↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界転生はベタばかり  作者: 龍神慈樹
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/60

59 『恐怖に立ち向かう』




「ふっ」


「ギッ!?」


「はっ」


「ギャ!?」


 グラムガンドとの戦いは、一瞬たりとも気が抜けなかった。


「ギギャーーッッ!!?」


 暴れ回る巨大な両腕をすれすれで避けながら、同時に斬りつける。

 グラムガンドの血が辺りに飛び散っていく。


 だが、決定打にならない。


「ッ……」


 ラキシアは無意識に奥歯を噛みしめていた。


 何度斬りつけても、グラムガンドの勢いは弱まらない。

 むしろ、怒りで強まっている気さえする。


 あの腕に、一度でも当たれば致命傷になるだろう。

 でも、足を止めるわけにはいかない。

 今、アサヒとカサネを守れるのは自分しかいないのだから。


 ……少しでもッ、お二人から距離をッ!!


 避けるときも、できる限りアサヒたちから距離を取るように立ち回る。

 グラムガンドの攻撃の余波だけでも、戦えない者にとっては命に関わる。


 グラムガンドの視線や腕の動き、アサヒたちとの距離、折れた木が二人の方に飛んでいかないかなど。

 それらに全力で意識を集中させながら、ひたすらに避け続けた。


「グギャッ!!」


 ドオンッッ!!!


「くっ!!」


 グラムガンドが両腕を地面に叩きつけ、土煙が舞う。

 咄嗟にグラムガンドから距離を取った。


 ……な、なにをッ……!?


 ギョロリ。


 グラムガンドがアサヒたちの方を向いた。


 ……まさかッ!!


 その瞬間、背筋が凍りそうになった。


 グラムガンドは折れた木を鷲掴みにして、アサヒたちに——


「させませんッ!!」


 咄嗟に手を向けて魔法を発動。

 何本もの木の根がアサヒたちの目の前にそそり立つ。


 ズドォォンッ!!!


 轟音とともに、グラムガンドに投げられた木をなんとか防ぐ。


 ……お二人はッ——


 木の根の向こうにいる二人の無事な姿がちらっと見えた。


 アサヒたちを守れたことに安堵した。

 だが、それ以上にさらなる恐怖を感じた。


 グラムガンドは、たしかに凶暴な魔物だ。

 戦えない者なら絶対に生息域に近づいてはいけないし、腕に覚えのある者でも一人で挑むのは危険すぎる。

 だからこそ、まったく油断ができない相手だと、ラキシア自身も理解している。


 理解しているのだが……。


 ……なにかが……おかしいッ……。


 背中に嫌な汗が流れる。


 グラムガンドが目の前のラキシアに襲いかかってくる。

 それは理解できる。

 だが、そのさなかに別の相手を狙うことなんて、今までなかった。


 良くも悪くも、目の前の相手を蹂躙しようとする。

 あまりにも真っ直ぐで、直情的な害意。

 それがグラムガンドの生態のはずなのに。


 このグラムガンドからは、それとはまったく別のものを感じる。

 相手を意図的に苦しめようとする、嗜虐的で邪悪な何か……。


 ……私は今、何と戦ってるんですか……?


「狙うなら、私を狙ってください!」


 そんな嫌な想像を振り払うように、ラキシアは声を張り上げる。


 ……時間をかけすぎたら、次は何をするかわかりませんッ……! 早くお姉ちゃんたちに助けを——いえ……。


 一瞬、姉や先生に助けを求めることを考えた。

 だが、仮に今呼んだとしても、二人が助けに来るまでにアサヒたちを守り切れる自信はない。

 さっきの木を防げたのも、ほとんどギリギリだ。

 もし、少しでも魔法の発動が遅れていたら、アサヒたちは今ごろ——


「グギャーーーーーーッッ!!!」


 ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!!


 グラムガンドが癇癪を起こしたように、急に地面を叩き始める。


「ッッ!?…………ここまでしても、まだ……」


 おもわず言葉が漏れた。


「ギャーーーーーーッッ!!!」


 ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!!


 何度も何度も斬られ、大量に血を流しているはずなのに、グラムガンドはまったく衰える気配がない。


「やっぱり、この剣じゃ……」


 グラムガンドには届かない。


 ……ほかに方法があるとすればッ…………でも——


「ギャァーーーッッ!!!」


 叫び声を上げながらラキシアに向かってくる。


 ヒュッ!


 グラムガンドに手を向けて、再び魔法を発動。

 植物の蔓がグラムガンドの両腕両脚に絡みつき、その体を拘束する。


「ギャ!? グギャ!? ギャッ!?」


「仕方ありません…………これで、終わりにします」


 ラキシアは剣を構えて呟いた。


「私に力を貸してください」


 光り輝くラキシアの剣。

 剣の周囲に無数の光の輪が現れ、そこから伸びてきた植物の蔓が剣に集まっていき、一体化していく。


 剣に魔法を纏わせ、威力を極限まで高める技。

 今できる最大の攻撃。


 だが——


 ……耐えてッ、くださいッ……!


 武器への負担もかなり大きい。

 ミシミシと、不快な感触が手に伝わってくる。

 まるで剣が悲鳴を上げているようだ。


 ……お願いッ……もう少し、ですッ!


 剣に魔法を纏わせながら、ラキシアは覚悟を固める。


 この剣では、二回もこの技を使うことはできない。

 きっとそんなことをしたら、刀身が砕けてしまう。


 だから、この一撃で決める。

 でないと、グラムガンドには勝てない。

 アサヒとカサネを守り切れない。


 ……そんなのだめですッ!!


「ありがとうございます」


 その言葉に応えるように、剣が一瞬だけ強く輝く。

 そして次の瞬間には、淡く輝く大きな剣が握られていた。


「ギャッ!!? ギャ! ギャ! ギャーー!!」


 グラムガンドが今まで以上に暴れ出す。


「グギャーーーーーーッッ!!!」


 だが、どれだけ暴れても蔓の拘束からは逃れられない。


 ……この技で、あなたを倒します。


「いきます」


 地面を強く蹴り、グラムガンドへ向かっていく。

 そのまま、剣を左胸へ——


「やあッッ!!!」


 ズドンッ!!


「ガギャッッ!!?」


 轟音が鳴り響き、土煙が舞う。


 そして……


 ドオン!


 グラムガンドがゆっくりと倒れる。


 ……や、やりましたかッ……!?


 恐る恐るグラムガンドを見下ろす。

 左胸に風穴が開いていて、動く気配もなかった。


「よ、よかったぁ……」


 おもわずへたり込みそうになったが、ぐっと我慢する。


 手に握られていた剣は元の大きさに戻っていた。

 ラキシアは剣を見つめながら、静かに呟く。


「無茶をさせてごめんなさい。ゆっくり休んでくださいね」


 そのまま土煙の向こうにいる二人の元へ向かった。


「はっ!! こんなことしてる場合じゃないッ! ラキシアは……」


「アサヒさ〜ん! カサネちゃ〜ん!」


 笑顔のカサネと、ぽかんとした顔のアサヒ。

 二人に手を振りながら歩いていく。


 …………??


 なにやらアサヒが呟いたように見えたが……。

 まぁ気のせいだろう。


 ……それにしても、本当によかったですッ!


 アサヒたちを守り切れたことに、ほっと胸を撫で下ろした。


「お二人ともお怪我はありませんか?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。