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28話〜イルラント王国〜

「よーし!じゃあ出発ー!」

「おー!………お?」

エドの元気な声にノッたのはいいが、どこへ?学校へ行くとは言っていたけど、場所も何もかもが不明だ。

「……えっと、どこに?」

「え?学校。」

「いやいや、その場所だよ。」

よかった、みんなもわかっていない。イギリスにあるとは言っていたけど、エドは学校の場所覚えているのかな?何百年も前の話だって言っていたけど。

「えー?この本棚の裏。気づいてなかったの?」

考える間もなくえいっとエドが本棚をスライドさせる。だから2階の書庫にいたのか〜……ではなくて!

「はぁぁぁ!!??」

「なんでティーさんが一番驚いているんですか!?」

そして私たちよりさらに驚いていたのはデスティニさんだった。この家の主なのに。というか知らなかったのか。

「事故物件ってそういうこと……!いや、この家は神隠しに合うっていう噂があって、事故物件として安く売られてたんだ。」

な、なるほど……?というか事故物件買ったんだ、デスティニさん……

「大昔は地球に残った魔力持ちがこの家に住んでたんだけど……向こうに住んじゃったのかな?まあでもまた魔力持ちのところに戻ってよかったよかったー」

か、軽い……一般人がこれを見つけてしまったらどうするんだ?いや、そもそも見えないのか。魔力持ち以外は。

「ていうか学校って住むものなのか?」

「まあ寮もあるよ。でも学校の周りに都市があって、みんなそこで暮らしてる。まあ行ってみる方が早いよ!出発ー!」

「えっ、ちょ、エド!!」

本棚の裏に突如発生した謎の光に飛び込み、姿が見えなくなってしまった。そんな、未知の世界に軽弾みな……いや、エドは知ってるかもしれないけど……

「さっさといこーぜ。なんかもう謎現象には慣れてきた。」

クリスくんまで……やっぱりあの環境で生きて来たからなのか、肝が座っている。

「……行くしかないよな。こんなところにいても世界は取り戻せない。」

そう言い、ヨルが謎の光に手をかける。

「ちょっと待って!一緒に行こうよー!一人は怖い!!」

慌ててヨルの手を掴み、それにつられたように他3人も続く。

「うわっ!?」

ワープに似た浮遊感。でもワープよりは落ちていく感覚が強い。まるでホウキから落ちているような怖さに、気絶しそうになった。


「ん……?ここ……は……」

いつの間にか浮遊感は消え、しっかり地面に立っていた。今まで足なんて曲げていたはずなのに、しっかり足を伸ばして立っているとは。不思議だ。

「わあ……!!」

真ん中に大きなお城みたいな建物があり、紋章らしきものがデカデカと飾られている。そしてその周りには、沢山の住宅街と、商店街。地面はレンガで出来ていて、イギリスの風景と似ていた。

「この真ん中の建物が学校だよ。」

エドが隣から顔を覗き込み、教えてくれた。それにしても、魔力を持つ者が集まる星、カエムルよりも科学の星、地球の方の風景に似ているとは。服装も地球よりのようだ。とんがり帽子は被っておらず、ローブを着ている者も存在しない。それに、注目すべきは頭部だ。

「……ここ、グラマー族もディーア族も、一緒に暮らしているんですか?」

「そうだよー。まあ君たちみたいにあとからここにやって来た人も多いから、とんがり帽子を被っている人もいるけどねー。」

人々の頭部には、耳が付いている人、いない人。どちらも大勢いた。でも、争い合うこともなく、一緒に笑い合っている。

「……こんな日常が、カエムルにもあればいいのに。」

つい、ポツリとつぶやいた。こことカエムルは、何が違ったのだろう。同じようにグラマー族とディーア族が暮らしているのに、カエムルではあんなにも争い合って。

「……とりあえず学校に行こうか。ここは外から来た人でも、学校に入ることを受け入れているイルラント王国だよ!学費は無料だからね!」

そう言って中心に進んで行くエドの背中を追いかけた。ここでは、私がツキやセイと仲良くしていても、何も思われないんだ。

「あれ?校長せんせー!」

「……ん?お前はまさか……リュイか?」

エドが『校長先生』と声をかけた相手は、長い髭が生えた年配の方。しかし『リュイ』とは……?

「あれー?そんな名前だったけ。まあいいや。数百年ぶりだねー!」

数百年ぶり……ということは……もしかして、この人も宝石……!?

「校長も宝石だったんだねー!ボク、今は『エド』っていう名前で呼ばれてるんだー」

「不思議な生徒だとは思っていたがまさか同じ宝石だとは……と、そちらの方々は?」

『校長』と呼ばれたその年配の方がこちらを向く。宝石。ここに来ていきなり、会うとは。

「もしかしてこの人も初代……ですか?」

「いや、私は会ったことがない。2代目か3代目そこらだろう。」

どうやらルシファー様は会ったことがないらしい。しかしかなりの年数を生きていることは間違いなさそうだ。

「あんたも宝石なんだろ?俺はオパール。名前はクリス。年齢は見た目通り。俺は『普通の暮らし』をするためにここに来た。」

「……『普通の暮らし』……そうか、苦労してきたのだな。」

……。さて、次は私たちの番だ。毎度思うが説明が長い。カエムルのことを知っているといいが。

「……俺が代表して話します。まず……カエムルという星はご存知ですか?」

どうやら校長先生はカエムルという星の存在は知っていたらしく、クリスくんに説明するよりかは話が早かった。しかしそれでも長い長い経緯を、ヨルが口にするのだった。


「なるほど……国の復刻のために……」

この瞬間はいつも緊張する。今までの3人は案外すんなり受け入れてくれたが、ここで『嫌』とはっきり言われる可能性だってあるのだ。

「イルラント王国としては、よっぽどの理由がない限りここに来た者を拒むことはできない。君たちはこれからイルラント学校に入り、残りの宝石を探すのだろう?ではイルラント学校の生徒として、誠意が伝われば私も協力するとしよう。」

