33 『恐れ』
「な、に、言ってん、だよ……こ、こんなときにッ、冗談なんて言ってる場合じゃ——」
「妾は本気じゃぞ」
カサネの言葉が理解できなくて、言い返そうとした。
しかし、遮られてしまう。
「ッッ」
グッと奥歯を噛みしめる。
あまりにも笑えない発言だ。こんな自分に何ができるというのか。
あんなに強かったラキシアが、手も足も出なかったのに。
……それなのにッ、俺なんかが勝てるわけッ…………。
「は、早くッ! 信仰心であの魔物を倒してくれよッ!!」
ズキリ。
おもわず責め立てるような言い方になった。
「笑えない冗談はいらないからさッ!!」
ズキリッ。
まるでカサネを糾弾するような、そんな言い方だ。
カサネは何も悪くないとわかっているのに……。
「…………」
「な、なぁ……頼むよ、カサネ…………できるんだろ?」
ズキリッ!
アサヒは、今の自分がひどく醜いなと思った。
責め立てるような言い方の次は、無様に縋り付くような言い方だ。
なぜそんな醜い言葉をカサネに投げかけているのか、その理由はもう自覚している……いや、気づいてしまった。
あれだけラキシアを助けたいと思っていたのに、いざそのときが来たら……。
……ズキリッ!!
胸の奥で鋭い痛みが走った。
カサネから離れたくて、一歩下がる。
「…………」
「カ……カサ、ネ……」
アサヒの、そんな醜い心の内をちゃんと見抜いているのだろう。
カサネはアサヒから視線を逸らさない。
……や、やめろ……頼む、から……。
カサネが静かに息を吸う。
何か言おうとしている。
聞きたくない。何も聞きたくない。
言われたくない。何も言われたくない。
今、アサヒが思っていることを言葉にしてほしくな——
「恐れておるのか?」
「ッッ」
思っていたことを言葉にされて、アサヒは声を詰まらせた。




