第22話・つまりスキルってのは便利だってことだ
便利と言いますか、無いと進めるものも進めない・・・というネットゲームがほとんどだと思いますけどね
「うし、んじゃ今日は解散だな」
時刻は夜中の12時に差し掛かろうかという時刻。
健全な学生は就寝の時間と言われているが、今時の高校生が本当にこの時間に寝ているのか疑問が絶えない時間でもある。
少なくとも今ゲームの中にいるトライ達三人が、ゲームが終わったらさっさと寝る、という行動をとるかと聞かれたらおそらくしないと答えるだろう。
女性は何をとは言わないが色々ある、寝る前のお手入れというのは重要だ、しっかりやろうと思えばそれなりに時間がかかるものなのだ。
シャインはシャインでなんかあるんだろう。
トライは何をするかと言えば。
「おぅ、んじゃ予習してくるわ」
ダメな方向に真面目だった。
「予習って、炭鉱に行くつもりか?」
「あんた何時までやるつもりよ」
最もな意見ではあるが、トライは真面目だ、ダメな方向にとつけなければいいことなのだが。
「さすがに最深部には行かねぇよ、ありゃ一人じゃ無理だろ。
ゴブリンはともかく蝙蝠男に当てる練習はしといたほうがいいだろ?」
「今からやるのか?
もういい時間だけど明日大丈夫か?」
最深部に行くとなればソロで身軽に動けることを考えても、少なくとも20分はかかる。
そこから戦闘を始めてしかも練習的な内容をやるとなれば1時間は続けるつもりというわけだ。
「まぁ、あんまり無理しないようにするのよ。
明日眠そうな顔してたらビンタだからね、明日眠そうな顔してたらビンタだからね!?」
「なぜ2回言った!?」
「じゃあ俺ももうしばらくは起きてるし、聞きたいことがあったら電話してくれ」
「おぅ、軽くやるだけのつもりだから気にしねーで寝ちまっていいからな」
はははと笑い合う二人。
行く前にスキルを見て役にたちそうなものを調べておいたほうがいい、と的確なアドバイスだけ告げてシャインはログアウトしていった。
「じゃ、私もログアウトするわよ。
あんたもやりすぎない程度にね」
「わ〜かってるっつの、おめぇらもあんま遅くまで話して寝坊すんなよ」
何気なく言ったように見えたトライの一言に、トロンは顔を真っ赤にしてしまう。
「な、なんであんたがそのこと知ってるのよ!」
「ばーか、何年付き合いがあると思ってんだよ。
おら、シャインが呼び出せねーように気使ってやってんだから早く行けって」
「〜〜〜っ! バカっ! ありがと! でもバカ!」
「おぉ、これが噂のツンデレか?
ん? 最後にツンだからデレツンか? いやむしろツンデレツンという新ジャンるぐぇぼぁっ!?」
「死ねっ!」
強烈なグーパンがトライの台詞を遮った直後、トロンはログアウトの痕跡だけを残して消えていった。
二人が何の会話をしていたかと聞かれれば、ログアウト後のシャインとトロン……いやテルと綾華の電話の話である。
電話というかスカ○プのことだが、そうス○イプのことだ。
一応怖いので伏字にしてみたり、「~のようなもの」という説明を怠ると色々怪しい気がするがまぁ要するにそんなものだ。
ぶっちゃけ言ってしまえば相談という名のただ話しをするだけという恋人同士がやるあれだ、まだ恋人には到っていないが。
「お、おつかれ……ぐふっ」
街中で全力攻撃は製作が作ったNPCが注意しにくるはずなのだが、なぜかこの時は影も形も現れなかった。
――――――――――
「さて……言いつけを守ってスキル確認していきますかねっと」
さきほどのシャインの言葉をきっちり遂行するあたり、実際トライは真面目なのかもしれない。
ちなみにさきほどはたった一文で済ませてしまったが、実際にはもうちょっと詳しいアドバイスがされている。
内容をまとめると大体こんな感じになる。
・スキルはとんでもない種類が用意されている
・表示方法は変更することができる
・初期設定のままだと何のルールもなく一覧が表示されている
・用途に応じて色んな検索がかけられる
・自分に必要なスキルを探すのも醍醐味の1つ!(ここ特に念入りに)
というわけだった。
「自分に必要なスキル……ねぇ」
といってもトライのゲーム暦はたったの3日。
戦った相手と言えばオーガに岩亀に炭鉱のモンスターくらいである。
一応前衛組合の偉いらしいおっさんもいるが、あれはスキル1個2個増えた程度でどうにかできるとは思えないので除外だろう。
必然的に最も自分の理想的な状況であり、今まさに向かおうとしている場所で必要なスキルを探すことになる。
「あの沸き方は1体ずつ倒してたんじゃ埒が明かねぇよな……
ってなると範囲攻撃ってやつが欲しいもんだけどなぁ、ぶっちゃけそこまでやっちまうとまたトロンがうるせぇよなぁ」
実際問題この先どうなるかはともかくとして、今現状では炭鉱のモンスターのほとんどを一撃で倒せてしまうトライ。
その能力で範囲攻撃をとったりした日には、再びトロンの機嫌がMAXになるのは目に見えてしまう、もちろん不機嫌という方向でだ。
「しかし一人でも三人でも活用できるようなもんなんてあんのかねぇ?
