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劣等剣士の物語(仮)  作者: 清乃 誠
第一巻 四話 失ったもの、残されたもの
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31ページ

 夕刻頃、部屋に帰ってきたグラーマンから知らされた作戦内容は二つの大隊を動かす大規模なものだった。


王国騎士団の大隊は百二十人で編成されている。今回は二つの大隊との事なので総勢二百四十人もの騎士が動く事になるのだ。


 一つ目の大隊は地上班。王族地区での内通者の捕縛とギルド街の巡回を行う。二つ目の大隊は地下班。地下水路に侵入して犯罪集団を捕らえる任務を担当する。


無数にある小さな穴を利用して地下水路から逃げた敵がいた場合は地上班が捕らえる事になるだろう。決して逃がさない為に地上班は必要だ。


地下班は当然であるがノワール・デスペラードとの戦闘を想定しなければならない。最悪の場合は容赦なく殲滅せんめつする。その為、騎士の中でも精鋭を集めたそうだ。


 ギルド街には地下水路の出口が七つのある。その為、地下班に選ばれた百二十人を七つに分けた。その分けられた隊が同時に地下水路に奇襲をかけるのだ。


地下班の隊の一つはイレーナが率いる事になった。フェイトはその隊と行動を共にする。フェイト達が侵入する地下水路の出口は、最初にフェイトが見つけた川沿いの場所。発見した拠点に近く、一番危険なところだ。


「以上が作戦内容だ。意見はあるか?」


 作戦内容を一通り説明したグラーマンがフェイトに尋ねる。


「いえ、ありません」


「わかった。作戦開始は明朝みょうちょう一番、日が昇る前に決行する。お前はそれまでの間に開始地点に向かうように」


 犯罪集団が寝静まっているタイミングで奇襲するようだ。酒でも飲んで酔っ払い、寝ているところに騎士団が奇襲すればひとたまりもないだろう。


「了解しました」


「以上だ。ゆっくり休め」


「失礼します」


 フェイトは返事をして部屋を出る。そして衛兵の案内に従って城を出た。明日は起きる時間が早い。作戦に支障が無いように休まなければ。フェイトはそう考えて真っ直ぐクロッカス亭に帰る。そして早めに食事を済ませて寝ることにした。


 翌日は日が昇る前に起きたフェイト。窓の外は暗く、居住区の人々は寝静まっている。フェイトは自室で静かに準備をしていた。


腰にバスタードソードを吊るし、背中に二本の短剣を吊るし終わったフェイトは深呼吸をする。徐々に緊張していく精神を少しでもほぐしたいのだ。


「よし、行くか」


 そう呟いたフェイトは自室から出て一階に降りる。するとカウンターでオリバーが立っていた。


「お、行くんだな」


 オリバーは笑みを浮かべている。いつも通りの柔和な表情だ。その表情を見ていると自然と緊張が和らいだように感じた。


「行ってくるよ」


「怪我しない様に気をつけてな」


「ありがとう。それじゃ」


 オリバーとの会話を終わらせたフェイトはおもむろに歩き出す。これから始まるのは人間との殺し合い。魔物との戦いとはまた違う気持ちが必要だ。フェイトは決意したように目を見開くと、静かに扉を開けて外に出た。


 これから向かうのはギルド街にある地下水路の出口。その七つある内の一つだ。その出口は川沿いの壁にあり、フェイトが最初に拠点を見つけた時に通った場所。


しかし、直接その前でイレーナの率いる騎士団と合流する訳ではない。その地下水路の出口が良く見える川の反対側の広場だ。フェイトはそこでイレーナと合流した。


「遅かったかな?」


 フェイトが到着した時には、すでに多くの騎士が揃っていた。みな一様に青い騎士装束を着ていて、腰に剣を吊るしている。


「大丈夫よ」


 イレーナは前髪をクルクルといじりながら答える。彼女の前髪をいじる癖は昔からだ。エミリアからはよく、髪に変な癖がつくからやめなさいと怒られていたのだが、結局その癖が直る事はなかった。


「ただ……」


 イレーナは表情を曇らせて何か言いたげだ。フェイトはそんなイレーナが気になって問う事にした。


「どうした?」


「報告を受けて意識してたんだけど、オーガスタが宿舎に帰ってきてないのよ」


「________!」


 オーガスタが帰っていないのはまずいかもしれない。情報が漏れていたのかと考える。しかし、その可能性はないはずだ。オーガスタを最後に見たのは地下水路で、作戦の話が出来出したのはグラーマンに報告をした後だ。


「気になるな……」


 色々と考えているフェイトが無意識に呟く。


「出口の様子は?」


 数名の騎士が壁の隅で監視していたので、イレーナに訊いてみる。出口付近に動きがあったかもしれない。


「ビンゴよ。暗視魔法で監視していたら数名の黒コートを発見したわ。外でトイレして中に入っていった」


 暗視魔法とは暗闇でも視界が保たれる魔法で、ダークビジョンという魔法だ。支援魔法に分類される。地下水路に犯罪集団がまだ居る事が確認できたという事は、情報が漏れて逃げられた可能性は無いだろう。


「わかった」


「今のうちにフェイトにも暗視魔法をかけるわね」


「すまない」


「謝らないでよ。ダークビジョン……」


 イレーナは少しむくれた表情をして暗視魔法を行使した。フェイトの視界がだんだんと良くなっていく。先程までは見えなかった川の反対側の建物までもがはっきりと見え出した。


「久しぶりに受けたけど、やっぱ便利だな」


「そうね。作戦が始まったら浮遊魔法で一気に川の反対側まで飛ぶから、その時はまた私の側に来てね」


「わかった」


 フェイトが支援魔法を受けるのは騎士団にいた時以来だった。久しぶりに受けた支援魔法と、周りに騎士達が集まっている所為せいなのか、エミリア小隊に居た時の事を少しだけ思い出すフェイト。


「小隊長。別働隊からの連絡で、そろそろ作戦を決行するとの事です」


 一人の女の騎士が自身の耳につけたボイストレーターに手を当てながら、イレーナに歩み寄って報告をした。


「わかった。各自エアを行使、開始に備えなさい」


「了解しました」


 女の騎士は返事をして離れる。騎士達は各々に浮遊魔法であるエアを行使して浮かびだした。


「フェイト、魔法かけるわよ」


「ありがとう」


「エア」


 イレーナの浮遊魔法のおかげで、フェイトの身体が浮かびだす。イレーナも自分の身体に浮遊魔法をかけた。


「小隊長!」


 先程の女の騎士が声を上げる。それを皮切りに騎士団の面々は一斉に川の反対側に視線を向けた。全員が静かに黙り込み、広場が静寂と化す。


「作戦開始!」


 イレーナから放たれる号令。騎士達が抜刀して一斉に空に飛び上がった。フェイトもバスタードソードを鞘から引き抜いて飛び上がる。


 あっという間に川の反対側に辿たどり着いたフェイト達は地面に着地する。そして一斉に地下水路に突入した。


「二班はここで右に、三班は左よ!」


 イレーナの指示に従って騎士達が分散していく。フェイトはイレーナと一緒に複数の騎士達を引き連れて拠点を目指した。

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