第13話・つまり2回も説明してしまってすみませんということだ
すいません・・・
「と、いうわけでやってみました鍛冶☆」
ものすごくカットしたので説明しておく。
あのあと鍛冶の心得イベント(フィーネルイベント)を受理した三人だったが、戦闘に関する素材は全て持っていたため、実質町内のNPCに話してまわるだけの単調な作業となった。
一応全て直接会話にて行う予定だったのだが、シャインがどうしてもというので渋々ウィンドウ会話にて進行した結果、何事も起こらなかった。
本当に何も起こらなかったのでばっさりと省略。
街中の風景は白い石を敷き詰めてあり、これぞ中世! といういい感じの光景だったわけなのだが、三人は特に何も感じなかったので特に描写しない。
結果、内容を知り尽くしているシャインの手引きによって、二人はあっさりとイベントをクリアすることになった。
そして初期鍛冶セットを入手したトライがさっそくやってみた結果が最初の台詞である。
「何ができたの?」
ちなみに視界に移るウィンドウからアイコン選択で実行した結果、素材が光の粒子に変わって質量を完全に無視した形状へと変化する、という至って普通のゲームエフェクトが発生しただけで終わった。
そうやって完成した武器は、トライが使っている武器と全く同じ見た目の両手剣だった。
「歪んだツーハンドソードだとさ」
歪んだツーハンドソード
攻撃力:1
耐久度:10
重量:100
説明:失敗作、刀身が歪んで曲がってしまっている。壊れやすそうだ。
「OTZ」
ちなみに比較として初期装備のステータスはこうなっている。
初心者用ツーハンドソード
攻撃力:1
耐久度:∞
重量:50
追加効果:強化不可
説明:初心者用に特別に作られた両手剣、絶対に壊れないほど硬い。が、硬すぎて強化できない。
ちなみに武器の攻撃力は全て割合で計算される。
攻撃力が1なら1%の攻撃力上昇となる。
耐久度は減少する条件がプレイヤー間ではよくわかっていないが、とりあえず硬いものを攻撃すると減りやすいということがわかっている。
これも同じく割合で計算され、耐久度が1割減れば武器性能も1割減るということになっている。(1以下にはならない)
これは防具も同様に計算されることになる。
「まぁまぁ、武器作成は本職にまかせてください」
「ああ、よろしく頼むよフィーネルさん」
シャインが悩殺イケメンスマイルを使った!
フィーネルは顔が真っ赤になった! 効果は抜群だ!
「ま、まかせてくださいっ!」
素晴らしいテンプレ、これぞテンプレである。
「んじゃぁ俺はまずオーガニウムで頼むわ」
「はい! 任せてください!」
ひったくる勢いでフィーネルが素材を受け取り、さっそく奥の部屋に入っていく。
普通はここから日単位で時間がかかるはずなのだが、ものの5分ほどで再びフィーネルが出てきた。
「はい! 完成です!」
「はえぇなおい!」
「手は抜いてないから安心してください!」
「そこか! そこの問題なのか!?」
いまいちゲームとしての認識が甘いトライはそんな突っ込みを入れる。
しかしゲームで武器1つ作るのに何日もかかっていたら、そんなゲームは売れないだろう。
「えっと、名前はどうします?
あなた専用の武器になりますので、私がつけてもいいですがご自分でつけたほうがいいかと思いますよ?」
「自分専用ねぇ……名前がトライだから……トライアスロンとか?」
「ネタかっ! ちゃんと考えろよ!」
シャインがつっこみをいれた。
効果は抜群だ。
「俺にネーミングセンスはねぇ!」
だがトライは開き直った!
トライのHPが回復した!
「狂戦士とかでいんじゃない?」
トロンは鶴の一声を放った!
効果は抜群だ!
「あぁ、トライのリアル通り名か。
悪くないんじゃないか?」
シャインはトロンに協力した!
トライは弱っている!
「あぁ、じゃそれで……いやなんか紛らわしいからソードとかブレードとかつけるか」
しかしトライは耐えている!
