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122/167

今日から僕は 122

「変なの」 

 サラは食べ終わった自分の鮭定食を片付けながらそう言った。

「アイシャが変なのはいつもの事でしょ。島田君もそう思うわよねえ」 

「まあ、そうっすねえ。でも昨日は神前と飲んでたんでしょ?おい、誠!なんか覚えてる事ないのか?まずいこと言ったとか……ってお前にゃあそんな度胸は無いか。じゃああれだ西園寺中尉が……」 

「アタシがどうかしたのか?」 

 冷や汗をかきながら島田が振り返る。

 その真後ろに要が立っていた。

「いや、その……クラウゼ大尉の調子が変だったもので」 

「なんであの腐ったのが変なのはアタシのせいなんだ?ちゃんと説明してもらおうじゃねえか。なあ?島田曹長」 

 島田の助けを求める視線がサラに向かう。

 すると要はサラのほうを見つめる。

「要ちゃん。誤解だよ」 

「ふうん。まあいいや。それより島田。カード忘れてきたから奢れや」 

「またですか?仕方ないですねえ」 

 渋々ポケットからカードを取り出すが、反面、島田は安心しているのが誠にも分かった。

「天ぷら定食にでもしようかねえ」 

「それはないっすよ、西園寺さん。俺だって今月結構やばいんですから!」 

 一転して焦っている島田。

 天ぷら定食は食堂でも一番高いメニューだった。

 それ以前に要がカードを返すかどうかさえ怪しい。

「いいじゃねえか。後先考えずにバイクの部品ばっか買ってるからそうなるんだよ」 

 そう言うと要は食券を買いに行く。

「要ちゃんは元気だね」 

「あの人が元気な時はろくな事ねえからなあ。神前、もしここでカード返してもらえ無い時は回収頼むわ。何故かお前の前では素直だからな。犬っころも」 

「聞こえてんぜ!島田!誰が犬っころだ!なんなら3人前くらい頼んでやろうか!」 

「中尉!やめてくださいよ!」 

 島田の悲鳴が食堂にこだまする。

 列を作っていた警備部の隊員が笑いを漏らす。

「正人。本当にお金ないなら貸そうか?」 

「サラ。甘やかしちゃだめよ。自分の収入と支出のバランスも取れないなんて社会人失格なんだから」 

「パーラさんきついですよそれ」 

 半分なきながら島田は牛丼を口の中にかきこんだ。

「島田曹長!」 

 通る女性の声が四人を引きつける。

 そこにはマリアが立っていた。

「とりあえず西園寺から取り上げたからカードは返すぞ」 

 島田の前にカードを置くと、マリアは食券を買うための列に戻っていく。

「助かった」 

 どんぶりを置き、マリアに敬礼した後、島田はそのまま机にどっと伏せた。

「良かったですね先輩」 

 安心しきっている島田に声をかける誠。

「良かった。明後日、給料日だろ?これでフロントサスの予約取り消さずに済む」 

「やっぱりお金貸そうか?」 

「だからサラ!甘やかしちゃだめ!」 

 サラとパーラの滑稽なやり取りに思わず誠は声を出して笑った。


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