ゲーム初心者、狩りをする
休憩を挟んで気持ち悪さもなくなったのでギルドへ向かう。ヒールルートも素材として試してみたいからできれば討伐依頼がいいな。今のスキルレベルで扱えるかは分からないけど、集めて損はないしね。
「こんにちは。依頼って何かありますか?」
受付のお姉さんに挨拶してからそう聞いてみる。
「特別な依頼は来てませんね。恒常で出されている依頼になります」
「じゃあ今回はプレインラビットの討伐依頼を受けてみます!」
「かしこまりました。それでは討伐の証となる耳を切り取ってこの袋に入れてくださいね」
と小さな袋を渡される。耳か……自分で切り取らなくて済むゲームでよかった。
「目標数はどれぐらいですか?」
「討伐依頼は数の指定はないので、討伐数に応じた報酬をお渡しすることになっています」
「あ、そうなんですね。わかりました」
「お気をつけて」
袋を受け取って街の外へ。見渡した限りだとそこそこの数はいるみたい。そっちへ向かいがてらヤク草の採集もしていこう。
いくらか採集をしながら目標のプレインラビットの近くまで来たので様子をうかがう。
そういえば<鑑定>ってモンスターにも使えるのかな?と疑問に思ったので試してみる。
「<鑑定>。どれどれ」
<プレインラビット>
Lv2 動物型/小型 無属性
平原に生息するウサギ型のモンスター。おとなしい性格だが攻撃を受けると勇敢に戦う習性がある。俊敏な移動が可能になる脚力を持っており、その脚力とスピードを生かした蹴りは危険。
あ、使えた。レベルと種族とサイズ、それに属性が分かるんだね。あとテキストでも説明があるから初めて見るモンスターには使ってみようかな。
プレインラビットはウサギにしては大きめ...70㎝ぐらいの体長をしているから狙いはつけやすいね。投げナイフを取り出してじっくり狙いをつける。動きを止めた瞬間──今。
「『スロウ』」
ナイフは真っすぐプレインラビットに向かって飛び、その身体に突き刺さった。最初にもらえた投げナイフと違いちゃんとした刃をしているのとスキルの効果でしっかりとダメージになっているみたい。
「──!!」
先制攻撃を受けたプレインラビットは痛みにのけぞったものの真っすぐこちらに飛び跳ねてくる。8mぐらいの距離があったのにあっという間に詰められた。
プレインラビットは詰め寄ってくる勢いそのままに飛び蹴りをしてくる。身構えたものの衝撃に耐えきれず蹴り飛ばされる。めちゃくちゃ痛い。
「いっ......たぁぁい!!」
吹き飛びはしないものの大きく体勢を崩され、HPの半分と少しが削られる。でもまだやれる。剣の間合いではないのでもう一度ナイフを投げる。『スロウ』はまだ使えないから自力の投擲だけどこの至近距離なら当たる。プレインラビットが怯んだからすぐに大きく踏み込んで剣を突き出す。剣先がその身体に突き刺さりプレインラビットは光になって消えた。倒せた......危なかった。
周囲を見回して安全なのを確認してほっと一息。手製のヒーリングポーションを飲んでからドロップアイテムを確認する。
<プレインラビットの耳>
プレインラビットを討伐した証。クエストアイテム。
<プレインラビットの肉>
プレインラビットからとれる肉。鶏肉に似たクセのない味で料理に使いやすい。
<プレインラビットの皮>
プレインラビットの皮。そのまま使ってもよし、なめして小物などにするもよしの使い勝手のいい皮。それほど強度は高くないので防具には向かない。
耳はクエストアイテムだから特別だと思うけど、やっぱり動物だからお肉と皮も取れるんだね。そういえば屋台の料理食べようと思ってそのままだったしこのお肉を使って何か作ってもらえないか後で聞いてみよう。それにこの皮、防具には向かないけど小物には使えるみたいだし集めて何が作れるかも知っておきたい。
素材の使い道は後で決めるとして、飛び蹴りが痛すぎる。足も速いからスライムみたいにアウトレンジ戦法はできないね。
