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地固まる

「公爵に聞くことではないが知っていたら教えて欲しい。

コレットの墓は何処にあるのだろうか?」

「あーっと、陛下に聞いてませんでしたか。

彼女は亡くなっていませんよ。私どもが保護しておりました。

学園に戻すわけにはいきませんので今は我が派閥の貴族家に置いて家庭教師を付けて学ばせております。

本人の希望は文官とのことなので数年後には王宮で行き合うこともあるかもしれませんな。」

「そうだったのか。よかった。本当によかった…」


ユリシーズは人目も憚らず号泣してしまった。


(陛下も酷なことをなさる)


公爵はユリシーズ王太子を見直した。

有能ではあったが素直すぎて危なっかしかった。

薄っぺらな正義感で娘を傷つけたが深く反省して謝罪と気遣いを見せて心を射止めた。

何事もなく政略で結婚するよりも相思相愛で熱烈な恋愛結婚の方が幸せになれるだろう。

また社交でも強力な武器になる。

権力者に心から愛されることは女の勲章である。

一時の醜聞など何ほどのこともない。


レーナに無礼を働いたマクミラン伯爵は派閥の全勢力を挙げて追い込んだので羽振りのよかった家業が立ち行かなくなり家人が幽閉して急遽弟に継がせた上で正式に謝罪してきた。

公爵が婚約破棄事件に本気で腹を立ててユリシーズの処分を求めていたら叶っていただろう。

他に安定して王位を継げる人材がいなかったから生かされていたのだ。

他にレーナと婚姻出来る男がいなかったから生かされていたのだ。

今のユリシーズにはそれが分かる。

自分は国のため、レーナのために生かされた身であることを肝に銘じた。


※※※


「ユリシーズさま、お願いがあります。」

「何かな?」


王太子宮に戻って忙しくしていたが、レーナとは可能な限り会うようにしていた。

あと数日で結婚式であっても2人のお茶の時間は譲れない。


「謹慎されていた宮を見てみたいの。

ジゼルにもヒルダにもクインシーにも会いたいわ。」


デーヴィッドとガイはユリシーズの護衛として今も付いている。


「ああっと、クインシーとヒルダは王太子宮にいるな。

ジゼルは…おいガイ、ジゼルは安定期に入ったのか?」

「はい。今度連れてきましょう。

王太子妃さまにお目にかかれるとなれば全速力で走ってきますよ。」

「それは困るな。妊婦に走られたら気が気じゃない。

オマエが横抱きにして連れてこい。」

「御意!」

「なにが御意!だ。私を利用して惚気るんじゃない。自分で言って損したよ。」

「まあ!まあまあ、ご結婚なさったのですね!

おめでとうございます。幸せの青い鳥でしたね。ウフフ」

「な、なぜそれを!?」

「貴方たちの恋の行方をユリシーズさまから逐一聞いておりましたからー」

「で、殿下〜」

「ハッハッハ、私たちの青い鳥はガイとジゼルだったのだよー」

「ほんとですねー♡」

「ねー♡」


(爆発しろー!)


壮年で独り身のデーヴィッドだけが心の中で泣いていた。

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