9.森の国へ
ファンタジーと言えばエルフですよね。
「やってきました大森林!」
「聖女ちゃん。楽しそうですぅ。」
モー子さんと一緒に水の国を出て一路西へ。森の国にやってきました。
森の国との国境はわかりやすく森があるかどうか・・・・もちろんそれもあるけど、街道の道幅が6m程度から2m程度になる。なのでこれ以上は馬車では薦めなくなる。通れないわけではないがすれ違うことはできないからね。
「森の国といえばエルフ!エルフといえば美形で貧乳!ここでモー子さんの婿探しもするのです!」
そういうとモー子さんは驚いて
「エルフって貧乳なんですか?」
「もちろんよ。巨乳のエルフなんて認めないわ。そんなのはエロゲ脳の妄想の産物よ!貧乳エルフこそ正義!巨乳のエルフなんてエロフで十分なのよ!そしてオークに負け続けるのがお似合いなのよ!」
そう力説するとモー子さんも頷いている。勢いに負けただけかもしれないけど。
「いいですかモー子さん。貧乳こそ清く正しいエルフの姿。そして私はチチコンプレックスから解放されるであろう!」
そういって両腕を広げる。
「何かどこかの総帥の演説みたいですぅ。」
「チチ何て飾りです。エロい人にはそれがわからんのですよ。」
そういってモー子さんのフカフカに包まれる。
「この状態で言われても説得力がないのですぅ。」
「まじめな話、大きさ何て比較の問題ですからね。周囲がエルフしかいなければ私だって巨乳ですよ。その場合モー子さんは爆乳に格上げです!」
そういってモー子さんの巨乳にすりすりする。
「どこら辺がまじめな話なのか理解できないですぅ。ところでなんで私の婿探しの話が出ているんです?」
「私には長年の研究テーマがありまして、それを解決して『なぞは全て解けた!』というセリフを言ってみたいのですよ。」
少し歩きにくいので体制を元に戻して答える。
「研究テーマですかぁ?」
「そうです。巨乳の遺伝子と貧乳の遺伝子はどちらが強いのか?それとも間を取って平均値になるのか!人類の持つ永遠のテーマでしょう!」
そういうとジト目になったモー子さんに見つめられる。うん悪くない感じ。
「そんな謎は全て溶けだしてしまえばいい( 一一)/」
「私だってできることなら代わってあげたいんですよ。でも持つべきものがないのだから仕方ないじゃない!」
およよよよと泣いたふり。
「そういうわけでモー子さんには、ぜひ貧乳遺伝子の結晶であるエルフの男性と結婚して娘を産んでもらいたいのですよ。できれば三人くらい。」
そんな話をしながら森の小道を歩いていると少し開けた場所に出た。そこには関所のようなものがあり弓を持ったエルフの女性がいた。
「あ!第一村人発見ですぅ。」
「第一村エルフでは?」
そういって近づくとエルフに睨まれた。
「ようこそエルフの森の国へ。そして貧乳で悪かったわね。」
「あれ?聞こえてたんですか?清貧こそ神の御心にそう素晴らしき形。それを捨てるなんてとんでもない!」
そういうとますます機嫌を悪くして
「清く貧しくて悪かったわね。ちなみにエロフとは完全に違う種族だから一緒にしないでよ!」
「えっ?そんな前の会話から聞こえていたの?そしてエロフって別にいるの?」
少し驚いて聞いてみると
「もちろんよ!エルフ耳は伊達じゃない!」
「ならば、今すぐエルフ共すべてに巨乳をさずけてみせろ!」.
