つための鬼門だ。どうする……一体どうすれば……。




