エピローグ 茜の空
「ね。ね。チーア!!」うっさいなぁ。アキ。
俺は目を覚ます。どうも朝になっていたらしい。
ロー・アースもファルコも帰ったらしい。俺だけ酒場で酔いつぶれかよ。別にいいけどな。
まぁいいや。懐かしい夢を見れたし。
「どーせ、今日も仕事がねぇとか抜かすんだろ」もう飽きた。
こいつには何度からかわれた事か。
「あらら。ご挨拶」そういって彼女は温かいミルクを俺のテーブルに置く。サービスらしい。
……母親の短剣の鞘。透明で翡翠色の不思議な石で出来ている。ベルトのバックルもそう。
実は希望石を魔法加工して作る。『ほたる石』といわれる品だ。
一般に言う蛍石とは完全に別物である。
あの後、ドワーフたちの大歓迎を受けた俺達は、『孔雀石』と『藍銅鉱』の結婚に立ち会った。
……二人は。凄く。凄く幸せそうだった。
別れ際に二人は俺達に素敵な贈り物をくれた。それが。この石。
「未来のダイヤモンドを護る者へ」そういって彼らはその技の全てをふるって俺達にこの石をくれた。
他にも革で出来ていて底のある黒い靴とか、さまざまな武器とかを惜しみなくもらった。
「村を訪ねるものがいたら必ず伝える。『夢を追う者達』の物語を」村長はこっぱずかしいことを言いやがったので全力で止めたが、正直効果があったかというと疑問だ。
「チーアたちに手紙が来てるのよ。ほら」うん。読めないけど、この字は解る。
「差出人は『孔雀石』って人だろ?」多分、内容はわかる。「ご明察!!」
俺の代わりに手紙を読むと言い出したアキは手紙を勝手に開いた。
「あらあら。まぁまぁ」
アキは愉しそうに笑っている。
「一ヶ月もたたずに修理代をタダにしちゃった上に、ドワーフの村まで救ったとか」
そのことを当面黙って、延々とこき使いやがった癖によく言うぜ。
「チーア。あのね。『孔雀石』さんって人。子供が出来たって」
出来ないんじゃないかって心配してたらしいが、杞憂だったな。
「たぶん、初産は母親と同じ種族の、女が産まれると思うぜ」俺は補足説明する。
理由はわからんが、たいていそうなる。
「すっごい!エルフとドワーフの夫婦なのっ?!!」
彼女の両親も凄かったらしいけどな。驚くアキに苦笑する俺。
「すっごい。似合わなさそうっ!面白いねっ?!」あはは。マジ美女と猪だったしな。
『孔雀石』にキスされたあのときの『藍銅鉱』とそれを見守る村長の髭の上からでも判る赤い顔はなかったぜ。
「ところで」うん?
「あのね。手紙の末に変なことかいているんだけど」???
「えーと。『最後に。チーアさん。もし、娘が生まれたらユースティティア。ティアと名づけて宜しいでしょうか』だって。意味わかんない。これナニ?」
俺は盛大にミルクを噴いた。
俺、足引っ張ってばかりだったじゃ無いかっ?!嫌味かっ!嫌味かっ!二人ともっ!!??
「良くわかんないけど、おっけ~って書いておくねっ?!!」
「やめっ!やめっ!!それだけはやめろっ!!!」「意味わかんないけど、愉しそうだからそう書いておくっ!」
つかみ合う俺達二人を闇を打ち払う太陽の茜の色が染めていく。
今日を希望に包むのが、明日への物語だと伝えるために。
……もし。君が叶わぬ願いを胸に秘めているなら。
もし。何か悩み事があるなら。
もし。郊外の森の中に奇妙な形の冒険者の宿をみつけたら。
迷わず。『俺達』を指名して欲しい。
きっと。君の願いは叶うから。
ただし。『余計なオマケ』は自己責任で。
(Fin)
長文、駄文失礼しました。
週に一回くらいは更新していきたいシリーズです。
拙い文ですが、少しでも心に残れば幸いです。
ちなみに、お察しの方は解ると思いますが、
『孔雀石』の母、『にがよもぎ』さんは最強の妖魔種である『ダークエルフ』です。
見た目はエルフそっくりで、『魔族』とも呼ばれる恐ろしい敵です。
改稿前のラムザは『孔雀石』に。ギルは『藍銅鉱』に。村長ことリックは『磁鉄鉱』に改名しました。




