今日から僕は 110
隊長室のドアを開けると既に要とカウラが来ていた。
「叔父貴何してる?」
ソファーに身を任せ、片足をその前のテーブルに投げ出しながら要が突っ立っている誠にそう言った。
「なんか、タバコ吸ってから来ると言ってましたよ」
「嘘だな。吉田あたりと悪だくみでもしてるんだろ。タバコが吸いたいならここで吸やいいじゃん」
確かにその通りだ。誠は隊長用の大きな机の端に山になっている吸殻を見てそう思った。
「すまんねえ、待たせちゃって」
悪びれもせずに嵯峨はそう言いながら入ってきた。
「叔父貴。ようやくアタシ等が何すりゃいいか教えてくれるのか?」
見せ付けるようにタバコに火をつけながら要がそう言った。
「まあそんなところかな。神前、別に立ってないでベルガーの隣にでも座れば?」
そう言われて誠は移動しているカウラの隣に腰掛ける。
その様子を見て要は舌打ちをした。
「まあいいや。そんで今回はお前等がアサルト・モジュールでの戦闘を行う事になる」
「だろうな。明石の旦那は胡州の動性を探るために出ちゃってるからな。でもあれだろ?明華の姐さんやお姉さん達が訓練してるんじゃ」
要はそこで大きくタバコの煙を吐き出す。
いつものようにカウラはポニーテールの緑の髪を揺らしながら顔をしかめた。
「あくまでも予備戦力だ。実際『那珂』と第六艦隊の近藤一派の保有するアサルト・モジュールがどれほどの数出てくるか分からん。全戦力では53機だが、全パイロットが近藤中佐の指揮の下で動くとは思えんしなあ」
さっきタバコを吸うために席を外すと言いながら、嵯峨はまたポケットからタバコを取り出すが、正面に座ったカウラの緑の目ににらまれて断念した。
「援護無しで敵中突破任務ですか?」
カウラは眉をひそめながら一語一語確かめるようにしていた。
「当たり。まあ、ぶっちゃけたところで、お前等は囮、デコイだ。パイロットの数と多国籍の艦隊がアステロイドベルト付近で観戦している。予備戦力を持ちたいとは思っても俺らに潰されたらそれでしまいだ。下手に戦力の出し惜しみはしないだろうな。それに05式の性能データは飛燕の後継機のコンペに出てるから菱川重工から胡州軍本部も知ってる。第六艦隊の主力の火龍あたりじゃ数で押すしかないのもわかっての事だろう」
そこで嵯峨はニヤリとした。
「10対1でも勝てと言う訳ですか?」
冷たくカウラはそう言い切った。
「冗談抜かせ!新入りのお守りもいるってのになんでそんな無茶な作戦立てたんだ?」
机を足手蹴りながら要がそう叫んだ。
「怒るなよ。正直、予備戦力的な第六艦隊だぜ?どうせエースなんていないんだから、お前等二人でお釣りが来るだろ?それに一応ワザとパッシブセンサー全開の状態で『高雄』は進軍させる予定だから戦力的にはそれほど差は出ないと思うぞ。それに予算的には『高雄』のフル稼動の方がかなりかかってる」
弱々しげに、それでいてどこか挑戦的な視線を嵯峨はカウラ達に送った。
「侵攻経路はもう出来ているんでしょうね」
カウラは気を取り直してそう聞いた。
「ああもう出来てるよ。それは一応機密事項なんで、明日の朝には時計合わせするからその時見て頂戴よ」
「了解しました」
そう言うとカウラは席を立った。
要は忌々しげにタバコを燻らせている。
誠はなんとなく居辛くなってカウラの後に続いた。




