小学校教師の観察記録
市立祢古小学校 3年2組担任 岡本由美子
2023年11月 学級日誌(個人用)
11月5日 図工の時間。 「好きな動物」を描かせた。 32人中28人が猫を描いた。 偶然にしては多すぎる。
11月12日 描かれた猫の絵が日に日に精密になっていく。 特に目。 人間のような表情を持つ猫。 子供の観察力に驚く。
11月19日 休み時間の「猫ごっこ」が流行。 ルール:
鬼が「名前」を呼ぶ
呼ばれた子は猫になる
猫は四つ足で追いかける
捕まったら新しい猫になる
普通の鬼ごっこと何が違う?
11月26日 保護者から問い合わせ。 「子供が夜中に四つん這いで歩き回る」 「『にゃあ』しか言わない時間がある」 「給食を手を使わずに食べようとする」
全部、違う家庭から。
12月4日 猫ごっこのルールが複雑化。 「本当の名前を知られたら永遠に猫」 「猫になったら人間の言葉を忘れる」 「全員が猫になったら新しい世界に行ける」
誰が教えた?
12月11日 今日、異変に気付いた。 クラスの子供たちの瞳孔が、 時々、縦長になる。 一瞬だけ。 見間違い?
12月13日 欠席者が増えている。 でも、保護者からの連絡がない。 家庭訪問すると「旅行に行った」と。 全員が同じ理由。 同じ場所へ?
12月15日 最後の授業。 教室に入ると、子供たちが輪になって座っていた。 中心に、猫の絵。 いや、これは...地図?
「先生も一緒に行こう」 「楽しいところだよ」 「名前なんていらない場所」
振り返ると、入口に猫。 本物の猫。 でも、制服を着ている。 うちのクラスの...誰?
もう、見分けがつかない。 子供と猫の境界が。
私も、わからなくなってきた。 自分が人間なのか。 それとも...
後日発見されたメモ
教室の黒板に残されていた文字:
「みんなでねこのくにへいきました おかあさんおとうさんもあとできます さようなら にんげんのせかい」