なんか都合いいスキル無ぇもんか……」
とりあえずものは試し、とばかりにスキル欄を教わった通りにいじっていく。
「えーっと共有スキルで指示が無かったってこた必須のもんはねぇってことだよな。
ってことは転職後に取得できるもんだけ表示して……えーっと攻撃系に上昇系に……特殊系?」
特殊、という言葉はわりと気になる人は多いだろう。
攻撃系や上昇系は中身が想像しやすいが、特殊系は見てみないとわからないものが多い。
特にスキルなんてほとんど情報を集めていないトライにとっては、気になるのも仕方が無い。
「とりあえず見てみりゃいいか」
結局はそこになる。
まぁトライに限らずこういったものは普通見る。
今まで見ていなかったトライがおかしかったのだろう。
「ありゃ?意外に少ねぇな」
今までウィンドウの上から下までびっしり詰まっていたスキル名が、今回はウィンドウの半分ほどまでしか表示されていなかった。
とはいっても10種類以上はあるので多いは多いのだが。
「ん~……全部見んのもめんどくせぇ……」
残念なのは、トライにとってはそれでも多かったということだ。
10種類で多いなんて言っていたら生粋のネットゲーマーにぶっ飛ばされそうな発言ではあるが、幸い周辺にそんな人物はいなかった。
「再検索っと……転職後のスキル……ありゃ?
ソードマン・ベネフィット限定なんて指定できんのか、そういやこの職業って恩恵がなんちゃら言ってたな」
トライは決して頭は悪くはない、記憶力も低くは無い、ただ馬鹿なだけだ。
馬鹿だから覚える気がないものは覚えないという脳の構造をしてしまっているのだ。
勉強は必要だからという理由で覚えてはいるが、基本人の話は聞いてないことのほうが多い。
「検索検索~っとくらぁ」
若干親父くさい言い方だ。
誰か注意してあげるべき人物が必要かもしれない。
「おぉ、3つしかねーじゃん。
これなら見れるな」
その3つは超がつくほどレアなスキルだよ! ということを教えてくれる人物も当然ながらいない。
自分の職業がどれだけレアなものなのかわかっていないのだ。
「ん? これ最適じゃね?」
たった3つのスキルの説明を一通り読み、最後の1つを読み終えて気づいた。
最後のスキルはまさに今の自分が求めているスキルであったと。
「レベルが低いうちは使えねぇが……それでも大分楽になるな」
そのスキルの内容はこんな感じのものである。
スキル名「ダンシングウェポン」
ソードマン・ベネフィット限定スキル
必要スキル「魔力操作Lv1」以上
アイテム欄にある武器をスキルレベルに応じた数だけ自分の周囲に展開できる
展開した武器はスキルレベルに応じてオートで敵を攻撃する
反応する距離はスキルレベルによって、移動速度は魔力操作のレベルによって変化する
展開されている武器はスキル「シュート」などのスキルに使用することができる
Lv1・武器1つ展開、縦振り使用可、AILv1
Lv2・横薙ぎ使用可、AILV2
Lv3・武器2つ展開、突き使用可、AILv3
Lv4・縦回転使用可、AILv4
Lv5・武器3つ展開、横回転使用可、AILv5
Lv6・回転突き使用可、AILv6
Lv7・武器4つ展開、武器連携「連続縦振り」使用可、AILV7
Lv8・武器連携「連続横薙ぎ」使用可、AILv8
Lv9・武器5つ展開、武器連携「連続攻撃」使用可、AILv9
Lv10・武器6つ展開、武器連携「一転集中攻撃」使用可、ダンシングウェポン専用武器「破壊の杖」製造可、AILv10
