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平社員の苦悩


俺、綱菓子つながし 朝弥あさや 21歳は、珍しく会社以外の場所に来ていた


「ふわ~~~ぁ」


 今、とある都会のビルの最上階に来ている

 夏なので日差しが俺に容赦ない熱を浴びせる

 たまらず、俺はあくびをしてしまう

 ・・・あくびをしている時点でわかると思うがずっと待ちぼうけをくらっている

 先週なぜかここに集まろうとおっさんどもが言い出したので来てみたのだが・・・

『絶賛、ワイハ~を満喫中』

『やっぱり夏は、避暑地に行くに限る』

『家でネトゲを頑張ります(笑)』

 などのメールでここにはこないと書かれた

 当然のように俺は愛用の携帯電話を半分に折ったのだが・・・

 一番肝心な社長の連絡を受けていないので時間まで待つことになった

 おかげで飲料水は完全にカラ

 脱水症状でも起こっているような感じになるほどの汗

 帰りたい

 でも、帰ってしまうのはダメだ

 ほかの社員とは違って社長は真面目だ

 ドとか超がつくほどまじめだ

 なので待たないといけない

 勘違いを多くする社長を・・・




 3時間後

 干物が完成した

 間違いなく俺だ

 誰か助けて……


 などをネットの掲示板にかぎこんで時間をつぶしている

 いや、3時間たったのは本当なんだが・・・

 そろそろ限界が近づいてきた

 ノートパソコンを召喚することができたから結構暇つぶしはできているのだがここで待つのはなかなか辛い


「大気よ凍れ」


 そう言って周りを涼しくするのだが一向に涼しくならない

 さすがにこっちの世界だと魔力は弱い

 せいぜい飲み物用の氷ができるくらいだ

 手のひらに現れた氷を見つめてそう思った

 ちなみに食用ではないので食べられません


「まだかよ」


 集合時間はとっくにもう過ぎた

 だが、あの社長のことだ

 下手をするとあと2時間後に来て『お、早いな』などと言う可能性だってある

 ほかのやつらは多分、メールしただろう

 休めばよかった

 時給制なので少し減るがそう思う

 もうそろそろ暇つぶしも限界が近い

 どうする?

 いっそのこと帰るか?

 いやそれだと今までいた俺はバカだ

 でもこのまま残っておく方もバカかもしれない

 何かないか?

 家に帰ってクーラーでゆっくりと涼しむでも社長に怒られない方法

 ・・・普通に帰っても怒られないような気がした

 だが、すぐにその雑念を振り切る

 気にしたら負けだ

 さて・・・あと一時間待ったら帰ろう

 これが最後だ




 1時間後


「お、はやいな」

「ちくしょう!」


 来やがった

 まさか秒読みをしている最中に来るとは・・・

 思考を読めるんじゃないか?

 

「いや、読めない読めない」

「あ、そうですか」

「・・・」

「・・・」

「ごめん。実際はちょっぴりと・・・」

「読んでるよな!?」


 社長相手にため口になっているのは社会人としてはあるまじき行為だが・・・

 どちらかと思考を読める方がアウトだと思う


「で、今日はなんのために集められたか知ってます?」

「いや、私よりも上の人らしいからな。まあ、どうして部下がどうして私以上の者に話を聞いたか知りたいところだが・・・」

「そうですか。その部下たち今日来ないことは知っていますよね?」

「は? 来ないのか」

「はい。壊してしまいましたけどさっきメールで・・・」

「じゃあ、あそこで浮いている社員と一般人はなんだ?」


 社長が遠くの方を指を指す

 俺はその方向を見ると・・・

 確かに人が浮いてじたばたしている姿が見えた


「どうします? 助けます? 見殺しにします?」

「いや、助けてやれよ。迅速かつ丁寧にな」

「了解」


 俺はカバンから手鏡を取り出した

 そして、自分と鏡の自分目を合わせて・・・

 一体かするようなイメージをした

 

