3.砂漠の国で
やってきましたオアシスの町。
いや~あれから何度か襲撃がありました。
ただ気が付いたんですがこの国に私の結界を破壊できる人はいなさそうです。例の聖剣に関しても国を守護するような広域結界は破壊できそうですが、個人用に圧縮している結界にはかすり傷一つつけられませんでした。
スキルと組み合させたり勇者が使ったりすれば別かもしれませんが、本質的に聖剣は対魔王用の決戦兵器みたいですからどうなんでしょうね。魔王も最後に目撃されたのも500年前みたいですし、魔王が現れない限り勇者も現れないようですからとりあえず安心かな?
旅をしながら思いましたがこの国の風土は私のスキルと相性がいいです。テントはアイテムボックスに丸々入るし、水も食料も同じ。
光と闇と風以外の火、水、土の魔法の効果は多少落ちるけど、使えないわけではない。ちなみにこの世界の魔法事情はこの6属性。通常は1属性が使えて2属性が使えるのは10人に一人、3属性で100人に一人。全属性だと10万人に一人という確率。私は聖女なので全部使える。チート万歳。
言語理解は強制召喚されたものはほぼ全員。アイテムボックスはその中でもまれなので世界的には歴史に残るレベルで超レアらしい。デザートタイプが認識していなかったのも仕方がない。
それでなんで私がオアシスに来ているかというと、魚と果物の仕入れ。特殊な気候だけあってここにしかない果物というのももちろんあるが、淡水魚はとても貴重なので。山の上まで行けば清流とかもあるのだろうけど、歩くのが大変。大河は生活排水とかも流れ込んでいるのでちょっとエンガチョ。その点オアシスは排水流さないので比較的水がきれい。買った魚はアイテムボックス行きで時間が止まっているので痛まない。大量仕入れのチャンスですよ。
そんでもって買うためにはお金がかかる。なので収納してきた武器や服を売る。それを兵士が買って襲ってくる。そして収納する。それを売る。という永久機関を完成させていた。
この国の通貨流通量が心配です。インフレとか起きても私に責任はないと思うけど。まあさすがに国単位なら問題ないとは思うけど町一つだと結構問題かも。
ついでに襲撃者はもれなくモヒカンの刑にしているのでそのうちこの国の軍隊はヒャッハーさんで構成されるんじゃないかな?
そんなこんなで食堂で食後に市場で買った果物を店員の許可を得て食べていると、顔を覆い目の部分だけ出したような衣装の女性が近づいてきた。前世ではムスリムがつけていたブルカに似た感じのやつだ。装飾品はゴージャスなのでそれなりの地位の人のよう。
「こちらよろしいかしら?」
店内にはほかに空席があるのにそういってくるということは私に用があるということだろう。
「私に何か用ですか?」
「聖女様とお見掛けしますが、間違いございませんか?」
やはりそうらしい。
「失礼ですがあなたは?」
「これは名乗りもせずに失礼しました。私はこの国の第一王女です。」
そういうと向かいの席についた。なんとなくそんな気はしていた。
周囲には護衛とみられる数人がいる模様。
「それでヒャッハー王国の王女様が何の御用で?」
「ヒャッハー王国?」
通じていないらしい。
「失礼しました。それでモヒカン王国のプリンセス・オブ・ザ・モヒカンズが何の用ですか?」
「モヒカンが何かわからないのですが、そこはかとなく馬鹿にされている気がします。」
これもダメらしい。仕方ないのでなんと呼ぼうか悩んでいると・・・
「まあ話が進まないのでその件はおいておきましょう。」
モヒカンでいいらしい。
「よくありませんからね。それよりも・・・王子から奪った聖剣を返してほしいのです。」
釘を刺された。
「強盗はその場で殺害しても構わないうえに、その所有物は倒したものに所有権が移るというのがこの国の法だったと思いますが?まあこの国に法など私には一顧だにする価値もないものですけどね。」
人治主義で襲ってきた国の法などこちらに守る価値がないうえに、強制する力ものだから無価値だ。
「聖女様のお怒りはごもっともなれど、あれは王子が勝手にやったことで国の指示ではありません。聖剣自体も宝物庫より持ち出したもの。王国も被害者なのです。」
「虫のいいことを言いますね。それを信じろとでも?王子が勝手にやったにしてはその後もたびたび襲撃されているのですが?」
苦り切った様子の王女様。
「そんな見え透いた嘘はこちらの心証を悪くするだけだと思いますが?」
「申し訳ございません。ですが王家の意思として聖女様を襲撃したのではないことだけは理解していただきたく思います。」
何が言いたいか理解ができませんね。
「この世界では王子が自国に攻め入ってきたけど王家の意思ではないから責任はないよといわれて納得する国でもあるのでしょうか?そんな責任逃れの言い訳を聞かされるのも不愉快ですから、お帰りくださいますか?」
「待ってください!このままではあなたは襲撃を受け続け、周囲にも迷惑が掛かることになりますよ。」
一人旅の私にそんなことを言ってもね・・・。それに異世界人の私にはそんな脅しがきかないといつになったら気が付くのだろうか?
