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終焉への反抗者《レジスタンス》Ⅱ  作者: 獅子王将
おてんば娘な後輩
20/45

第19話『クローン吸血鬼の再来』

第1部、第2部ともにブックマーク増えてました。

ありがとうございます。

そして更新相変わらず遅れてすいません…

遺跡の中を駆け上がる〈莉緒小隊〉。

そして道を阻む、大量のガーゴイルたち。

将真たちはそれを、容易く蹴散らしていく。


(前よりだいぶ楽だ……。これなら行ける!)


そう思ったのは莉緒も同じらしく、リンにペースを合わせながらも、2人の勢いは少しずつ増していく。

以前、初めて受けた遺跡探索の任務は、ここより難易度がかなり高いはずだが、遺跡の中では危険度が低いと言われていながら、この遺跡も十分危険なようではあるが。

倒しても倒しても湧いて出てくるガーゴイルを鬱陶しく思いながらも、その事から、遺跡が死んだ訳では無いということがわかる。


層が上がると共に、やはりガーゴイルの数は増えたが、莉緒とリンが応戦する中、将真はふと思いついたことを試してみることにした。

そもそも、今まで思いつかなかったことが不思議なくらい、シンプルな魔術を。


「__よし、2人とも、そこ開けろ!」

「えっ」

「何する気っすか!?」

「見ればわかるっ!」


将真の意図が読めないながらも、指示に従い道を開けると、将真が思いっきり振りかぶり、何かを投げた。

投げ飛ばされたそれは、魔力の塊だ。

そしてそれは、〈炎弾〉のような基礎魔術に酷似していた。それこそ、違う点は属性くらいしかない程度に。


ガーゴイルに向かって一直線に飛んでいくそれは、直撃によって威力が落ちる__ことがなく、触れたガーゴイルを木っ端微塵に吹き飛ばしながら、壁にぶつかり爆発した。


「むう、やっぱ制御簡単じゃないな」

「ちょ、将真くん今のって……」

「あー、んー……。言うなれば〈魔弾〉?」

「ちょっと待つっす、魔属性魔力っていうのは、そういう細かいコントロールには向いてないはずなんすけど」

「ちょっと〈炎弾〉を想像しただけなんだけどなぁ」


そう言うと、再び掌の上に同じもの__将真曰く〈魔弾〉を生成して、同様に投げ飛ばす。

魔属性魔力の塊ということもあって、大きい訳では無い攻撃が、凄まじい威力になっていた。それなりに頑丈なはずのガーゴイルが、まるで紙切れである。


そしてこの魔術、将真への負担が少ないことに、自身で気がついた。さらに彼の魔力量は相当なものであり、つまり、将真は便利な攻撃魔術を、咄嗟の思いつきで手にれたのである。


(イメージがあったとはいえ、ぶっつけ本番で成功させるとか、相変わらず飛んでもない学習能力っすね……)


とはいえ、それは喜ばしいことではあった。

何せ、将真の攻撃は威力が高すぎる上に、魔属性魔力は制御が難しく、抑えることも相当ハードだった。場合によっては、自身の攻撃で自身を傷つけることも珍しくはないくらいに。

だが、今回将真が習得したのは、威力は高いが高すぎず、タダでさえ魔力の多い将真が低コストで発動できる魔術だ。そこらの有象無象はこれだけで一網打尽に出来るだろう。


(これがちゃんとした肉体を持つ魔族や魔物だったら……、肉塊やら血飛沫が飛び散るんだとは思うっすけどねぇ。使い方は少し相談しておいた方が良さそうっすね)


