第20話・つまり抱えてる想いってのは人それぞれなわけだ
いつもと違ってそれぞれの視点からのお話です
話は特に進みません
一人称視点はたまにやると書きやすいけど・・・ずっとはできないな
―――トライ視点―――
「行くぜ」
楽しい。
俺は今楽しんでる。
戦うことが楽しいわけじゃねぇ。
誰かの役にたってる、俺がいなきゃダメな状況になってる、俺の行動が他の誰かの命を握ってる。
それも危機的な状況で。
俺が望んでいた状況で、そして俺は今のところそれをなんとか凌いでる。
それが楽しい。
今まで危機的な状況なんて1度も起きたことなんて無かった。
トロンとシャインがトラブルを持ってくることなんてよくあったが、あれに危機なんて感じたことなんか無ぇ。
そもそもあいつらは規格外なんだ。
チートっていうヤツ?まぁそれなんだ。
ガキのころに巻き込まれた事件の後は尚更だな。
綾華はテルさえ関わらなきゃ常に色々考えてるし、自分が不利になるような立場には絶対ならねぇように立ち回りやがる。
見た目もアレだから敵は少ねぇし、何かあっても自然に周りが助けてくれるようになってんだ。
テルが絡むと何故か馬鹿になんだけどな、未だにワケがわかんねぇ。
そのテルが一番チートだ。
俺は現実じゃ喧嘩番長だのなんだの言われちゃいるが、未だにあいつに勝負事で勝った記憶がねぇ。
走りゃぜってー頭1つ分先にゴールするし、空手でも剣道でも水泳でもそうだ。
いっつも俺のちょっと先にいやがる。
頭脳戦なんか当たり前に勝てるわけねぇ。
しかもイケメンで恋愛関係は自分のだけ鈍感でしかも正義感溢れる……こういうのを確かテンプレって言うんだっけかな?
交遊関係も広いし家は金持ちだし噂によりゃ警察関係にもコネがあるらしいし。
んなもん無くてもケンカは俺より強ぇもんだから、大概のヤツには勝っちまう。
あぁ、昔二人で暴力団に殴り込みしたこともあったな。
さすがに銃は死ぬかと思ったぜ……
そんだけチートなあいつがホントに俺なんか必要だとは思えねぇ。
いやわかってんだ、ホントは俺が必要ねぇくれーあいつはなんでも出来る。
トラブル抱えようがあいつはさらっと解決しちまうだろうし、相手がマフィアだろうが軍隊だろうが多分なんとかしちまうんだ。
そういうヤツらが俺にトラブル持ってくることなんてありえねぇ、あいつらは俺でもなんとかなるようなトラブルだけ持ってくんだ。
自然になのか狙ったのかはわかんねぇが、そういう風になってんだ。
なんとかなるもんだってわかってるもんに危機感なんて感じるわけ……銃以外は無ぇ。
やさぐれるようにケンカしてみたり、何かできねぇかと思ってトラブルを元から断つようなこともしてみたもんだが、そっちのが危機なんて感じるようなこと起きなかった。
銃の恐怖を覚えたら人間のパンチなんて屁みてぇなもんだぜ、マジで。
俺は結局、二人に必要な人間じゃねぇんだ。
少なくとも現実じゃそうだったし、俺はそんな状況の自分が嫌だった。
変わりたかった。
必要だと言ってほしかった。
他のヤツらなんかどうでもいい。
二人に言ってほしかった。
ただ一言―――
「お前が必要だ」
俺は今、その状況にいる。
俺が必要な状況で、俺がいなきゃどうしようもねぇ状況にいる。
その状況で、俺がやれることをやれるだけやっていられる。
それが俺には楽しかった。
自分が本当にやりたいことをやりたいだけできる。
それが楽しくて、俺は自然と笑っていた。
……らしい。
怖い笑い方だって言われてちょっとショックだったぜ……
俺はどんだけ凶悪な顔してたんだ?。
―――トライ視点終了―――
―――トロン視点―――
炎の中から凶悪な笑顔をしたトライがゆっくりと歩き出した。
あれは正義の味方っていうより悪魔とか、RPGとかの中ボス倒せそうなとこでいきなり出てきて、その中ボスを倒しちゃって連戦になる大ボス的な感じだわ。
つまり悪役顔なのよね。
あれはきっと喜んでるんでしょうね。
ジュウってば昔の誘拐事件以来何かと私達を守ろうとしてるもの。
私達も自分でなんとかできるようになろうとしてきたから、最近じゃ「必要」と思われたいっていうのに変わってきてたみたいだけど……
そんなこと考えなくても私達にジュウは絶対必要な人間なのに、なんでそんな考えになるのかしら?
