なんで、そんなことを言うの?
どうでもいいことをわいわい言いあっている3人。
いやいや、みなさん、なんで、そんなのんきでいられるの?
事の重大さがわかっていないのかしら!
一大事なのに!
ということで、騒がしい3人に向かって私はガツンと言った。
「そんなことより、ルビーさんです! どうするんですか!?」
すると、ノーラン様が私を見て小首をかしげた。
「どうするってなにがー? それに、ルシェ。なに、あせってるの? 落ち着きなよ」
「確かにな。どうした、ルシェル? もしかして、甘いものが足りてなくて、いらいらしているのか?」
と、ロジャー様。
「甘いものはずっと足りてません! ……じゃなくて、そんなことより、ルビーさんのことです!」
「ロジャー、甘いものをルシェルの前で思い出させるのはやめて。でも、ほんとにどうしたの? 落ち着きなさい、ルシェル」
さっきまで一切の落ち着きがなかったエリカ様が、あきれたように私に言った。
だから、なんで、この3人はどうでもいいことに話を持っていくの?
私が落ち着きがなくたってどうでもいい。
そんなことより、ルビーさんの力のことよ!
と、言おうとした時だった。
「やっぱり、気持ちが悪いですよね。私、出て行ったほうがいいですか……?」
と、感情のない声がした。
見ると、ルビーさんだ。
無表情で私を見ている。
え?
今、全く関係のない言葉が聞こえたような……?
「ええと、ルビーさん……。今、私の聞き間違いでなければ、気持ち悪いとか、出て行くとかって言ったかしら? まるで意味がわからないのだけれど……?」
私は混乱した頭で聞き返した。
ルビーさんはまるで人形のように無表情のまま答えた。
「私のこと、どうするか困っているみたいだったから。……つまり、私の存在が気持ちが悪いんですよね? いてほしくないのなら出ていきます」
「……はああ!? なんで、そうなるの!? ルビーさんが気持ちが悪いわけないじゃない! なんなら、ずっと見ていたいくらい、きれいだけれど? そうじゃなくて、私がどうするのか聞いたのは、ルビーさんの力が特別だから。聖女の力と魔力を両方併せ持つ人なんて初めて聞いたから、一大事だと思ったの! それなのに、上司である、この3人がどうでもいいことばっかり言いあって、のんきに遊んでるから焦ってしまったの!」
と、一気に言い終えた私。
ルビーさんは驚いたように目を見開いて、ぽつりと言った。
「私の力がわかっても、気持ちが悪くないんですか……?」
「気持ちが悪い……? ルビーさんがなんでそう言うのか、まるで、わからないんだけれど……。ルビーさんの力を知って、今、思ってることを正直に言うわ。まず、今、ものすごく驚いている。だって、すごいことだもの。それと、聖女の力だけでも大変なことがあるのに、同じくらいの大きさの二つの違う力を持っていると、コントロールするのが大変だろうとも思う。でも、人を救うには、ものすごい可能性がひろがると思うから、どきどきするわ! ルビーさんその特別な力を、安心して使えるようにそばで手伝いたいと思う。そんなことを考えてるかしら……」
すると、突然、ルビーさんの真っ赤な瞳から涙がころがり落ちた。
「……ええっ!? ルビーさん、泣いてるの!? あ、どうしよう! 私、なにか、まずいこと言ったかしら!? あ、ごめんなさい、ルビーさん、ごめんなさい! 泣かせてしまって、ごめんなさい!」
混乱したまま、私は、がばっと頭を下げた。