ミモザの少女のその後の話
ある外洋船でのお話です
そのお船で歌を歌う事を
仕事にしていた娘が居ります
遠い昔に外国の兵士に
連れ去られて行った娘だと言います
娘は綺麗なソプラノで
恋の歌を歌いました
見た目はすっかり金髪で
緑色の透明な瞳をしていました
彼女を慕う船乗り達は
故郷に妻を持つ者以外
何時か彼女に言い寄ろうと
虎視眈々と狙って居ました
だけど牽制し合うばかりで
恋敵達は言い出せずに居ました
自分達が色恋を唱えなくても
ミモザ娘は毎日
夢のような恋の歌を歌うのですから
船の男達は
すっかり満足して居たりもしたものです
ある国の港に停泊した時
不審な手紙が届けられました
「三月二十日の二十四時 ミモザの娘をもらい受けよう」
そう書かれていた手紙には
「N」と言う花文字を飾った名刺が
ひらりと一枚同封されていました
犯行声明を受け取った船乗り達は
ミモザ娘を守ろうと
必死になっておりました
武器を構えて目くじらを立てて
不審な者を海の上の要塞に
居れてはならじと身構えていました
遠くの海をあちこち見回していた船乗達は
もう船の中にニャンセーヌスが潜んでいるとは
思ってもみなかったのです
「こんばんは 素敵なお嬢さん」
人間みたいに大きな猫は
ミモザ娘に声をかけます
「こんな狭い船倉に一人っきりでは
さぞ寂しい事でしょう」
ミモザ娘は答えます。
「ええ とってもとっても寂しいわ」
大きな猫はこう続けました。
「それなら いっそ私の国に来ませんか?
どこもかしこも動物しか居ませんが」
ミモザ娘は目を輝かせました
「まぁ 何て素敵な事でしょう
そこでなら 私普通に話しても良いんですの?」
「勿論ですともお嬢さん」
そんなやり取りをした後
ミモザ娘は大きな猫に連れられて
海にぷっかり浮かんでいた
潜水艦に乗ったのです
ミモザ娘の消えた部屋には
「N」と花文字を描かれた名刺がひらり




