今日から僕は 166
「それよりアイシャ。いいのか?今から出ないと艦長研修の講座に間に合わないんじゃないのか?」
嵯峨が頭を掻きながら言った。
「大丈夫ですよ隊長。ちゃんと軍本部からの通達がありました。今日の研修は講師の都合でお休みです」
「なんだよ。打ち上げ来るのかよ」
「要ちゃんなんか文句あるの?」
馬鹿騒ぎの好きな要の言葉に釘を刺すアイシャ。
「別に」
要が頬を膨らましている。
そこに島田が大き目の書類を持って現れた。
「神前います?」
「ああ、そこに立ってる」
呆然と立ち尽くしている神前に、島田がよく見ればステッキを持ったフリルの付いたドレスを着た幼女の絵が描かれたイラストを見せた。
「お前、確かに5機以上の撃墜スコアでエース資格と機体のマーキングが許可されるわけだが……」
全員がその絵を覗き込む。
「これってラブラブ魔女っ子シンディーちゃんのエミリアちゃんじゃない!」
素っ頓狂な声で叫ぶシャム。
「あえてパロディーエロゲキャラ。そして楽に落ちるヒロインを外してツンデレキャラを選ぶとはさすが先生ね」
アイシャは腕組みして真顔でイラストを眺める。
「駄目ですか?」
誠はそう言うと嵯峨のほうを見る。明らかに呆れるを通り越し、哀れむような眼で見つめる嵯峨。
「神前。お前って奴は・・・痛いな」
呆れてそう呟く要。
「それでこれが塗り替え後の完成予定図」
島田はもう一枚の05式の全体図を見せる。そこには誠のお気に入りのアニメキャラクターやそのロゴが一面に描かれている。
「却下だ!却下!こんなのと一緒に出動したらアタシの立場はどうなるんだ!」
「いいんじゃないのか?」
さすがに全否定で半分冗談で出した機体のマーキングを認められてしまった。一気に場が凍りつく。その言葉を発したのはカウラだった。
「お前なあ、こいつを小隊長として指揮するんだぞ?」
要が恐る恐る切り出す。
「別に機能に影響が出なければそれでいい。第二次世界大戦のドイツ空軍、ルフトバッフェのエースパイロット、アドロフ・ガーランド少将は敵国のアニメキャラクターのマーキングをした機体を操縦していた事は有名だぞ」
淡々と言うカウラ。
「じゃあ小隊長命令と言う事でいいですか?」
恐る恐る島田が要に尋ねた。
「いいわけあるか!神前!お願いだから止めてくれ!」
悲鳴にも近い声を上げる要。
「なに騒いでるの……まあ!かわいい!」
闖入してきたのはリアナだった。本当にうれしそうに島田の手からキャラクターのイラストを奪い取ると眼を輝かせて見入っている。
「もしかしてこれ描いたの誠君?凄いわねえ、お姉さん驚いちゃった!」
全員の視線が、誠に突き刺さった。