「(そうですぅ…それができないから…)」
「エロだよ!それは!」
そんな会話をしていると男エルフが話しかけてきた。
「おまえら初対面なのに何をわかりあっているんだ?ニュータイプか?」
「いやですね。ちょっとしたCCAごっこじゃないですか?幼いころにやったでしょ?」
そう聞くと清貧さんが横から答えてくれる。
「彼はこう見えて300歳代のおっさんだから話についてこれないわよ。ちなみに私は54歳ナウでヤングなぴちぴちよ。」
「ぴちぴちって表現がババ臭いですぅ。さすがエルフですぅ。」
モー子さんが頷いている。
「まあいいわ。とりあえず身分証を見せて頂戴。」
そういわれたのでモー子さんは山の国の身分証を私は聖女の結界を発動させる。聖女は世界に一人だけというのがこの世界の理だからね。
「やっぱり聖女さんだったのね。」
「やっぱり?」
「エルフは魔力の色が見えるのよ。あなたは6色とほかに謎の色が見えたから特殊な人じゃないかと思っていたわけ。」
さすがはエルフ。変な能力を持っていなさる。
「なるほどそういう事ね。」
「それで入国の目的は?」
いつものやり取り。前の世界でも空港の入国手続きでよく聞かれてたしね。
「とりあえず森の国の観光と買い物かしら?」
「わかったわ。とりあえず最寄りの村まで案内してあげる。良いわよね。」
清貧さんが男エルフに尋ねると無事に許可をもらっていた。よしこれで入国だ。とりあえず道すがらいろいろ情報収集をしておこう。
清貧さんと三人で歩いている最中にいろいろ質問をする。
「さっきの話の続きなんですけど、エロフって別にいるんですか?」
「いるわよ。我々エルフは森の亜神であるハイエルフの子孫。清く正しく森とともに生きる種族。特徴は長命なのと、耳が長いこと、魔力が見えることと精霊と会話ができること。弓の扱いにたけていて基本的に男女ともに美形ぞろいね。」
ふむふむ。多少美化されているけど一般的なエルフ像からは外れていないわね。非力とか貧乳とかが抜けている気がするけど。
「なんか失礼なことを考えている気配がするけど続けるわね。エロフは転生勇者の子孫で女しかいない。500年前に強姦の魔王としてオークキングに転生した魔王に対抗して召喚された獣姦の勇者の子孫。巨乳で男なら何でも食っちまうわ。食われた方は大抵腎虚または腹上死。オークが絶滅危惧種になっているのはほとんど彼女らのせいね。一応勇者の子孫だから基本的に人間やエルフ、ドワーフとか獣人とかは襲わないわね。襲われた場合は容赦ないようだけど・・・。」
「エルフってオークとかゴブリンに食べられるほうだと思ったのに逆なんですねぇ。」
モー子さんが感心している。
「単体ならエルフはオークなんかに負けないわ。森の中ならなおさらね。ただオークは群れで活動するから昔はそういうこともあったらしいわ。エロフは血が薄まったとはいえ勇者の子孫だから小さいけどアイテムボックスを使えるのが多くて仕留めたオークを豚肉としてよく売りに出しているわ。」
「エロフ恐るべし・・・・。あらゆる面で肉食系なんですね。」
「魅了魔法で誘惑して仕留めるらしいけど、まあ精力を魔力に変換して吸収できるらしいから食事の方は小食らしいけどね。」
「ほとんどサキュバスみたいなものじゃないですかぁ!」
「サキュバスみたいに夢の中に入ったりはできないけど、サキュバスはイケメンとか恋愛が絡むから対象は限定的でオークなんかは襲わない。エロフは問答無用だからね。耳が長いから胸以外は外見的に近いしおかげでエルフの女が襲われる被害が減ったから私たちとしてはありがたいのだけどね。男は人間の色ボケババアの指示で攫われることはいまだにあるけど・・・。」
そりゃ襲ったと思ったら食われて死にましたでは、おいそれとは襲えないよね。胸何て軽装でなければある程度ごまかせるし・・・。しかし色ボケババアって年齢的にはエルフの方が上のような・・・・。
「そうそう、エルフの男で婿探しっていうのはやめた方がいいわよ。」
「どうしてですかぁ?」
私も気になります。偉大な研究の第一歩が・・・・。
「性の不一致っていうやつ?エルフって寿命が人間の10倍あるわけだけど、その分淡白なのよ。だいたい新婚でも人間の10分の1くらいらしいわ。だから子だくさんが希望ならやめておいた方がいいわね。」
なんとそんなところに計画の落とし穴が!
「え?その割にはハーフエルフは大量にいるような気が・・・・・。というかエルフより多いですよね。」
ファンタジーで最も有名といっていいハーフといえばハーフエルフ。
「それはその・・・・。エルフの女は人間並みだからね。私の大叔母さんなんて10人目の旦那よって言って人間の町に住んでいるし・・・。」
「エルフ女も肉食系じゃないですか!それにしてもよくそれでエルフが種族として絶滅しないですね。」
ひょっとしてエルフの村は男だらけ?
「一応一人っ子政策っていうのがあって村を出るまでに、最低一人はエルフ同士で子供を作りなさいっていう決まりがあるし、遺伝子が強いのか先祖返りする人がいるのと、ハイエルフの子孫は確実にエルフだからというおかげみたい。寿命が長いからなかなか死なないしハーフの10人に一人くらいは先祖返りしてエルフになるらしいから・・・。」
一人っ子政策って元の世界の某国では人口抑制のための出生制限だったんだけど、いろいろ事情があるんだなぁ・・・。
「そうするとエルフの男は余っているんですか?」
「それがね。イケメンにエロい目で見られず大事にされるのがいいっていう貴族のご令嬢なんかの需要もあって結構出稼ぎホストみたいになっているのもいるのよね。」
「ああそういう夢見る乙女みたいな子っていますよね。」
中世の世界観でホストがいやがるのか!さすがはファンタジー・・・・。
「まあそうやって結ばれても、大抵は結婚生活の中で破綻するんだけどね・・・。」
なんとなく理解できてしまう私って汚れているんだろうなぁと思ってモー子さんを見ると
「エルフって細くてもやしみたいですしやっぱり次に行きましょうかぁ・・・」
すっかりエルフ男に興味をなくしていた。もともとマッチョ系のほうが好きみたいだし仕方ないか・・・。
イケメンだけでは食ってはいけない。いろんな意味で。
目的の一つが潰れてしまったけどとりあえず森の国を楽しみますか・・・。