今日から僕は 167
「鈴木。あまさき屋大丈夫だったか?」
嵯峨は気分を変えるべくリアナに尋ねる。
「大丈夫でしたよ。完全貸切OKです!」
にこやかなリアナの笑みで、脱力していたその場の雰囲気が和んだ。
「これってやっぱり神前君の機体?かっこいいけど明華ちゃんはどう言ってるの?」
リアナが苦笑を浮かべている島田を見た。
「ああ、本人がどうしてもこれでいいなら作業にかかるとのことです」
そういい終わると大きなため息をつく島田。
「アタシももっと色々描こうかな……」
「お願いだから止めてくれ」
つぶやくシャム、いつの間にか後ろに立っていた吉田が突っ込みを入れる。
「ワシはどうでもいいが」
続けて入ってきた明石は野球部のユニフォームを着ている。
「写真取ったら子供等に見せるのにいいですね」
無関心そうにシンがそう言った。
「馬鹿がここにもいたのか」
呆れるマリア。
「ずいぶんとにぎやかになったねえ。茶でも入れるか?島田、サラ、パーラ。頼むわ。茶菓子は確か……」
ごそごそとガンオイルの棚を漁り始めた嵯峨。
「いいですよ!食堂で何か探しますから!」
島田はそう言うと、サラとパーラを伴って消える。
「隊長。でもあまさき屋だとカラオケ出来ませんわよね?」
「鈴木……お願いだから自重してくれ」
「は?」
間抜けなやり取りの嵯峨とリアナ。
「アイシャ。今日は研修ないんやろ?守備練習、きっちりやるけ、覚悟しとけや」
明石のその言葉に肩をすくませるアイシャ。
「明石中佐。シュートとスローカーブを試したいのですが」
話題に合わせてカウラがそう言う。
「そうやな。神前の。すまんがバッターボックス立ってくれや」
にこやかに了解する明石。
「はい茶菓子ですよ!」
サラが徳用の煎餅とポテトチップスを持ち込んでくる。
「それヨハンのじゃねえの?」
そう言いながらもすでにポテトチップスの袋を確保する要。それを横目に煎餅を取るシャム。
要が袋を開けると、カウラとアイシャが申し合わせたかのように袋に手を突っ込む。
「はあ」
誠はため息をついた。
遼州保安隊。実働部隊第二小隊。
そこでの神前誠特技曹長の生活が始まった。




