今日から僕は 111
「ベルガー大尉!」
緑色のポニーテールを追って誠はその後に続いた。
「カウラでいい。この部隊の流儀ではそうなっている」
濃い緑色の鋭い視線が誠に突き刺さる。
「じゃあカウラさん。あれだけの説明で終わりなんですか?」
呼び出した割りに説明があれだけとはあまりの事だ。
誠はそう思いながら規定どおりに深い緑色の作業服に身を包んだカウラに語りかける。
「少なくともこれが隊長のやり方だ。文句があるなら隊長に言う事だな」
それだけ言うとカウラは長い緑の髪をなびかせて歩き去ろうとする。
誠はその後姿を見送っていた。
「素直じゃないよね、カウラちゃんて」
急に背中に甲高い声を聞いたと思って振り返る。
何もいない。さらに見下ろす。
「誠ちゃん!あなたまでみんなと同じことやんの!」
降ろした視界の中にシャムが立っていた。
いつもの事ながら小さい。
「ナンバルゲニア中尉、実は……」
「それ無し!シャムちゃんでいいよ!」
「じゃあシャム先輩」
「違うの!シャムちゃんなの!」
頬を膨らませながらシャムが抗議する。
「じゃあシャムちゃん」
「なあに。お姉さんで分かる事なら何でも答えちゃうよ!」
無い胸を張りながら得意げに話すシャム。
「そう言えば最近会いませんでしたが……」
「酷いんだ!アタシ隣のトレーニングルームからシミュレーションの画像ずっと見てたのに」
膨らんだ頬はまるでハムスターかリスである。
「すみません。どうもシミュレーターに集中したかったもので」
「じゃあいい。特別に許して進ぜよう!」
ともかくシャムは非常に元気である。
誠はそれまでの緊張感が一気にほぐれたような気がした。
「それなら伺いますが、隊長っていつもああなんですか?」
「ああって?」
「まあ何でもめんどくさそうにするのは前から知ってたんですが、直前になるまで作戦の細目は教えてくれないし、それも無理っぽい作戦だと言うのにまるで勝つことが決まったような口ぶりで話すし、それに……」
言い出したらきりが無い。
雲をもつかむような曖昧な説明と投げやりな態度。
どちらにしても始めての作戦行動に向かう誠にとって不安要素以外の何者でもなかった。
「大丈夫だって!少なくとも隊長の指示で動いて負けた事ないから」
「そうでもないぜ。先の大戦じゃあ叔父貴の部下の九割は死んでるんだ。今回だって人死にが出てもおかしくないやなあ。なあ神前」
タバコを吸い終わったようで、隊長室から出てきた要がそう水を差した。




