出航
俺とハルナが手紙を呼んでいると、上からダイヤが覗き込んだ。
「なんだ、あてがあるのか。 じゃあ、そこまで着いていくよ。」
「いい、二人で行けるよ。」
「僕たちもその港から来たんだ。 今から帰るから、着いて行ってもいいかな?」
「…わかった。 一緒に行こ。」
俺は立ち上がったが、ふらついてしまう。
クロムが俺の体を支えてくれた。
ダイヤがクロムに何かを伝えていたが、内容は分からなかった。
二人の会話を聞いていると、急に視界が真っ暗になった。
次に目が覚めると、知らないきれいな木目の天井が見えた。
ゆっくりあたりを見回すと、ハルナが同じように横で寝ていた。
きれいな服に、きれいな布団。
左腕には何かが付いていた。
目は覚めたのに、なぜだか体が思うように動かない。
なんだか、もどかしい気持ちでいると、俺達が寝ている部屋にダイヤが入ってきた。
「気がついたか。 点滴がまだ残ってるから、もう少し安静にしてくれよ。」
「…ここは?」
「地図に書いてあった港の小屋だ。」
「そうなんだ…。」
「サイラスを呼んでくるよ。」
ダイヤは俺達の家にいる時より、優しい感じがした。
ダイヤが部屋から出て少しすると、群青色の髪をした高身の男が部屋に入ってきた。
「やぁ、君がヒナタだね。 私はサイラス。 君たち二人はクロム様の国でお世話になることになったんだ。」
「そうなのか?」
「もともと、君のお母さんから頼まれていたのは、いつか二人が来た時に船に乗せてほしいってだけだったんだ。
多分、お母さんも君たちも、この海の向こうには行ったことないだろ? もし、船に乗ることができたとしても、その先で住む場所や食べるものがなかったら、大変なんじゃないかな。」
「たしかに、そうだな。」
「クロム様はね、海の向う側にある国の王様なんだ。」
「王様?」
「うん。 国で一番偉い人だよ。」
「そうなんだ…。」
「勝手に私たちが決めてしまって悪いね。」
「ううん、いいよ。 ハルナと二人なら大丈夫だから。」
俺はハルナの方を振り返る。
ハルナは何かに気づいたのか、目を覚ました。
「ハルナ…。」
「何?」
「さっきのクロムって人にお世話になるんだって。 その人と一緒に帰るらしいんだ。」
「…そうなんだ。 もう、あのお家には戻れないの?」
「いつかきっと戻れるよ。 今は君たちの健康をお母さんも望んでいるよ。
大きくなったら、戻っておいで。 私はここで待っているよ。」
サイラスは優しく言った。
話が終わった後、左腕についていたものをダイヤに取ってもらい、船に乗り込む。
母さんからの手紙と、不思議な形の石を持って。




