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 屋敷に戻り執事さんを呼び出す。

「解決したわよ」

「と、言いますと?」

「ユニコーンを逃がしたのは貴方ですね?」

「な、なにを…」

「ケイトの出自も調べたわ」

「…」

 黙ってしまう執事さん。

 ローティーも執事さんに語り掛ける。

「安心してください、ここには他の人は居ません。ケイトのおばあ様は亜人ですね?」

 私は説明する。

「さかのぼれば、神々の末裔、そして女神にたどり着きます」

 ローティーも仮説を続ける。

「イシス、ヘーラー…いずれか分かりませんが女神の中には異性との経験がないまま子を成したり、出産のあとも異性との経験が無い清純な状態に戻る性質を持ちます。そしてユニコーンは清純な乙女の膝で眠る、という習性があります。ケイトさんは女神から続くお婆さまの体質を受け継いでしまったんですね」

 私たちの問い詰めに黙ってしまう執事さん。

 私の「話してくれますね?」という促しに、執事さんは観念したように話しだした。

「ケイトお嬢様のお体は人間の女性そのものです。しかし、高名なお医者さまと研究者によれば、女神の性質が世代を超えて存在してる可能性がある、と」

 ローティーは言う。

「ケイトが婚約者と夜の営みをしても経験がない状態に戻る。ユニコーンは異性経験のない乙女の膝で眠るのでそれがバレる」

 要するに、ケイトが乱暴されたりして清純な状態じゃないからユニコーンに避けられる、ではなく逆。

 婚約者と契りを結んでも清純な状態に戻るのでユニコーンはケイトの膝で眠りそれをバラすのだ。

「はい。その可能性を危惧しました。もしそうなれば、当家に人ならざる者の血が流れている事が明るみになります。婚約の破棄にもつながりかねません」

「だから家系図は紛失した、と言ったのね」

「山賊に情報を流したのは私でございます。町の人間を雇い、山賊に金銭を渡し、警備を手薄にして強盗に見せかけユニコーンの逃走を手引きしました」

「でもユニコーンを逃がすだけじゃ間に合わせじゃないの?」

「ケイト様の姉のコニー様も同じ体質でした。しかし二十五歳の時にその性質は消えたのです。研究者が言うにはケイト様も同様だろうと。ケイト様は現在二十四歳です」

「なるほど。あと一年誤魔化せばいい、そういう訳ね」

 執事さんは「お嬢様はご自分の体の秘密について知りません。いかようにも処罰は受けます、だからお嬢様の出自だけは」、と言うので私は答える。

「安心して。喋るつもりはないから」

「な、なんと!?」

「ケイトはほぼ人間の女性で亜人の血は本当に薄いんですよね? 大体神様の末裔でしょ。ならいいじゃない。たまたま窃盗犯が来て、おまぬけにもユニコーンを逃がしてしまった、犯人はお縄に。ユニコーンは大自然に。これで一件落着!」

 ローティーも「結婚式の準備、忙しくなりそうですね」などととぼけた態度をとった。

 執事さんは深々と頭を下げて言う。

「御恩は一生忘れません」

 奇妙なユニコーン逃走劇はこれにて決着がついた。



 私たちはお互いに報告書を書く。

 もちろんケイトの出自は伏せたまま。

「女神の血筋なんて、優良も良い所だけど、隠す理由も分かったわね」

「お相手が独自性の高い宗教と神様を信仰してるからね。違う女神様の血筋だと隠した方がいいだろうね」

 まあこの辺りは実は相手は全く気にしない事がのちに発覚するのだが、それはまた別の話だ。

 それにローティーは言うのだ。

「そもそも、ユニコーンが清純な乙女を好むのは個体差があるし、別に優しい人間なら普通に懐くこともある。男性でも女性でも、それこそ既婚者でもね。多分杞憂の部分が多かったんじゃないかな」

 そんな風に締めくくった。

 それから私は報告書を書きあげ言うのだ。

「よし! これでまた聖女ポイントが貯まるわ!」

「そんな適当なポイントなの?」

「なんか正式名称は複雑だから私流の呼び方よ!」

 ポイントが貯まれば正式に聖女に復帰。

 今回の件は周りにそこそこ衝撃を与えた。

 私を揶揄してた連中は言うのだ。

「あの聖女未満が?」「魔力0が解決したらしいぞ」

 だけど疑問符の中に、私を評価してくれる評判も聞こえはじめた。


 そしてこの国の王子、リカルド王子から声が掛かった。

「また活躍したそうだね、レシフィナ」

 私は王子に胸を張って人の役に立った事を報告する。

 実はちょっとした知り合いなのだ。

 彼に話をすると、王子は私の冒険譚を笑顔で聞いてくれた。

 応援され、激励を受け嬉しさを感じた。


 そんな小さな充実感とともに、私は歩みを進める。

 私は拳を振り上げ、聖女になるための活動を続けるのだった。

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