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今日から僕は 160

「何かが足りないな」 

 要は誠からアイシャを引き剥がしてそう言った。

「何が足りないの?」 

 急に後ろで声を聞いて要は明華に気がついた。

「またあんた仕掛けをして神前を潰す算段でもしてるんでしょ?」 

「姐御。酷いですよ!アタシだってそんな何度も同じ事しませんし、リアナお姉さんがいたら何かしてたらすぐにばれるじゃないですか」 

「そうよ。あんまり度を過ごした羽目の外しかたは社会人失格よ!」 

 誇らしげに言うリアナだが、その場の全員が何時もの電波演歌リサイタルを経験しているので、無性に突っ込みを入れたくなるのをようやくのところで我慢していた。

「それはそうと肉食べないと損よ」 

 そう言うと明華は吉田が一人でなぜか豆腐ばかりを放り込んでいる鍋の方に向かう。

「シャム。どんだけ肉食った?」 

 要が恐る恐るそう言うと、シャムは後ろめたそうなしぐさをした。

「無えじゃねえか!シャム!全部喰っちまったのか?」 

「だって煮すぎたら硬くなっちゃうよ!」 

「馬鹿!全部突っ込む必要なんて無いんだよ!こいつの分ぐらい残しておけよ!」 

 親指で誠の事を指差しながら要がシャムを怒鳴りつける。

「怒鳴るなよ。おい、俺達そんなに喰わねえから、こっから取れや」 

 嵯峨がそう言うと肉と野菜が半分ぐらい残った皿を指差す。 

「シャム。お前がもってこい」 

「了解!」 

 シャムはパシリの様に嵯峨から皿を受け取ってくる。

「いいか、シャム。こいつは神前のものだ。お前はあまったのを喰え」 

「うん、わかった!」 

 そう言いながら誠が具材を入れるのを必要以上に熱心に見つめるシャム。 

「ナンバルゲニア中尉。食べますか?」 

 その視線に負けてつい口を滑らす誠。

「駄目だ。こいつは散々食い散らかしてるんだ。全部、神前が喰え」 

 要はそう言うと誠と一緒に具材を空の鍋に入れていく。

「私も駄目?」 

 さりげなくアイシャがそう口を挟むが、殺気を帯びた要の視線に退散する。

「もう春菊とかはいけるんじゃないか。取ってやろうか?」 

 正直、そんな態度の要は信じられなかった。誠はまじまじと要の顔を見つめる。

「あのな。お前殆ど喰ってないだろ?」 

 誠はとりあえず自分の皿を渡す。

「もう肉も行けるだろ」 

 そう言うと要はせっせと煮えた具材を誠の皿に盛り分けた。



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