衝撃が……
ルビーさんを泣かせてしまった理由はわからないけれど、私の発言で泣かせたことは確かよね。
とにかく謝らなきゃと、思いっきり頭を下げる私。
すると、頭上から、
「ルシェルさん」
と、優しい声が聞こえてきた。
頭をあげると、涙でぬれた顔で私を見つめるルビーさん。
いつもの凛とした顔ではなく、心細そうな幼さを感じる顔。
仮面が外れたようで、年相応に見えるわ。
それより、今、ルビーさんが私のことを名前で初めて呼んでくれたわよね!?
しかも、他人行儀ではなく親しみをこめて!
どうしよう……。
嬉しすぎて、ドキドキしてきた。
「はい! ルビーさん。何かしら?」
と、大きな声で返事をする。
動揺したせいか、思いっきり声が裏返ってしまった。
「ブフッ。うわあ、ルシェがおかしな声だしてるー」
ノーラン様の笑う声が響く。
まあ、偽エルフに笑われたところで、どうでもいい。
それよりも、大事な時だから黙っていなさい、という気持ちを込めて、偽エルフをひとにらみしておく。
が、偽エルフは何故か上機嫌で笑い返してきた。
うん、意味不明。
これは、放っておくのが一番ね。
ということで、偽エルフからルビーさんへと視線を戻した私。
ルビーさんの次の言葉を全身全霊で待つ。
「あの、ルシェルさん、すみません……。泣いてしまったのは、ルシェルさんの言葉が嬉しくて……」
「嬉しい……!?」
予想外の言葉に、思わず聞き返してしまう。
ルビーさんは私に向かって恥ずかしそうに微笑んだ。
なんという愛らしさ!
心をうちぬかれた私は思わず胸をおさえた。
だって、ここに本物の天使がいるんだもの!
今まで、クールな印象のルビーさんしか見たことがなかったから、ものすごい衝撃だわ!
「私の能力をそんな風に言ってもらったのは初めてで嬉しくて……」
そう言ったあと、自分のことを話し始めたルビーさん。
「あの……、私は孤児なんです。小さくて覚えていないのですが、国境近くに捨てられていた私を、今のおじいさんが見つけて、育ててくれました。でも、私の赤い瞳は、村のみんなに気持ち悪がられました……。おじいさんは治療院をしていて、村のみんなに頼られていました。だから、おじいさんの手前、あからさまに私を悪く言う人はいなかった。でも、5歳のころです。突然、私に不思議な力がではじめたんです。自分のケガに手をあてると治ったり、手をかざすと物が浮いたり、自分でもよくわからないから制御できなくて……。今思うと、癒しの力と魔力がまじって、出始めたのだと思います。みんなは、私に『気持ちが悪いから近寄るな』と言い始めました。『人間じゃない。バケモノだ』とも。私は人が怖くなって、家からでなくなりました。だから、おじいさんは治療院を辞めて、私を連れ、誰もいない山の中へと引っ越してくれたんです。そこで薬草を育てて、たまに町へ売りに行くという生活をしていました」
ルビーさんの顔を見ると、涙でぬれた赤い瞳はきらきらと光っている。
その名の通り、宝石のルビーみたいに美しい。
つらい思いをしたルビーさんを思って、私はこぶしをにぎりしめた。
できることなら、5歳の頃のルビーさんに会って、しっかりと抱きしめたいわ!




