今日から僕は 150
「はいはーい!どいてくださいよ!先生。お席のほうが出来ましたのでご案内します!」
そこにいつの間にか現れて、誠をさらっていこうとするのはアイシャだった。
「おい!いつの間にわいたんだ!」
「卑怯者!誠の担当は私だ!」
要とカウラが飄然と現れたアイシャに噛み付く。
「だって二人ともこれから決闘するんでしょ?じゃあ先生はお邪魔じゃない。だからこうして迎えに来てあげたってわけ」
『そんな理屈が通用するか!』
二人は大声でエレベータに向かおうとするアイシャを怒鳴りつける。
「クラウゼ大尉!三人で連れてってやったらどうです?」
「西園寺さん!良いじゃないですか!」
「酷いよねえ。神前君って三人の心をもてあそんで」
「そう言うなよ。戻ったら菰田さんにつけ狙われるんだから。それまで楽しんでろよ」
「新入りの分際で!」
周りのブリッジクルーの女性陣、技術部の男性部員からブーイングが起きる。
「黙れー!」
瞬間湯沸かし器、要が大声で怒鳴りつける。
「じゃあ、行くとするか。西園寺、アイシャ。ついて来い。大丈夫か誠。一人で立てるか?」
誠はすさまじく居辛い雰囲気と、明らかに批判的なギャラリーの視線に耐えながらエレベータに乗り込む。
「それにしても初出撃でエースってすごいわよねえ。これじゃあさっきのニュースも当然よね」
「何があった?」
相変わらず機嫌の悪い要がアイシャに問いただす。
「同盟会議なんだけど。そこで先生みたいな力のある人の軍の前線任務からの引き上げが決まったのよ。アメリカ、中国、ロシアはこれに同調する動きを見せているわ。まああんなの見せられたらさもありなんというところかしら」
「その三国は既にこの状況を予想していた。言って見れば当事者みたいなものだからその動きは当然だな。しかし他の国が黙っていないだろう」
カウラはヨハンの話を聞きある程度予想したその政治的な結末を淡々と受け入れた。
「一番頭にきてるのはアラブ連盟ね。西モスリムが同盟会議の声明文に連名で名を連ねているものだから、クライアントとしては騙されたとでも言うつもりでしょう。それとフランスとドイツが黙殺を宣言したし、インド、ブラジル、南アフリカ、イスラエルもその動きに同調するみたいよ」
「まるで核兵器開発時の地球のパワーゲームみたいだな。もっとも今度のは下手な核兵器よりも製造が簡単で、持ち運ぶも何も足が生えてて勝手に歩き回るからな」
アイシャの解説を聞いて、要はようやく冷静に現状分析を始めた。