そういえばさっき<鑑定>で見た時にスピードを生かした蹴りが危険って書かれてたよね。もしかしてスピードを生かせないようにすればさっきみたいな飛び蹴りはできないとか?HPが回復したら次のウサギを探して試してみよう。
ポーションの効果と自然回復でHPは完全回復したので次のプレインラビットを探す。獲物と言うにはまだ強さが拮抗してるよきライバルだね。全部別個体だけど。
採集しながら平原をうろうろしてターゲットを見つけたので今度は投げナイフを使わずに剣で斬りかかる。大きいとはいえ一見ただのウサギに対していきなり攻撃をしかけるのは心が痛むけど、これはゲームと自分に言い聞かせて先制攻撃を与える。ナイフを投げるのはいいのかって?人は距離が離れるほど罪悪感が薄れるんじゃないかな。
ともかく、剣で斬られたプレインラビットはさっきと同じように反撃を仕掛けてくるけど、やっぱり至近距離だからかスピードの乗った飛び蹴りはしてこずにただの頭突きで突っ込んできた。これなら不意打ちでもなければ十分耐えられる。
プレインラビットは足の速さを生かした飛び蹴りが脅威だけど、ほかの攻撃は頭突きと体当たりぐらいしかしてこないので接近戦に持ち込めば特に苦労することなく倒すことができた。もし角とか鋭い牙とかを持ってたら危なかったな。
ポーションを使って回復するほどのダメージも受けなかったから1匹倒すたびに休憩するだけですぐにHPが回復する。楽勝とはいかないけど苦戦もしなくなったのでスキル上げも兼ねて次々戦いを仕掛けていった。乱獲で捕まったりはしないよね?
しばらくひたすら狩りを続けて夕方になったのでキリのいいところでギルドに報告。<投げ>は使いにくかったけど<片手剣>は結構上がったしお金もそこそこ貰えたのでいい修練になったと思う。
NPCの商店街もいいけど、せっかくだからプレイヤーのお店も見てみようかな。それでもしお金が足りたら装備も新しいものを揃えたい。あとご飯も食べてみたい。
「おお。活気がすごい」
そう考えて露店街に入ったところ、NPC商店街よりも人が多かった。いくらかNPCもいるみたいだけど店を出す人、それを見て回る人で溢れている。
露店は看板に何を売っている、あるいは買うのかが表示されているのでそれを見ながら歩いていると、興味を引く看板を見つけた。
「装備製作します。空きあり」
完成品だけじゃなくてそういう商売もあるんだね。ためしに聞いてみよう。
「こんにちはー。装備製作ってどんなものが作れるんですか?」
そうお店の人に聞いてみる。
「いらっしゃい!」
店番をしていた赤髪の活発そうなお姉さんは大きな声で応えてくれる。
「鍛冶に裁縫、革細工に木工、装備に関わるものなら何でも作るよ!」
製作スキルも色々あるんだね。
「『プレインラビットの皮』がいくらかあるんですけどこれでどういったものが作れますか?」
「革細工なら頭防具、グローブ、ベルトにあとブーツだね。あとは剣とか弓の持ち手とか裁縫のワンポイントになるけど、希望はある?」
「グローブとベルトとブーツが欲しいんですけど、お金ってどれぐらいかかりますか?」
「んー、最低価格で1部位銅50からかな。個別に改造するならもうちょっとかかるよ。あと足りない素材は割高になるけどお金もらえればそれでも大丈夫」
全部揃えるだけのお金はないね。またお金稼ぎしなきゃ。1部位か2部位なら何とかなりそうだし、優先度はどうしよう。お金を払えば片手剣も作ってもらえるのかな?うーん。
「間違ってたらごめんだけど、キミ始めたばかり?」
値段を聞いて考え込んでいると、そう聞かれた。
「はい。昨日始めたばかりです」
隠すことでもないのでそう答える。
「そっか。じゃあ悩むよねー。ぶっちゃけお金ないでしょ?」
「あ、あはは。全部揃えるだけのお金はまだないですね」
「だよねー。わかる。じゃあそうだね、皮いくら持ってる?」
うん?