男って時々ワケわかんないわ。
だってジュウが私達に必要かどうかなんて、必要に決まってるわよね?
理由なんて聞かれても「必要だから」でいいじゃない、だって必要な人間なんだもの。
あ、トライがメタルゴーレムに突っ込んでいった。
しっかり蝙蝠男の注意もひいてくれてるし、これなら私も安心して魔法が使えるわ。
……ほら、こういうとこなのよ。
あんたはその程度かよ、って馬鹿にするかもしれないけど、こういうところがきちんとできるって以外と難しいのよ?
テルだって前に言ってたもの。
「俺はあいつほど気を利かせられないよ」ってね。
でもあんたのことだから私達が直接言っても歪んで受け止めちゃうんでしょ?
だから私は何も言わないつもり。
これからも、多分ずっと言わないと思うわ。
だから早く気づいて?
あなたは……
必要な人なのよ。
―――トロン視点終了―――
―――シャイン視点―――
トライとトロンの連携で次々とモンスターが倒されていく。
多分あと3〜4回範囲魔法を使えば殲滅できそうだなぁ。
俺がこの状態になれたのはレベル30超えてからだったんだけどな……
まあ一人でやろうとしたから当たり前だけど。
……従郎の顔が怖いな。
あれは嬉しいんだろうな。
あいつは何故か俺達に劣等感を持ってるから、多分役にたってる……必要とされてるのが嬉しいんだ。
昔、俺達三人が誘拐された事件は未だにみんなの心にトラウマを残したままだ。
俺と綾華を庇って犯人グループにボコボコにされた従郎。
結構な重症になっちゃって、結局事件が解決するまで何もできなかった。
それが悔しかったんだろうな。
それ以来俺達を守ろうと必死だったし、必要とされることに執着するようになったし。
まるで……何もできなかった自分を忘れようとしてるみたいだ。
だから今の状況は、ある意味あいつの理想だもんな。
……でも顔はやっぱり怖いな、あれじゃ悪役だ。
後で注意しておこう。
綾華は自分の不用意な発言のせいで従郎が殴られることになったのを物凄く後悔していたな。
その反動なんだろうけど、今じゃ俺と従郎以外に本音で話すことは無くなったな。
別に嘘をついてるわけでも、所謂猫被りなわけでもない。
言い方とタイミングと言葉選びに気をつかうようになっただけだ。
……尋常じゃないレベルで。
あれはちょっと真似できない。
っていうか何がどうなってそういう状況に変化していくのかさっぱり理解できない。
気がつくと綾華が一番得する形に自然に変化していくんだよな、あれは謎だ。
従郎にとってはそれがまた自分が必要無いって感じるらしく、あいつのトラウマに追い討ちかけてるんだけど。
俺は……俺は、人と距離をとるようになったんだよな。
そもそも誘拐の原因は俺だし。
身代金目当ての誘拐ということにされたけど、本当はそうじゃない。
俺が仲良くしてた親戚の叔父さんが黒幕だった。
理由は……俺の父さんが叔父さんの奥さんと不倫していたらしい。
それを知った母さんが叔父さんに近寄ってまた不倫、親族の関係で父さんが死んだら俺と母さんにほとんどの遺産が入る予定だった。
計画では父さんを途中で殺し、叔父さんの奥さんに全ての罪を着せて殺す予定だった……らしい。
そもそもが母さんは父さんの金が目的で結婚したらしいし、父さんは父さんで別に好きで結婚したわけじゃなく、いい年して結婚していないのも世間体が悪いからなんていう理由で結婚したらしい。
結局誘拐事件自体が、正義の心ってやつを俺に教えてくれた知り合いの警察の人が解決してくれたんだよな。
昼ドラなみのドロドロした大人の裏事情まで全て調べあげてしまったその人のお陰で我が家は家庭崩壊。
仕事人間の父さんは最近顔も見てない。
母さんは息子の俺をお手伝いさんにまかせて遊び放題、家を潰すほどの金を使ったりはしてないようだけど……