……!つまり協力してくれる見込みはありそうだ。ここはもう、学校で残りの宝石を探しながら本気さを伝えていくしかない。

「ねー、そういえば校長は100年以上ここにいて何か言われないの?」

「100年ごとに辞めては就職、を繰り返しているからな。では手続きをしよう。私について来てくれ。」

そうして私たちは、国の中心にある大きなイルラント学校へと足を進めた。


「まずは……そうだな。どの学年に編入するのか聞きたい。おおよそでいいので年齢を教えてくれ。」

まるでお城のようなエントランスを抜け、校長室に案内される。この国ではほとんどがこの学校の卒業生で、この学校は国のシンボルのようなものらしい。

「わ、私とヨルは今年で13歳。」

「私は15歳。」

「16あたりかな。」

「17か18ですかね。」

「……たぶん12か13。」

思ったより年齢はっきりしない人多かったな。まあキラは奴隷育ちだったしセイは年数を数えられる状況じゃなかったしクリスはスラム育ち……しょうがない。

「なるほど……ではクリスは初等部6年、ホシとヨルは中等部1年、ツキは中等部3年、キラは高等部1年、セイは高等部3年でいいかの?」

みんな黙って頷く。でも、改めて学校か。カエムルでは、7年生はほとんど経験できなかったからな。どんなことを学ぶのだろう。

「あとは寮なのだが……基本は二人部屋だ。男子寮はまだ空きがあるので二部屋使ってもらって構わない。」

「じゃあ僕一人でいいですよ。夜とか電気付けちゃうかもしれないので。」

というわけで男子はヨル、クリスで二人部屋、セイは一人で使うようだ。

「あとは女子寮なのだが……空いてる部屋が一部屋しかなくてな。一人はすでに誰かがいる部屋に入ってもらうことになる。」

……む?そうなると話が変わってくるぞ。1人部屋になるならまだしょうがないで済ませられるが知らない人がいるとなるとツキかキラと一緒がいい。

「「「グッとパーであーわーせ!!」」」

最終的に運に任せることになった。さて結果はいかに。

私。グー。ツキ。パー。キラ。パー。

「やったー!よかったー!」

「ツキと一緒かー!、よろしくー」

「うっそ〜〜!!!」

ショック。いきなり知らない人と同室。ああ、いきなり学校生活が不安になってきた。

「……まあ、一緒になる子は君たちと同じ外から来た子だ。多少話は合うだろう。」

うう……でも、ツキかキラと一緒がよかったよ……寂しいよ……

「い、いつでも部屋に来ていいからね!」

「そうそう!部屋は隣みたいだし!」

二人の優しいフォローを聞きながらもやはり気持ちは落ち込んでいた。

「あとは……そこの3人はどうする?」

校長が目配せをした場所には、ルシファー様、エド、デスティニさんの3人。この3人は精神的に大人だし、生徒にはなれないのだろうか。

「あー、俺はこんなに近いなら家に戻るわ。何かあったら遠慮なく呼びつけてくれ。」

最初にデスティニさん。……凄く近かったからね。30分もかからない距離。

「ボクたちはどうしようねー。もう一回生徒になってもいいけど……」

「教師が不足しているんだ。よければそちらを手伝ってくれないか?」

「えー!いいよー楽しそー!」

「私もそれで構わない。」

3人の処遇も決まったそうだ。

「そういえば使い魔は?授業とかはどこかに預けなきゃいけないんですかね?」

少し気になったことを聞いてみる。カエムルでは基本使い魔は学校にある待機場所で待機か、家にいるかだったけど。ちなみにネクは送り迎えだけ来てくれて、授業中は家に戻っていた。

「そうだな。授業中は寮に居てもらうことになる。ただ、授業中以外は自由にしてもらって構わない。」

その辺はカエムルと同じか。しかし使い魔がダメなところではなくてよかった。私はもうネクなしでは生きていけない。

「寮の手配にも時間がかかるし、学生証も作らなければならない。今日の夜までには入れるようにはしておくので夜まで街で時間を潰していてくれないか?」

「お!やったー。なんかスイーツ食べようよ!」

「いいね!甘い物食べたい!」

街に行く、にいち早く反応したのはツキとキラだった。スイーツか。私も食べたいな。パフェとかケーキとか……今まで食べられなかったものまで……

「あ、でもお金ない。」

あ。前にデスティニさんから貰ったお金は地球の通貨だし、色々な国のお金がバラバラに残っている。

「地球の通貨があるのならば換金しますよ。」

「お!じゃあ今日は俺が奢ってやるよ!換金お願いできますか?」

デスティニさんが嬉しそうにお金を換金しに行ってしまった。な、なんか悪いな……

「ほらお前ら、今までずっと隠れて歩いて来たんだ。今日は堂々と楽しく買い物するぞ!」

堂々と。こんな娯楽のために町を歩くのも何ヶ月ぶりだろう。王国騎士団から隠れなきゃとか、ここではそういうことは考えなくていいんだ。

「よし!行くぞー!」

換金が終わったらしいデスティニさんに、私たち5人は嬉しそうについて行った。

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