新星②
校舎の四階に着くと、廊下が同じ新入生達で賑わっていた。
「やっぱり、高校生になって盛り上がってんな」
「ま、眩しすぎる」
「おいおい...着くやいなや陰キャ発言かますなよ」
「仕方ないだろ、中学三年の時は学校には行ってたけどみんなとは違う教室で勉強していたんだから」
「それはそうだけど、これからはこの環境で生活するんだから、友達作れとは言わないけど
上手く付き合っていけるように慣れていこうな」
「精進します...」
そんなやり取りをして、僕達は新入生で賑わっている廊下を通って一年五組の教室へ向かった。
教室に入ると、自分の席でホームルームまでの時間を待っている者や中学の友達や知り合い同士で
話をしている者達が居た。
僕達も自分の席を確認してから席に荷物を置くと、一人の女子が話しかけてきた。
「琉聖君、おはよう!優君は久しぶりかな?」
「結衣じゃん、おはよう!」
「鈴木さん。お、おはよう」
僕達が挨拶を返すと、彼女は何かに安堵したかのようにニコッと微笑んだ。
「良かった。優君としっかり会うのは一年以上前だから忘れられてるんじゃないかって怖かったんだけど、
覚えてくれていて嬉しいよ」
「鈴木さんのことは、琉聖から会うたびにさんざん話をされたから寧ろ忘れることが難しかったよ」
僕がそう伝えると、鈴木さんは琉聖を微笑みながらも圧を掛ける様に琉聖に質問をした。
「琉聖君、優君に私のことを話してくれたのは嬉しいよ。でも、何か変なこと話していないよね?」
「あ、当たり前だろ。な、優?俺、何も変なこと話してなかったよな?」
「ど、どうだったかな。覚えてないや」
この世の中で、琉聖をここまで圧倒できる女性は何人いるんだろうか。
いくらなんでもこなすことが出来る琉聖とは言え、恋人には弱いようだ。
「琉聖くーん?」
「ちょ、優?冗談だよな?」
僕はわざと目を背けた。
「わー!結衣様、神様、仏様!今度、駅前にあるクレープを奢るので許して下さい!」
「んー、どうしようかなー?」
「ちょ、優!ヘルプ!」
普段、こんな琉聖を見られる機会も滅多にないから、これだけでも今日学校に来た甲斐はあったなと僕はふと思った。
「琉聖は何も変なこと話してなかったよ。むしろ、鈴木さんの良いところしか話してなかったよ」
「ふーん、そっか。私の良いところしか話してないんだ。優君がそう言うなら信じるよ」
「あれー、ちょっと。彼氏である俺の信用弱くない?」
「当たり前じゃん、春休み一回しか会ってくれなかったじゃん」
「いや、それは優と会ってたから...」
「彼女よりも優君を優先ですか?じゃあ、私が彼氏よりも優君を信用しても良いってことだね」
「いや、結衣さん。ちゃんと事前に許可を得たじゃないですか。」
「いいですか、琉聖さん。彼女としましては、許可を出しているといっても、もう少し会ってくれても良かったんじゃないかと思っている訳ですよ」
「それは...すみませんでした」
彼女に尻に敷かれた居る琉聖の反省をしている姿を、僕と鈴木さんは少し面白く思って笑った。
「そんな反省しなくていいよ、ちょっとからかっただけだから。それより、こっちこそお願いを聞いてくれて二人ともありがとう!」
「いやー、まさか優を説得するのに春休みを丸々使うとは思わなかったな」
「そりゃ、こっちのセリフだよ。春休みほぼ毎日、僕んちに来ては”一緒にバンド組もう”って言ってくるんだから怖かったよ」
「それは、優が最初からおっけーしておけば済んだ話だろ」
「そんなことがあったんだね...優君、なんかごめん」
「いやいや、鈴木さんが謝ることじゃないから。琉聖が引くことを覚えないのが悪いから。
むしろこちらこそ、人とコミュニケーション取るのは得意じゃないけど、楽器を演奏することは好きだから、誘ってくれてありがとう」
「まぁ、バンドに関してはゆっくりやっていくとして。優はまず、学校生活に慣れることからだな」
「そうだね。優君、全然無理はしなくていいから、気が向いたときに一緒にやろうね」
「うん、鈴木さんありがとう」
―キーンコーンカーンコーン―
八時三十分を知らせる鐘とともに、僕の高校生活がスタートした。




