今日から僕は 139
「数だけは一丁前かよ」
要は撃ちつくしたライフルを捨てて、格闘戦用のダガーを抜いた。
相手にした10機の火龍。
うち6機は落としていたが、残弾はもう無かった。
駆逐アサルト・モジュールらしく距離をとったままじりじりと迫る敵。
「終わる時はずいぶんとあっけないもんだな」
思わずもれる強がりの笑み。
そして浮かぶ誠の顔。
「こんな時に浮かぶ顔があいつとは。アタシも焼きが回ったな」
ダガーを抜いた状態。
捕捉されれば全方向から中距離での集中砲火を浴びるのは間違いなく、頑強な05式の装甲も持たないことはわかっていた。
『新入り!先に逝くぜ』
覚悟が決まり敵中へ突撃をかけようとしたとき、奇妙な空間が要の目の前に広がった。
「なんだ?」
死の縁を歩くのに慣れた要の頭の中は瞬時に現状の把握に向かった。
白銀に輝く壁のようなものが要の前に展開している。
敵はこちらが動いたと勘違いしたのか、壁に向かって集中砲火を浴びせるが、すべての敵弾はその鏡のようなものの中に消えていった。
敵が驚いて統率の取れない射撃を始めたということから、少なくとも敵ではないことを要は理解した。
『僕が囮になります!今のうちに後退を!』
要の頭に直接話しかけてくる声。
誠のその声に何故かほっとして肩の力が抜ける要。
「おいおい、誰に話してるつもりだ?オムツをつけた新入りに指図されるほど落ちぶれちゃいねえよ。敵さん二機は確認した。後はオメエが勝手に食え!」
そう言うと要は誠機に着弾した敵弾のデータを解析したもののうち、手前の二機、固まっている火龍に向け突撃をかけた。
火龍のセンサーは自分で撒いたチャフによって機能していないのは明らかだった。
「馬鹿が!いい気になるんじゃねえ!」
目視確認できる距離まで詰める。
ようやく気づいた二機の火龍だが、近接戦闘を予定していない駆逐アサルト・モジュールにはダガーを構え切り込んでくるエースクラスの腕前の要を相手にするには遅すぎた。
「自殺志願者が!とっととくたばんな!」
すばやく手前の機体のコックピットにダガーが突き立つ。
もう一機は友軍機の陰に隠れる要の機体の動きについていけないでいる。
「悪く思うなよ!恨むなら馬鹿な大将を恨みな!」
機能停止した火龍を投げつけながら、その影に潜んで一気に距離を詰めると、要は二機目の火龍のエンジン部分をダガーでえぐった。
『誠!生きてるか!』
要がそう思った時、急に青い光がさしたのでそちらを拡大投影した。
誠の機体から青い光が伸び、すばやく切り払われた。
三機の火龍がその光を浴びて吹き飛ばされていた。
そしてその中央で青い光の筋に照らされながらふり返る灰色の神前機。
「マジかよ」
息を呑みながら要はその有様を見ていた。