ちなみに剣の見た目だが、なんというかこれ剣か? と言いたくなるような形状をしている。
すごく立派な持ち手、装飾は何も無いシンプルではあるが、それゆえに単純な力強さを感じさせる。
赤黒い布が巻かれているのと相まって、とても強そうに見える、そこだけなら。
刀身はなんというか、岩を剣みたいな見た目に削りました的な形状をしている。
刃になっている部分にオーガニウムを使って研磨までしてくれたのか、片刃ではあるが金属質の剣らしき見た目を作り出している。
しかしその刃部分から内側、刀身の本体とも呼べる部分は、まさに岩石だ。
岩を平たく削りだし、オーガニウムの刃部分を挟み込むようにしているのだろう刀身。
見た目も艶などまるでなく、石のようにざらついた肌触り。
ヒビこそ入っていないが、刃と反対側はぱかりと割れたのをそのままにしたように荒いまま。
これを剣と呼んだら世の中の大概のものは剣になってしまうのではないかという形状をしていた。
「あー……ベルセルクブレード?」
「……ある意味無難だが……」
「ではベルセルクブレードで!」
決まった。
決まってしまった。
決まったものはもうどうしようもない。
簡単に変更できるのだが。
「ではどうぞ」
「おう、さんきゅーな」
ベルセルクブレードLv3
攻撃力:2
耐久力:20
重量:300
追加効果:レベルアップ可能
説明:
レベルアップ武器
使用素材:
オーガニウム×1
「レベルアップはさせますか?」
「おう、じゃあオーガニウムと岩鼈甲をあるだけ頼む、いくらだ?」
「えっと……オーガニウムが残り9個と岩鼈甲が4つですね、一気にやるなら割引もして……このくらいです」
提示された金額と自分の所持金と比較し、十分余裕があることを確認する。
「おっけー、それで頼む」
「了解です、では少々お待ちください」
そして奥の部屋に行き、また5分ほどで戻ってくる。
「お待たせしました!」
ベルセルクブレードLv19
攻撃力:8
耐久力:110
重量:500
追加効果:レベルアップ可能、状態異常耐性+10%
説明:
レベルアップ武器
使用素材:
オーガニウム×10、岩鼈甲×4
結果的にこういう武器になった。
ちなみに見た目はだいぶ変化している。
岩に刃と持ち手をくっついていただけだった見た目は、かなり洗練されている。
全体的にスマートな見た目となり、オーガニウムを大量に使ったせいなのか、片刃だったものが両刃になっている。
ただの岩だった刀身も、岩は岩だが形状がだいぶ整えられ、黒曜石とまではいかないが艶も多少でてきた。
といってもまだまだ剣としてはずいぶんと不恰好であり、岩で作った板と言ったほうが正解に近い見た目ではある。
なによりでかい、すごくでかい。
さきほどは岩であったが、両手剣のサイズではあった。
しかし今はかなりでかい。
身長180センチ程度に設定してあるトライと同じくらいの大きさがある。
持ち手の部分まで含めたら(これも巨大化している)、2メートル近いサイズになりそうな巨大な武器へと変化していた。
ついでに武器性能を説明するために、比較になりそうな武器をいくつか紹介してみよう。
クレイモア(NPC販売品)
攻撃力:10
耐久力:200
重量:200
説明:
装備制限レベル10
騎士団で正式採用されている武器。安定と信頼の堅実な性能を誇る。
グレートソード(NPC販売品)
攻撃力:15
耐久力:250
重量:300
説明:
装備制限レベル15
分厚い鉄板のような巨大な剣、重量を持って斬るよりも叩き潰すように使う武器。
ブロードソード(NPC販売品)
攻撃力:10
耐久力:500
重量:300
追加効果:防御力+5
説明:
装備制限レベル15
剣の幅が広い剣、これ自体を盾のように扱うことができる。
つまり、微妙な性能であった。
重量以外勝っている部分が無い、むしろ重量の場合低いほうがいいので、この場合負けている。
シャインもこれを見て、なんとも言いがたい表情を浮かべている。
トライは現在レベル20であるので、店売り装備でもこれより良いものを装備できる。
さすがにこれではやる価値はあまり無いかな、と考えていたあたりで、トライが衝撃的な一言を発した。
「良いのか悪いのかよくわかんねぇ……あ、武器にも熟練度ってあんのか」
大きく目を見開き、シャインはトライに食いかかった。
「武器に熟練度!?っていうかなんでわかったんだ!?」
「お、おぉ、転職したときにスキルゲットしてたんだよ。
熟練度表示可能ってヤツ、お前も表示されてんだろ?」
「されてない!
