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合理化は民を切ることか

会議室の空気は、どこか重苦しかった。

国の財政改革――その柱を担ってきた俺だが、近頃、さまざまな陰口が耳に入るようになっていた。

「やりすぎではないか」「冷酷ではないか」――そんな声が、特に貴族階級からささやかれているのだ。


そんなある日のことだった。

王の使者が、やや緊迫した様子で俺の執務室に現れた。


「クレスト殿、陛下がお呼びです」


予感があった。

ただの呼び出しではない――これは、貴族たちの不満がとうとう王の耳に入ったのだろう。


俺は席を立ち、机の奥から一通の巻紙をそっと取り出した。

これは、以前から密かに調べさせていた“念のための切り札”――不正を働く某侯爵の証拠書類だ。


「……やはり備えておくべきだったな」

独りごち、腰の巻物入れに収める。



王の謁見室。

高窓から差し込む陽光が、王の額を静かに照らしていた。

その表情は険しく、帳簿を片手にじっと俺を見つめている。


「……おぬしは“整理整頓”と“合理化”と申しておるがな、国というものは、民を養わねばならん。

この道が、かえって民を苦しめることにはならぬか?」


淡々とした口調だが、背後に緊張感が滲んでいる。

――やはり来たか。だが、俺は動じない。


静かに頭を垂れ、落ち着いて答えた。


「まことに、王のお言葉はもっともにございます。

しかしながら、私の行っている“整理整頓”とは、捨てることではございません。

“場所の再配置”にございます」


王の眉がわずかに上がる。


「再配置……?」


俺は一歩前に出て、視線を王に向けた。


「たとえば――王の寝室に、兵士たちの鎧や槍が無造作に置かれていたら、どうなさいますか?」


「な、なんじゃと。そんな物騒な……夜も眠れぬわい」


王が肩をすくめると、俺は頷く。


「まさにそれでございます。

王の御部屋には、王にふさわしいものだけを。

整理整頓とは、ふさわしい場所に、ふさわしいものを配置すること。

それは人にも物にも当てはまります。

結果として人が別の場所へと“移る”ことはあっても、それは“切り捨て”ではなく“適正配置”でございます」


王は目を伏せ、帳簿に視線を落としたまま口を開く。


「……しかし、おぬし、人員整理をしておるではないか。

貴族どもが強く不満を口にしておるぞ」


ついに本題がきた。


俺は一瞬だけ深呼吸し、あらかじめ用意しておいた巻紙をすっと差し出した。


「その件につきましては、こちらをご覧ください」


王は不審そうに受け取り、巻紙を広げる。

次の瞬間――その顔が、驚愕と怒りに染まった。


「これは、アクドイ家の記録ではないか!

賄賂、帳簿の改ざん、私腹の肥やし……許せぬ、なんと卑しき……!

これは人員整理などではない、家ごと粛清すべき案件だろうが……?」


その問いに、俺は一歩引いて深々と頭を下げた。


「そのご決断は、私が下すべきものではございません。

王のお考えひとつでございます」


謁見室の空気が張り詰める。

王はしばし沈黙した後、険しい表情で頷いた。


「……そうか。ならば、そうしよう。礼を申すぞ」


「はっ。光栄にございます」


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