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剣術を学ぶ

最後は剣術だ。


国語と数学と歴史はわかるが、剣術はまったくわからない。


幸い、国語も数学も歴史も成績が上がり、残るはこれだけ。


勉強はなんとかできたが、運動系は前世でも苦手だったし、この身体の持ち主も元々病弱だったので、正直、不安で仕方なかった。


精霊タンは、


「動作を単純なパーツに分解し、その分解した動作を徹底的に覚えてから、少しずつ組み合わせれば剣術は上達する」


と言っていた。


「分解して組み合わせる……理屈はわかるけど、本当に通じるのか?」


半信半疑だった。


そこでまず、アイビー先生に剣術の基礎を習い、その上達スピードが速いかどうかを見てもらうことにした。


この国の剣術は、日本の剣道とほぼ変わらない。足運び、腕の素振りが基本のようだ。


早速先生に稽古場で教わることに。


「異国のすごい賢者が編み出した勉強方法では、このように動きを分解して覚えます」


そう言って、俺は教わった動きを細かく区切って見せた。


「ただし雑にやると逆に変な癖がつく。だから、最初は“ゆっくり・正確に”を意識するのがコツです。」


先生も少し首をかしげながら、「そうですか……試しにやってみますね」と言い、俺の真似を始める。


はじめはぎこちなかったが、10分、20分と経つうちに――。


「あれ……いや、これ……スムーズですね」


驚いた表情で、先生は木剣を持つ手を見下ろした。


「複雑な動作は、脳が“ひとつの動き”として覚えようとすると混乱する。でも、小さな動きに分ければ、ひとつずつ“脳の引き出し”にしまえる。だから効率がいいんです」


そういいながら

俺も身体が思いのほか軽く、スッと動く。


「これ、本当にいいですね……!」


思わず口をついて出た言葉に、先生はクスッと笑った。


「あなた、なかなかすごいことを教えてくれますね」


その後も、動きを組み合わせて1時間ほど続けると、まるで1週間程度練習したかのような滑らかさになっていた。


先生も思わず、ポツリとつぶやく。


「これ……本当にガチなやつです」


「先生が“ガチ”とか言うんだ?」と笑うと、先生は思わず頬を赤らめて笑い返してきた。


練習が終わり、木陰で汗をぬぐっていると、先生がふと遠くを見ながら言った。


「……私、昔は本当に剣が苦手で…。同期の子たちがどんどん上手くなる中、私だけ取り残されて……何度も泣きました」


「え、先生がですか?」


「ええ。あの時の悔しさがあったから、今はこうして剣を教える立場にいるけれど……今日、あなたのやり方を見て、昔の私にこれを教えてあげたかったなって、少し思ったんです」


先生の瞳が、少しだけ潤んで見えた。


その時、稽古場の外で見ていた生徒たちがざわめく。


「なんか今日、先生めちゃくちゃキレイに動いてない?」


「本当だ、先生の動きがいつもと違う……!」


その声に、先生は照れくさそうに笑いながらも、ちょっと胸を張ってみせた。


「これもあなたのおかげね」と、小さな声で言い、俺の方をまっすぐ見つめた。


「いや、先生の努力の成果ですよ」と返したが、内心は少しだけドキドキしていた。


精霊タンの声が、ふっと心の中に響く。


「な?整理整頓、万能だろ?」


「……たしかにな」


今日はきっと、掃除以上にすごいものを手に入れた気がした――。



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