思わずグロテスクな想像をしてしまった莉緒は、口元を軽く覆いながら、頭を振って嫌な想像を振り落とす。


ともあれ、3人は今までにない速度で敵を薙ぎ倒し、ついに第5階層に到達した。

だが、肝心の〈ブレイン〉が出てこない。


「……なんで出ないんだ?」

「もしかして、遺跡の機能が停止したんじゃ……」

「いや、ガーゴイルが普通に動いてるってことは、遺跡の防衛機能自体は普通に生きてるはずなんすけど……」


悶々と考える〈莉緒小隊〉。

その時、先へと続く階段の方から爆発音と、それにより発生したのであろう煙が立ち始めた。


「な、何……!?」

「なんか来てるのか!?」

「見たいっすね……、来るっすよ!」


そして、莉緒が言うように、立ち込める煙の中から飛び出してきた人影が1つ。

だが、それはよく見ると敵などではなく__


「……空ちゃん!?」

「えっ……、リン先輩!?」


帰ってこないと聞いていた空だった。

おそらく捕まっていたのだろうと予想されていたが、逃げてきたのか、その背後からどんどん、見覚えのある少女達が空を追っていた。


「えっ、ちょっと待って、あれって……!」

「紅麗さんのクローン吸血鬼じゃないっすか!」


〈莉緒小隊〉が動揺している中で、空がリンの胸に飛び込んできた。

確かにリンの方が先輩ではあるが、体格的にはやや空の方が大きいため、少し違和感のある光景ではあるが。

そしてその結果、クローン吸血鬼たちの攻勢に対応出来ないリンの前に、莉緒と将真が飛び出していく。


「〈日輪舞踏〉__“三輪華”!」

「〈黒断〉!」


2人の得意とする今日攻撃により、莉緒が駆け抜けた場所の直線上にいた者と、将真の斬撃の範囲にいた者。その全てが一撃で切って落とされた。

さらに、将真の付近まで降りてきた莉緒が、宙に浮いたまま将真に向かって叫ぶ。


「将真さん、剣の腹で足場!」

「……何する気だよ!」


言いながらも、将真は指示に従い、莉緒に向かって剣を振り抜く。勿論、剣の腹の方で、だ。

そして莉緒は、そこへ上手く足をつけ、振り抜かれる勢いと共に足場を蹴り、急加速で一気にクローン吸血鬼たちの密集地帯へと突入した。


「……っておい、馬鹿野郎!」


状況を理解した将真は思わず声を荒らげてツッコんだ。危険を冒しているわけだから、無理もないのだが。

対する莉緒は、落ち着いたものである。

その中心地で、手を上に掲げると、掌に炎の球が生成される。

但しそれは、〈炎弾〉ですら比べ物にならない、太陽と見紛うばかりの見た目をした、超高密度な火属性の魔力体だ。


「〈日輪舞踏〉__“太陽降臨サンシャイン”」


言葉と同時に放たれたそれは、一瞬で周囲のクローン吸血鬼たちを蒸発させ、ギリギリ圏外だったクローン吸血鬼たちも大火傷で動きが鈍っていた。

魔力だけでなく、炎にもある程度の耐性がある制服でなければ、今頃将真たちも大火傷を負っていたかもしれない。

そしてその一撃は、最後に熱風を残して消滅した。


「いやぁ、やってみるもんっすねぇ。咄嗟の思いつき」

「いや、危ねーよ、超危ねーよ!」

「もー、2人とも落ち着いてよー。2人のおかげでとりあえず窮地は脱したんだしいいじゃん」

「まあそうだけど……」


慌てていたのは将真だけだったが、彼も落ち着きを取り戻して思考を切り替える。

今回、何より大事なのは、〈空小隊〉の安否だ。


「空ちゃん、とりあえず1回どいてもらっていい? このままじゃお話もできないし……」

「先輩……」


リンが困ったようにいうと、空が顔を上げた。その表情は歪んで、今にも泣き出しそうだった。

空の尋常ならざる様子に、〈莉緒小隊〉は思わずたじろぐ。


「ちょっ、どうしたの空ちゃん?」

「……助けて、下さい」

「そ、それは今……」


丁度今、空を助けたところだろう。そう思い、それを口にしようとして、空が頭を振る。


「お願いします……。陸と海を、助けて……!」

『っ!』


その言葉を聞いて、将真たちは気がつく。空1人が追われていたという状況に。




それから、将真たちは現在に至るまでの状況を聞いた。

結果としてわかったのは、空の無謀な行動により、魔王軍が来ていることと、ここへ来た目的を知ることが出来た。

出来たのだが……。


「どうして、そんな無茶したの?」

「り、リンさん? 少し落ち着きましょう顔怖いっすよ」


珍しくリンが、強い憤りを感じていた。

思わず、空の頬を引っ叩くくらいには。


