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今回は切りが良いところで終わりたかったので、短めです。
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(リリスの態度が一変したのが自分のおかげって)
リリスに啖呵を切った後、少し頭を冷やすためにアリアは、全員がそろっているところから少し離れ、ベランダに行った。そこで、こそっとため息をついたものの、ゲームのシナリオ上ではミスティア王女含め3人が3人とも誰の言葉にも応じない悪役令嬢っぷりで、その中でもリリスは現実世界でもかなりやんちゃな娘に育っていたので、アリアは彼女がこれでどこまで矯正できるか少し楽しみになると同時に、少し恐ろしくもあった。
「アリア」
刹那、過去に思いをはせていたが、母親の呼ぶ声によって一気に現実世界へ引き戻された。
「何でしょうか」
エレノアとセレネ伯爵が話しているところまで戻ると、こちらを見つめている母親に尋ねた。
「今日は空いている部屋は広間しかないみたいだから、皆さんで寝ましょう」
既に、他の面々は広間に移動したらしく、そこにはエレノアとセレネ伯爵のみが残っていた。
「公爵夫人、スフォルツァ嬢。今回の事件のことは王家は関わっていないと思いますか」
広間へ向かう前、セレネ伯爵が尋ねてきた。
「どのような意味でしょう」
エレノアはそう尋ね返した。アリアも同じ意見だったが、口に出さず、首をかしげるだけにした。
「そのままの意味です。あなた方の身内の所業は王家にも当然害を成しています。しかも、国政を混乱に陥りかけさせたのは言わずとも知れています。それなのに、今回の件などには王族は関わっていないように見えますが、実際のところは関わっているのでしょうか。それとも、臣下でつぶしあいしろ、という事でしょうか」
セレネ伯爵は今までの事件を振り返るように言った。確かに、今回の件も、アリアが王宮に勤めることになった事件も、王家は事後に処罰している。しかも、フレデリカに同調する貴族たちの処罰は中流、上流貴族はエレノア直々に断罪しているが、下流の貴族は彼女が出ていかなくても、勝手に自滅していっている。そこに王家が働いているのは当然だとは思っていない。なぜなら、今までフレデリカの専横を許していたような状況だったから。
「私にも王家の、いえ、国王陛下一家の思惑は読めません。なぜなら私がすでに王族を離れているからです。しかし、あなたを陥れたのは、間違いなく王族、もしくはそれに極近い臣下だとは思います」
エレノアははっきりとした口調で言った。
「もちろん、その一件が本当であるならば、大貴族であるスフォルツァ家にも十分咎があります。誰がやったか明るみになるまで、もうしばらく待っていただけませんか」
エレノアは懇願するように言った。セレネ伯爵は、ゆったりと首を振り、
「公爵夫人がお知りでないのでなれば、こちらも強く聞くような真似をして申し訳ありません」
と言った。
アリアは、今晩の事件の経過と過去の事件を思い出しているうちに、ある一つの可能性を思いついた。だが、それを二人に言う勇気はなかった。





