最終話 屋敷で暮らそう
シェルが旅を始めてから、もう二十年が経っていた。
クゥが亡くなって五年。
仲間たちは皆、年齢とともに体が疲れやすくなってきたこともあり、
ついに大きな屋敷を買って、一緒に暮らすことを決めた。
♦︎フローナの書斎
フローナは窓際の椅子に座り、ペンを走らせていた。
そこへシェルが顔を覗かせる。
シェル「また小説書いてるのか?」
フローナ「うん」
シェル「今度はどんな話なんだ?」
フローナ「旅をする話だよ」
シェル「いいな」
シェルが笑うと、フローナも照れたように小さく笑った。
シェル「何てタイトル?」
フローナは窓の外を見つめ、静かに答えた。
フローナ「僕らの物語」
ちょうどその時、チャイムが鳴った。
シェル「来たな」
フローナ「みたいね」
二人は玄関へ向かった。
♦︎再会
扉を開けた瞬間、懐かしい顔が満面の笑みを向けてきた。
シェル「久しぶりだな、リト」
フローナ「久しぶりリト君!」
リト「シェルさん、フローナさん、また会えて嬉しいです!」
リトは会った途端、フローナの手をぎゅっと握る。
シェル「手握るの禁止って言ってるだろ!」
リト「べーだ!」
シェル「にゃろ・・・」
フローナ「まぁまぁ」
♦︎
そこへ水龍たちも到着する。
フローナ「水龍君!フーライさんとユーエンさんも!久しぶり!!」
水龍「やぁ、久しぶりフローナちゃん」
フーライ「お久しぶりです」
ユーエン「お久しぶりです」
水龍はフローナの手を握るリトを見て、にやりと笑った。
水龍「君も彼氏の前で堂々と浮気とは・・・なかなか罪深いねぇ」
フローナ「えぇ!?これは、違うよ!」
シェル「いつまで手繋いでんだ、離れろリト!」
リト「嫌ですー」
結局、シェルが力づくでリトを引き剥がすことになった。
♦︎屋敷の庭にて
メリサが木の上で眠ているキリュウとそのすぐ近くにある木の下で眠っているコキアを連れてくる。
メリサ「ほら、二人とも始まるよ、パーティー」
コキア「んー?」
コキアは目をコシコシ擦りながらメリサの方を向く。
キリュウ「ふあ・・・なんだもう朝か?」
キリュウは寝起きで険しい顔をしている。
メリサ「キリュウ君、今昼だよ」
キリュウ「そうか」
キリュウはぽや〜っとして完全に寝ぼけている。
♦︎
レンが外のテラス席に料理を運んでくると、皆が一斉に歓声を上げた。
水龍「レン君、豪華だなぁ!」
フーライ「一人で作ったのですか?」
レン「はい」
ユーエン「言って下されば早めに合流して手伝いましたのに」
レン「ありがとうございます。ですが、俺は料理が好きなので大丈夫ですよ。
それに皆さんを驚かせたかったんです。」
フーライとユーエンは感心しきりだった。
♦︎ローズの到着
外からプロペラ音が響く。
メリサ「あ、ローズも来たみたいだ!」
ローズがヘリから軽やかに降り立つ。
ローズ「皆さま、お久しぶりですわ」
メリサ「ローズ! 今日は全員集合だよ!」
ローズ「まぁ、嬉しいですわね」
ハリラ、ベルベル、ケフタの護衛三人衆も揃って挨拶を交わし、屋敷に入っていった。
♦︎乾杯
全員が席につき、シェルが立ち上がる。
シェル「よし!全員揃ったな。来てくれてありがとう!乾杯!!」
「「乾杯〜!!!」」
笑い声とグラスの音が混ざり合い、屋敷は一段と賑やかになる。
♦︎それぞれの会話
水龍「まさかシェル君が屋敷暮らしとはねぇ」
シェル「もう旅は充分したからな。皆んながいりゃそれでいい」
水龍「君も大人になったんだねぇ」
リトはフローナに興味津々だ。
リト「フローナさん、書き物してます?」
フローナ「え、なんで分かるの?」
リト「さっき手を握った時にペンだこがあったので」
フローナ「それで分かるなんてさすがリト君だね!」
リト「ありがとうございます、フローナさんは相変わらずお綺麗で」
フローナ「あはは、ありがとう」
シェルが後ろで「いちいち手を握るな!」と怒っている。
水龍「小説書いてるのかい?俺も読んでみたいな」
フローナ「全然上手くないから見せられるほどのものじゃないよ」
リト「そんなことありません。小説が書けるだなんて
素晴らしいですよフローナさん!」
フローナ「いや〜ただの老後の趣味だよ〜!」
リト「まだ37歳ですよ」
フローナ「と言っても平均寿命55歳だからなぁ・・・」
リト「それにしてもお美しい!」
周囲「(始まった・・・)」
♦︎
レンが横からスッとグラスを差し出す。
レン「どうぞ、フローナさん」
フローナ「え?あ、ありがとうございます」
レン「ふふ、乾杯」
彼の不意に向けられた不敵な笑みに、フローナは赤くなる。
シェル「おいレン、俺の前でナチュラルにアプローチすんな!」
レン「してませんよ」
水龍「レン君は策士だねぇ」
リト「レンさん、強敵・・・」
シェル「俺のことは無視かよリト」
フローナ「もう!みんなまとめてー!かんぱ〜い!」
こうして、五人は一緒に暮らしながら時々、皆を招いてパーティーを開く。
屋敷での穏やかで賑やかな生活はこれからも続いていく。