「リン、らしくないぞ。深呼吸でもして……」

「将真くん。これでもボクは、いつにも増して真剣だよ」


リンの強い意志を感じる目に、将真は思わず顔を背ける。

勿論、巫山戯ているなどとはこれっぽっちも思ってはいない。だが、将真にとっては鬱陶しい後輩でも、リンにとっては自身を慕う、大切な後輩なのだ。

将真は、そのあたりを見誤っていた。だから、リンがここまで真剣に怒るところは、見たことがなかったし、想像することもなかった。


「……ごめんなさい。私が、自惚れて……、陸と海は、私を1人にするわけには行かないからって、私の無茶に付き合って……」

「ちゃんと、学園長が言った通りにすれば、無事に帰ってこれたはずだよね? ボク達の遺跡探索の時の話、聞いたでしょ?」

「リンさん、とりあえず今はその辺にしとくっすよ」


懺悔するように吐露する空に、さらに責めるようにリンが詰め寄る。それを莉緒が、1度止めた。


「急がないと、陸さんと海さんが危ないっす。今まさに、残りの吸血鬼たちを塞き止めてるところなんすよね?」

「そ、そうです……」

「それなら早く行こうぜ。手遅れになる前に」

「……うん。そうだね、急ごう」


スっと立ち上がり、〈莉緒小隊〉と空の4人は、奥へ続く階段を登ろうと足を踏み出す。

次の瞬間、クローン吸血鬼たちの第2陣が、その奥から転がり込んできた。


「蹴散らすぞ!」

「うん!」

「勿論っすよ!」

「わ、私も行きます!」


それぞれ、〈武器生成魔法〉を使うと、少し急くように4人は駆け出した。




「海、何体通した!?」

「分からないけど……、流石にそろそろきついかな」


途中まではほんの数体程度で済んだものが、やがて少しずつ手が追いつかなくなり、遂に何十という数が、当たり前のように2人の背後を通り抜けていく。

その事実と、自身の魔力残量が少し危なくなりつつあることに気がついた2人は、少し苦しい笑みを浮かべた。


ただ、ここで塞き止める。それだけの事が、ここまで困難だというのは、流石に予想していなかった。


そして、この騒動の原因である高位魔族〈マッド〉の〈嫌悪〉は、感心したように手を叩いていた。


「凄いな、最近の学生はここまで戦えるのか。今はこちらに戦闘の意思がないとはいえ、随分やる。素直に驚いたぞ」

「よく言うぜ、お前は全く動いてないくせによ……」

「まあ、そのおかげで最低限助かっていると思うと文句も言い難いけどね……」

「そんなお前達に、朗報だ。聞きたいか?」

『……朗報?』


敵からそんな事を言われたのだから、陸と海は訝しげな表情を浮かべて顔を合わせる。

あまりいい予感はしないが、聞いたからと言って彼らに不都合はない。新たな情報が引き出せるかもしれないし、朗報というくらいだから、悪い知らせではない……と思われる。

情報を持ち帰ることが出来るか、という話はこの際なしにして。


「……聞くよ。何を聞かせてくれるのかはわからないけど」

「__お前達を置いて逃げ出したあの少女だが」

「ちょっと待て。あいつは逃げ出したわけじゃねぇ!」

「細かい所にこだわるなよ。俺は彼女の名前を知らんのだ。話を戻すが、どうやら彼女、遺跡の中で魔導師と接触したようだ」

『なっ……』


その告げられた現状に、2人は思わず驚いた。

勿論、助けを呼んでもらうつもりだったが、あまりに早すぎたのだ。


「まあ信じる信じないは、お前達の自由だが」

「……なあ、海。俺らってやっぱ、まだガキなんだな」

「何を言うかと思えば……。そうだね、その通りだよ」


2人の表情が、僅かに明るくなった。

嘘かもしれない。だが、その話が本当なら、自分たちが助かる可能性も出てくる。

確かに、学生にしては強く、〈星宮家〉の一員である彼らは大人びているが、それでもまだ、子供なのだ。


目の前の希望に、救われた気持ちになるのは無理もないことだった。


「誰が来てくれたかは分からねぇけど……」

「うん。それまでは__持ちこたえてみせる!」

「そうか。ではあとひと踏ん張り、頑張ってもらうぞ」


覇気の戻った2人を前に、〈嫌悪〉は楽しげな笑みを浮かべる。

そうして彼は、クローン吸血鬼たちに指示を出す。

すると先程までは、2人を無視して空を追っていた彼女が、2人に敵意を向けた。


限界が近い陸と海に、数の暴力が降りかかる__。

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