「18枚あります」
「じゃあそれ全部渡してくれたら必要な分を改造込みで作るよ。ただ空いた時間で作るから日数はかかるけど。どう?」
なんと。
「えっ。いいんですか?」
「先行投資ってことで、今後も贔屓にしてくれるならいいよ」
「ぜひお願いしたいです!」
「おっけ!じゃあ細かい希望聞こっか」
とても好条件で装備を作ってもらえることになったのは幸運だと思う。テレビとかで見る職人さんって堅物なイメージだったけど、ゲームの職人さんはとても親切なんだね。
遠慮して控えめな要望を伝えたら遠慮せず盛ってと言われた結果、かなり手が加えられることになった。それが以下。
<ラビットヘアバンド>
プレインラビットの皮をなめして作られたヘアバンド。額部分に薄い金属が貼られており額への一撃を防御できるが防御力とカバー範囲は控えめ。
改造:金属片強化
追加効果:<クリティカル防御・極小>
<ラビットグローブ>
プレインラビットの皮をなめして作られたグローブ。指先での動作を阻害しないように指部分は穴が開いている。
改造:指ぬき改造
追加効果:<DEX増加・極小>
<レザーベルト>
皮をなめして作られたベルト。シンプルなつくりで細かい改造によって様々な個性を出せる。
改造:スローイングナイフホルダー ポーションホルダー
追加効果:<投擲武器スロット・5><ポーションスロット・2>
<ラビットブーツ>
プレインラビットの皮をなめして作られたブーツ。プレインラビットの脚力をわずかながら得られる。
改造:スパイク追加
追加効果:<AGI増加・極小><踏みつけ強化・極小>
「あの、盛りだくさんですけど本当にいいんですか?」
全部の装備に改造が施されていてさすがに聞く。後でやっぱ代金支払えと言われても絶対足りない。
「いーのいーの。せっかくだからいいもの使いたいじゃん?それに渡してもらう素材でほとんど作れるからさ。手間賃の代わりに時間もらうから気にしないで」
「じゃ、じゃあお願いします......」
本人がいいと言ってもさすがに気が引けるけど、ここでやっぱり断るっていうのも悪いのでお願いする。
「じゃあ完成したら連絡するから名前教えてもらっていい?」
「ミノリです」
お姉さんが何かの操作をするとシステム通知が届いた。
『新着メッセージ1件』
操作して開いてみると目の前のお姉さんからのメッセージで、『装備製作屋のヴィーだよ。完成したらこんな感じにお知らせするね』と書かれていた。
「届いた?」
「はい、届きました!よろしくお願いします」
「じゃあしばらくしたら完成するから気長に待ってて」
「わかりました!」
改めてお礼を言って別れる。宿屋に行く前にいい匂いにつられて買った串焼きを食べる。あまり食べなれない味だったけど、ゲームなのにしっかり味がしたのは驚いた。こっちの世界で美味しいものいっぱい食べても太らないから食べ歩きしたいな。
そう思いながら宿屋で部屋を取ってログアウト。現実のご飯も用意しないと。
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スキル:<片手剣>Lv.7 <投げ>Lv.3 <鑑定>Lv.4 <調合>Lv.4 <見習い製作者>Lv.2
ゲームの製作って大体指定された素材を集めて製作ボタンを押したら完成品、とか製作ミニゲームに成功したら完成品、っていうのが当たり前なんですけど、自分で作るっていう感覚があるならむしろそれって不自然に感じそうな気がしますね。なのでこのVRMMOの世界では同じアイテムでも工夫や作り方による違いが反映される設定です。その中で、システムが想定した「完成品」との違いを改造だったり追加効果として登録、反映されるイメージ。




