第六章 三節 選定の剣②
今日は2話更新です。病院の待合でかきましたー
エクターは魔術師の声には驚かず、冷静に答える。
「マーリンよ、お主はアーサーを王にしたいのか?」
「エクター殿、無論そうだとも。やはり、貴殿は聡明だ。気付いていたんだね?」
「………………」
マーリンの問いにエクターは答えない。
エクター自身、アーサーの出自に興味はなかった。ただ、マーリンが拾ってきた子どもだ。訳アリに違いなかった。
最初は普通の子として育てていたが、次第にその振る舞いや面影に自身の主人が見え隠れしていることに気づいた。
王と誰かとの間の子だろう。エクターはそう判断し、最低限の礼儀や剣術は修得するように育てた。
アーサーはいい子だ。だが、王の素質があるかどうかは別の問題だ。剣がアーサーを選んだとして、果たして彼は王になることを望むか?
エクターは頭の中でいろいろ考え、黙り込む。そんな彼に構わず、マーリンは話しかけた。
「エクター殿、剣はアーサーを選び、アーサーはこのブリテンの王になる。これはもう決まっていることだ。貴殿にできることはアーサーが困った時に手を差し伸べるだけだ」
「アーサーは……アーサーはただの子だ。政治はおろか剣術も平凡だ。王に選ばれたとしても、中身が伴わなければそれはただの傀儡だ。傀儡になったとして、それは誰が操るのだ?」
「………剣を握れば、アーサーは今までとは違う人物になるだろう。剣は王に相応しいものを王になるように導くはずさ。貴殿の心配は不用だ」
マーリンは自身の髭に人差し指を絡ましながら話す。この会話にあまり興味のない態度だ。
「……アーサーが困ったら誰が助ける?」
「貴殿は優しい。さすがは親代わりといったところかな?」
「あぁ、お主が託してきてからアーサーはワシの子同然だ」
「アーサーが困ったら私が助けよう。あとはレオンダンス、ロット、モルガンもいる」
エクターはマーリンを信じていない。だから今あげた者たちが果たしてアーサーを助けるのに相応しいかわからない。ただ、一つ言えるのはモルガンは信用できる。これだけだ。
「アーサーに近々、城下にいくよう誘導して欲しい。貴殿は王の誕生を間近で見れるだろう」
そう言い残し、マーリンは煙のようにゆっくり消えていなくなった。
「アーサー……お主はいいのか?王になるが故に手に入れるものと失うものがある。それを判断できるのか……」
エクターは自身のもう一人の子の行く末に不安が募り、仕事が手につかなくなってしまったのだった。