「あなた方があなた方の所有物である臣民に何をしようが構いませんが、私には関係ないことです。せめてもっと早くに買い戻すという交渉が来たのなら一考の余地がありましたが、何せぼろ儲けしてしまいましたからね。それに私を脅すということは反撃を受ける覚悟がおありのよう。これまでに襲撃者がどのような目にあってきたかご理解していますよね。ひょっとしてマッパがご希望?露出狂何ですか?それとも永久脱毛がご希望で?」
「ひぃっ!」
私が立ち上がって質問すると、椅子から転げ落ちた王女がうずくまっています。
わたしは男女平等主義ですからね。
やられたらやり返す。マッパ返しだ!
「こっ、この国で物が買えなくなってもよろしいのですか?商人に言えば売ることだってできなくなりますよ!」
震えながら訴える王女様。やっぱり何もわかっていない。
「お好きにどうぞ。当面の生活物資はありますし、売らないというのであれば一方的に収納するだけです。その気になればこの町から麦一袋、銅貨一枚、水の一滴も残さず収奪できますけどどうします?」
ここは一般の食堂だ。私の声は一般人の耳にも届く。そんな悲惨な目に合うのに王家の命令など聞くはずがない。
「おいおい嬢ちゃん。冗談でも言っちゃいけないことがあるぜ。」
どうやら聞き耳を立てていた食堂の店主が仲裁に入ったようだ。
「冗談ではありませんよ。私は10日もすれば出ていく旅人です。そういう目にあいたくないのなら王女の命令を無視するか、監禁するか、いっそ行方不明にでもなってもらえばいいんじゃないですかね?」
それを聞いて真っ青になる王女様。
「その辺にしてやってくれ。王女様も反省しているだろうしな。」
「どうでしょうね。襲撃の方もあまり鬱陶しいようであれば、町の物資を根こそぎ奪い、誰も生きられないような環境に追い込み、すべて死に絶え、この町をまっ平にしてしまっても私は一向に構いませんからね。」
売れるものを持たずにマッパで襲われたりしたら気持ち悪いだけですからね。そういうと店主も顔を引くつかせて少し青ざめていた。
「何度も命を狙われてるのだからそう思っても仕方ないか。おい王女様よ。ちゃんと謝罪しなよ。そうでないと本当にこの町から出ていけなくなるぜ。いくら護衛がいたってこの町に住む数千人の住民をすべて敵に回せるわけじゃないだろ。」
それを聞いてさすがに王女様も床に頭をつけて謝罪してきた。
「大変申し訳ありませんでした。お許しください。」
やっと決着がつきそうなので最後に聞いてみる。
「これ以上私にかかわらないでくださいね。それとも本当に露出狂でマッパがご希望でしたか?」
「いえ滅相もございません。私はこの辺で失礼しますね。」
そういって立ち上がったので。耳元でささやくことにした。
「国外に出てから襲撃しようと思っているのであれば考えておいてくださいね。アイルビーバック!」
そういって耳に息を吹きかけると。猛ダッシュで消えていった。
あれはいいスプリンターになれる。
ちなみに迷惑料としてネックレスを収納させてもらった。
封建領主の価値観何て俺の物は俺のものお前のものも俺の物って感じでしょうからこんなものですかね。ただ逆に言えば力こそパワーなので私のほうが強ければジャイアンをやれてしまう。2回も痛い目に合えばそろそろ懲りるかな?
これでこの国も大人しくなるかといいけれど・・・・・・。
なんにせよ本日もよい収納日和であった。
本日の収入
襲撃者の装備:延250人分、平均買取価格武器15万イエーン、防具20万イエーン
その他所持品及び所持金2万イエーン
合計9250万イエーン
ネックレス:時価1500万イエーン