俺は……おかげさまで軽く人間不信。
自分の行動と関係なく、自分の環境がトラブルを生み出す状況に嫌気がさした。
なるべく誰も巻き込みたくない、だから交遊関係は広く浅く、従郎と綾華以外で親友と呼べる人は作らないようにしてる。
何か起きてもなんとかできるようになりたかったから、警察の人にお願いして色んなことを学んだなぁ。
武術はもちろん、勉強も頑張ったし。
特に雑学はそれこそ何でも学んだ。
また誘拐された時に役にたちそうな知識はなんでも学んだ。
結果的にそれらは役立ったけど……
武術といえば従郎はズルいと思う。
こっちは警察仕込みの本格的なものを学んでて、空手に剣道・水泳だって必死にトレーニングして効率的なメニューを考えたりしてるんだ。
それを持ち前の運動神経と反射神経と我流の筋トレだけで俺といい勝負してくるんだからズルい。
まだ負けたことは無いけど、これで負けたらさすがにへこむな。
ともかく……
俺は人と関わるのを極力避けるようになった。
まあ正義の心が時々カッとなるけど、どうも悪い人を見ると俺達を誘拐した犯人グループに重なってしまうから仕方ない。
俺だけじゃどうしようも無いことがほとんどだけど、従郎がなんだかんだで必ず付き合ってくれるし。
従郎がいれば実際なんとかなるんだから頼りにしちゃうよね。
銃を避けた時はさすがに驚いたなぁ……、しかも倒したし。
多分この先もずっと従郎とは付き合っていくんだろうと思ってるし、ずっと付き合っていたいと思ってる。
変な劣等感を無くしてあげられればいいんだろうけど、こればっかりは本人の問題だしな。
「回復! 死にそうだぞコラッ! サボんなよヒーラー!」
おっと、考えすぎてたみたいだ。
「ハッハッハッ、その程度で負けてたら前衛はつとまらないぞー」
あれ、なんか思ってないこと言っちゃった気がするな?
「じゃかぁしぃ! 仕事しろや!?
あ、ちょ、マジ無理! 早く! シャイン早く! お願いします早く! とにかく早く!!!」
うん、なんか思ったよりまずい状況かも……
「『ヒール!』頑張れー、トライが死んだら全滅だぞー?」
「だったら仕事しろよ!?」
まあ大丈夫だよね、従郎がいるだけで何とかなりそうだし……あれ、よく見たら敵の数増えてる。
「敵の数増えてるみたいだなぁ、頑張れトライ!」
「マジかよ!? これ以上はキツイっての!」
毎回そう言うんだよな。
でも結局なんとかしちゃうんだよ。
だから余計なことなんか言わなくて大丈夫だよね。
「頼りににしてるよ、トライ君」
「都合がいいんじゃぼけえええぇぇぇ!!!」
ほんとに頼りにしてるんだぞ?
お前がいなかったら、俺は多分……
―――シャイン視点終了―――
名前:トライ
職業:ソードマン・ベネフィット
BLV:20
JLV:9
特殊能力:ヴァナルガンドの加護LV20(HP上限、HP自然回復速度、攻撃力40%上昇、敵装甲値40%無視)
所持スキル:熟練度表示可能、シュートLV2(1000)、魔力操作LV1(1000)
武器適正:両手剣
ステータス
HP:5700+2280(1000)
MP:300(412)
STR:855+342(1000)
VIT:570(1000)
AGI:570(1000)
DEX:570(1000)
INT:300(412)
LUK:570(1000)
残りステータスポイント:80
残りスキルポイント:15
ナレーションがいないとネタ度が一気に低下する不思議
一人称でコメディ風の作品を作れる作者様は尊敬してしまいます
ちなみにここまでが第二章になります
次回は6月中に・・・無理かも(笑)
※2012/8/28
メタ発言を修正
内容を全体的に読者に語りかけるような形から独り言のような形に修正
※2012/9/6
文章を全体的に修正、内容には変化なし