熟練度があがるとどうなるか説明ないのか!?」
「ちょいまち……あ、説明あんな」
「教えて! 教えてください!」
「落ち着けって!
あ~なになに、熟練度が上昇するとその武器を使ったときにボーナスが入るらしい?
熟練度レベル1ってなってっからこれもレベルアップすんじゃねぇか?」
これは凄い発見をしたとシャインは直感した。
同じ武器を使い続け、強化し続ければもしかしたらものすごい武器ができあがるかもしれない。
専用武器になってしまうことから売ることはできないが、逆に言えば売る必要が無いくらい自分好みの武器が作れるということでもある。
(だからこのゲーム、レア装備が異常に少なかったのか)
そう、FGでは他のゲームでよくあるレア装備が異常に少ない。
多くは無い、というだけで別に少ないわけではないのだが、他のゲームと比べると異常と言えるほどに少なく、入手率も低い。
その分1つ1つの性能は目を見張るほどに高いものではあるが、それでも少ないとネットゲーマーなら感じるはずの数しかない。
(オリジナル武器の使用が前提だったんだ、魔結晶も見つかることが前提で……
あぁっ、そう考えたらあのイベントとかあそこのマップとか……っ!!!)
一人百面相をはじめたシャインだが、その姿でさえ絵になるのだからイケメンは素晴らしい。
トライとトロンはもはや見慣れた光景で、思考のドつぼにはまるとああなることを知っているので完全スルーだが。
「なんか思いついたみてぇだなぁ?」
「ああなると手がつけられないのよね……
あ、とりあえず私のもやっちゃって~」
「え~っと、はい。
でもほっといていいんですか?」
「「今は手を出すな」」
二人にハモられ、ビクッと震えるフィーネル。
おずおずと作業場に向かう後ろ姿には、哀愁が感じられた。
名前:トライ
職業:ソードマン・ベネフィット
BLV:20
JLV:1
特殊能力:ヴァナルガンドの加護LV20(HP上限、HP自然回復速度、攻撃力40%上昇、敵装甲値40%無視)
所持スキル:熟練度表示可能
武器適正:両手剣
ステータス
HP:5700+2280(0)
MP:300(0)
STR:855+342(0)
VIT:570(0)
AGI:570(0)
DEX:570(0)
INT:300(0)
LUK:570(0)
残りステータスポイント:0
残りスキルポイント:9
装備品
右腕:ベルセルクブレードLv19(攻撃力+8)
左腕:ベルセルクブレードLv19(攻撃力+8)
頭:ロックヘルム(防御力+3)
体:ロックプレート(防御力+5)
腕:ロックガントレット(防御力+3)
足:ロックグリーブ(防御力+3)
アクセサリー:なし
装備エリアカスタマイズ
無し
考え込んだら回りが目に入らなくなる・・・よく言えば集中してるということですがね
※2012/8/25
生産実行時のトライの台詞を修正
修正前→「歪んだロングソードだとさ」
修正後→「歪んだツーハンドソードだとさ」
※2012/8/27
メタ発言を修正
細かな部分を若干修正
シャインがつっこみをいれた~の部分はネタとしてあえて無修正
※2012/9/5
文章を全体的に修正、内容には変化なし