「おお、やっぱ早いな」

「ありがとうございます」


 俺の同一化の速さを褒めてくれたので素直に返事をする

 まあ、社長がやったほうが速いような気がするんだが・・・

 

「それでは行ってきます」

「わかった。間違えうちの社員を両腕骨折させるなよ」

「・・・・・・・・・・了解」


 なぜそこまで具体的言ったのだろうか

 折れってことだよな

 ・・・社長命令だ


「おお、たすけにきてく・・・ウガッ!!」

「おい、なにを・・・あ!!」

「「ぎゃあああ!!」」


 二人の両腕が曲がってはいけない方向に曲がってしまったのを確認して・・・

 任務完了!!

 心の中で大きくガッツポーズをする

 さて、次は一般人の救助だ

 力加減は難しいが・・・

 いつも通りやれば大丈夫だ


「拝め 神の波動!!」


 その瞬間、俺を含めた宙に浮いている人は落下を始めた

 すぐさま魔力を高め一般人を救出する

 が・・・


「まずいな」


 一般人の量が多すぎる

 数人ほど地面まであと3秒だ

 しかも、ただ落ちているだけじゃない

 何者かに操られて落ちている

 もう一度『神の波動』を使うか?

 いや、それだと間に合わない

 出し惜しみしている場合じゃないな


「砕け散れ 狂いの鏡 乱反射鏡バッドミラー


 決めつけられた単語を言い、俺は姿を変えた

 両腕はピカピカに磨かれたような光を反射し、指先はすべて尖がっている

 ほかの部位は黒く汚れている

 ただ、両腕だけが異彩を放っている

 そして、すぐさま地面との距離が近い人に対して魔法をかける


「・・・そろそろか」


 全員に魔法をかけたあたりで周りを見渡す

 後ろに数体ほど鳥の形をした魔物がいた

 全員、色あせた白色だ

 いや、鏡の上に黒い絵の具を塗ったとも取れるかも知れない


「・・・」


 あちらは無言だ

 まあ、鳥がしゃべると恐いけど・・・

 別に意味で今は恐い

 さっきまで姿を現さなかった

 何か理由があるはずだ

 鏡の中に住んでいる魔物は賢い

 それこそ人間を上回るほどに・・・

 うかつに動くことはできない

 でも、それもあと数秒の我慢だ

 少し雑になるが浮いていた一般人を地上に戻すには十分だ

 だが、無理だった


「・・・」


 鳥たちは俺を中心に円を描くように旋回し始めた

 そして、すぐさま魔法陣が描かれる

 

「しまっ―――!!」

 

 すぐに一般人を地面に落した

 けがはないはずだ

 だけど俺が無事で済まなかった

 一般人を地面に落したとほぼ同時に・・・

 俺の体を空から降ってくる大量の剣に襲われた


「う・・・」


 どうにか致命傷を避けながら俺は剣とともに落下する

 すぐに地面との距離がなくなり俺は落下のダメージをくらった

 だが、痛みを嘆いている時間はない

 その場で魔法陣を描き出し、鳥たちを攻撃する

 

「太陽 歪め 烈火!」


 鳥たちはすぐに燃え出す

 だいたいは焼き死ぬが・・・まだ残っている奴がいる

 一体だけ鏡の色が違う

 黒ではなく、赤だ

 多分、今の魔法を吸収したのだろう

 吸収の才能があったんだ

 そうなると魔法は通用しない

 現実世界で魔法の威力は1万分のⅠ

 この威力だと火と水を交互に浴びせても吸収のほうが上回る

 なら、肉弾戦だ

 地面を全力で蹴り、一気に距離をつめる

 そして、尖った指先で切り裂く

 何が起こったかもわからず鳥はさけびもなく・・・力尽きた


「さて、終わりでいいよな?」


 誰にも返事を期待せずにつぶやく

 これが俺の日常

 現実世界で魔物を討伐することが俺の仕事だ

 元勇者の仕事にしては少し地味かな?


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