「つまり俺がもう一人いる!」
実際には若干違うのでちゃんと説明させていただく。
要するに手数を増やせることになる。
説明を見る限り低レベルではたいした効果は見込めなさそうではあるが、それでも展開した武器を直接シュートできるとなると話が少し変わる。
今までは仕様上、二つの武器を同時に持つことができても、片方にはダメージが発生しないというシステムになっていた。
それは自然にシュートを使うために常に出現させておく、ということがなかなか難しいということになる。
ただでさえでかい両手剣を2本も持っていれば邪魔でしかない。
しかしこのスキルによって常に一本を出しておけるということは。
「アイテムを出現させる」という手間を省くことができるようになるわけだ。
マニュアル操作によって意識のみで出現させることは難しいことではないが、やはり手間があるとないとではかなりの差になってくる。
AILvというのが気になりはするが、おまけで勝手に攻撃してくれるというのならトライの手間はさらに減るだろう。
「よし、これをまず取得だな」
手数が多ければそれだけモンスターの注意をひきつけやすい。
おまけにメタルゴーレムのような相手には、単純に手数が多い分装甲値を減少させることも早くなる。
まさにトライのためにあるようなスキルだと彼は思っていた。
「うし、えーっと『ダンシングウェポン』
……あ、出す武器選ばないと駄目なんだな……20個まで先行登録しておけんのか。
とかいってどうせ一種類しかねーけどよ、全部歪んだツーハンドソードで」
登録が完了すると同時に、トライの左側空中に歪んだツーハンドソードが出現する。
地面に剣先を向けて静かに浮遊するその見た目は、実はFGに出現する敵モンスター「リビングウェポン」にそっくりだったりする。(しかも結構強い)
「ふむ、ある程度邪魔にならねぇような位置にいてくれんだな」
剣はトライの肩から支えでも出ているかのようにぴったりとくっついている。
右を向けば合わせて移動し、屈んで地面に剣先がくっつきそうになれば、剣先を後ろに傾けて地面に接触しないようにしている。
かといって咄嗟に取りにくいかと言われればそんなことはなく、「取ろう」という意思を持つとわずかに移動して持ちやすい位置に移動してくる。
これが素早い動きをする戦闘中に、どれだけトライについてこれるかが問題にはなるが、少なくとも戦闘の邪魔になるようなことはなさそうだ。
「ふぅ~ん……よくできてんなぁ……『解除』」
再びアイテム欄に戻る剣を確認しつつ、自分のステータスも確認してみる。
するとMPが今の時間で3%ほど減少しているのが確認できた。
よくよく見れば今も継続的にMPが消費されていっているが、その勢いは非常に緩やかだ。
「使用で若干消費したとしても……燃費いいな、使えそうだ」
わかる人が聞いたら使えるなんてレベルじゃねーだろと怒られそうな台詞だが、やはり周囲に人はいない。
むしろ誰かいたら街中にリビングウェポンが出たと叫んで大騒ぎになっていたかもしれない。
幸か不幸かは、誰にもわからなかった。
「さて、じゃあ行ってみますかねぇ」
新たなスキルを手に、さっそく炭鉱へと向かうトライだった。
作者はこの手のスキルというのは好きです
ただし放置はあまり好きではないですね、良くも悪くも突撃気質なもので
※2012/8/28
メタ発言を修正
ダンシングウェポンの説明後の部分を若干修正
※2012/9/12
文章を全体的に修正、内容には変化なし




